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三菱自動車 益子CEO、新中期経営計画「DRIVE FOR GROWTH」発表会で“2020年以降にEVを少なくとも2車種投入”と明言
「EV時代に対する備えが必要。変化をチャンスに変える感性が問われる」
2017年10月18日 20:39
- 2017年10月18日 開催
三菱自動車工業は10月18日、2017年から2019年にかけての新しい中期経営計画「DRIVE FOR GROWTH」を発表。同日に取締役社長 CEOの益子修氏、最高執行責任者(COO)のトレバー・マン氏などが出席する説明会が行なわれた。
このなかで益子氏は、DRIVE FOR GROWTHを実現する3つの戦略的施策の1つとなる「商品の刷新」で2020年以降にコアモデルにおけるパワートレーンの電動化を進め、EV(電気自動車)は「少なくとも2車種を投入し、うち1車種は軽自動車」であると発表した。
優先順位の高い項目の詳細として説明された車両の電動化について、益子氏は「最近、いろいろな形でニュースになっておりますが、北米や欧州のみならず、新興国市場でも環境規制の厳格化が進んでいくことは不可避であると考えております。こういった経営環境に対応するためにも、電動車両は三菱自動車のなかでも重要度がさらに増しております」と取り組みを強化する理由について説明。EVの市場投入に加え、PHV(プラグインハイブリッドカー)となる次期「アウトランダーPHEV」の計画も推進しており、セグメントのリーダーの座を維持していく考えを示した。
このほか、三菱自動車が高いシェアを持つASEAN地域で電動化を率先して普及させていき、中国市場でも「新エネルギー車」として低価格車を提供することを検討し始めているという。また、2016年から参加したルノー、日産自動車、三菱自動車によるアライアンスでも、100%電気自動車からハイブリッドカーまで豊富なラインアップを計画していると益子氏は語る。
説明の最後に益子氏は、「新生三菱自動車の目指す姿について、私の考えを少しお話ししておこうと思います」と前置きし、「私たちの強みはSUVにあります。そして他社に先駆けて電動化技術を導入したように、『これまでになかった新ジャンルのクルマを造り上げる』というところにも強みがあります。これからもSUVや電動化技術にさらに磨きをかけ、AI(人工知能)技術やコネクティッド技術などさまざまな技術と融合させ、クルマの新たな価値を生み出していきたいと考えています。東京モーターショー2017で展示予定のコンセプトカー『MITSUBISHI e-EVOLUTION CONCEPT』は、この方向性をまさに象徴するものです」。
「今、自動車業界はEVの『テスラ』、ライドシェアの『Uber』などに代表される『ゲームチェンジャー』の登場で、過去にない大きな変革の時代を迎えています。従来製品の価値を破壊し、まったく新しい価値を生み出す“破壊的イノベーション”がまさに始まろうとしていると言っても言いすぎではないでしょう。三菱自動車が生まれ変わり、成長を続けていくためには、この変革に適応して自らのあり方を変えていかなければなりません。世界最大の販売台数を誇るアライアンスのメンバーになったことは大きな前進ではありますが、それだけでは十分ではありません。他力本願の企業が生き残っていけるほど、甘い時代ではありません。クルマの新たな価値を提供し、社会から存在を求められる企業であり続けるため、これからも立ち止まることなく常に変わり続けてまいります。今後の三菱自動車にどうぞご期待ください」と述べた
説明会後半に行なわれた質疑応答では、岡山県倉敷市にある水島製作所の稼働率が落ち込んでいることに関連して、新たに市場投入されるEVの軽自動車の生産を水島製作所が担当するのかといった質問に対し、「水島(製作所)の作業量が減っているという話は我々もモニタリングしていて、実際の売上高では2016年度と比べて減っていない。むしろ増えているということですが、2016年は3カ月間生産ができなかったという特殊要因があります。今年は一方でGS41型『ランサー』の生産を止めて生産がしばらく止まったということで同様になっています。これで売上高が減っているということは確認しておりません。12月からは『RVR』の生産が水島で始まるので、水島の稼働率は上がります。来年(2018年)出てくる新しい軽自動車は、当然水島で生産します。その流れでいけば、軽のEVも水島で生産するのが一番自然な形だろうと思っています」と益子氏は回答した。
また、EV化の推進を受け、今後のガソリン車やディーゼル車との比率についての質問に対しては、益子氏は「EV化の流れ、EV化の議論がなぜ起きているのかと言えば、1つはヨーロッパを中心にした環境問題。環境を考えたときにはEVだということで、とくにディーゼルはNOxなどの問題があると言われています。それからインドなどで言われているのはエネルギー問題です。とくに化石燃料をどうするのかということで、エネルギーをどう使うかということですね。もう1つは、既存の自動車メーカーが100年かけて自動車というものを完成させてきたのですが、これに新しい挑戦者が出てきたということです。『テスラ』ですよね。それに続くのは『ダイソン』かもしれないですけど、自動車産業を取り巻くいくつかの環境が大きく変わってきたというのがEVなんだと思います。環境問題、エネルギー問題、それから『ゲームチェンジャー』の登場と、それに既存の自動車メーカーがどのように対応していくかというのが問われている」。
「難しい問題なのは、EVに行ったときに、じゃあエンジン工場は不要になって閉鎖するのでしょうか。多くの部品メーカーでも職を失っちゃう人が出てくるかもしれませんねということになる。そんな問題も同時に抱えているのがEV化です。先にも申し上げた『どんな困難なときにあっても、今まで一緒にやってきた人たちと、これからも一緒に繁栄していく道を見つけたい』という言葉は、きっとやってくるEV化の時代でも、その課程で一緒に知恵を出し合って生き残る道を作っていこうということです。明日から全部がEVになるようなことはありえないでしょうが、EV時代に対する備えは必要です。1つ申し上げておかなければならないのは、自動車産業は大きな転換点にあるということです。変化に対する危機感と同時に『変化をいかにビジネスチャンスに変えるか』ということが問われているんだと思うんですよ。その感性を、会社としても、1人の社員としても磨いていきたいということをメッセージとしてお伝えしたい」とコメント。EV化の重要性と同時に難しい側面を持っていることを語りつつ、それでも電動化を進める意欲を明らかにした。