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ホンダコレクションホールで懐かしのホンダ車がデモ走行

動態保存されている「S600」「シビック CVCC」「ドリーム CB750 FOUR」「スーパーカブ C100」「ホンダ A型」の5台

2018年3月17日~18日 開催

ホンダコレクションホールでデモ走行した「シビック CVCC」。奥に「S600」(右)と「ドリーム CB750 FOUR」(左)

 3月17日~18日、ツインリンクもてぎ(栃木県芳賀郡茂木町)内にあるミュージアム「ホンダコレクションホール」にて、特別デモンストレーション走行が開催された。ホンダコレクションホールでは、多くの車両が保存、公開されているが、その中の一部車両は走行可能な状態で保つ動態保存されている。これらマシンは実際に走らせる走行確認を定期的に行なっている。

 今回はホンダコレクションホールの中庭に設定されたミニコースで、「S600」「シビック CVCC」「ドリーム CB750 FOUR」「スーパーカブ C100」「ホンダ A型」の5台が華麗な走行を披露した。これは3月で開館20周年を迎えることを記念して、3月17日からホンダ創業期の事業足跡を紹介する新展示「ホンダ 夢と挑戦の軌跡」の公開を記念したデモ走行となっていて、一般の見学者も見学可能な催しとして開催された。

 1947年~1973年のオールドマシンとあって、現代のマシンとまったく異なる走行音で見学者も興奮気味に見入っていた。またデモ走行後は、マシンの近くまで寄って見学する時間も設けられていた。

 なお、この後の夏~秋の7月16日と9月24日には、「開館20周年記念 市販製品デモンストレーション走行」の開催も予定されている。ツインリンクもてぎの南コースを舞台に、「ドリーム CB750」「CBX1000」「カブ号 F型」「N360」「NSX」といったホンダの代表的なモデルとなる数十台がデモ走行を実施する。

 ホンダコレクションホールは入場無料だが、別途ツインリンクもてぎの入場料(通常営業日)として大人(高校生以上)1000円、子供(小・中学生)500円、幼児(3歳~未就学児)が必要。

ツインリンクもてぎ内にあるミュージアム「ホンダコレクションホール」外観。南ゲート近くにある
明るく広いエントランスホール
1965年、F1グランプリ最終戦のメキシコGPで初優勝を飾った「RA272」と、1961年にスペインGPで初優勝を飾った「RC143」が迎えてくれる

S600(1964年)

S600(1964年)

「S600」は、ホンダ初の四輪乗用車として1963年10月に発売された「S500」を改良してエンジンをスケールアップし、翌1964年1月から販売されたFRオープンスポーツカー。エンジンは606cc水冷直列4気筒 DOHCで、最高出力57PS/8500rpm。レッドゾーンが9500rpmなので、その直前の高回転で馬力を出す高回転型エンジン。2輪ではポピュラーだが、4輪ではほとんど見られないチェーン駆動を採用している。重量は695kgと軽量。後にクーペも追加され、1966年に後継車のS800に引き継がれる。「エスロク」の愛称でも親しまれ、今でも人気が高い。

1964年から販売されたFRオープンスポーツカー「S600」
S600
可愛らしいヘッドライトやメッキのグリルが特徴的
S600車内。2シーターのオープンカー
メーター周り。レッドゾーンは9500rpm。高回転で馬力を絞り出す2輪のような特性
4速マニュアルトランスミッション
S600のディテール
ホイールサイズは13インチ
ボディをメッキのラインが貫く
ボンネットは現在では珍しい逆アリゲータータイプで逆に開く
4連キャブレターを装備。ケーヒン製
エンジンヘッドに「HONDA」のロゴ
トランクも意外と容量がある。ジャッキはシッカリしたモノが付いている
トランク内カバーをめくるとスペアタイヤがある
S600デモンストレーション走行
S600デモンストレーション走行
S600 その2

シビック CVCC(1973年)

シビック CVCC(1973年)

「シビック」は1972年7月に販売され、達成が難しいと言われた米国の排出ガス規制「マスキー法」をクリアした低公害「CVCCエンジン」を搭載して1973年12月にデビューしたのが「シビック CVCC」。エンジン内で安定して燃焼させることにより、燃焼過程で低公害を実現しているのが特徴。日米ともに大ヒットし、1976年7月には生産累計100万台を突破している。CVCCエンジンの開発については、科学技術庁長官賞と機械振興協会賞を受賞している。

 シビックのグレードは多岐にわたるが、これは1973年発売の「1500CVCC GF」で、最初のCVCCエンジン搭載モデルの中で一番ハイグレードだったタイプ。50年排出ガス規制値を満たし、低公害車優待税制の適用を受けられた。水冷直列4気筒SOHCで最高出力は63PS/5500rpm。FF方式の4速マニュアルトランスミッションだった。シビックは現代にも受け継がれていて、2017年9月から新たな3タイプのシビックが国内で販売開始されている。

1973年から販売された「シビック CVCC」。安定感ある台形デザインのハッチバックタイプ
シビック CVCC
この時代では砲弾型ミラーはスポーティなハイグレードタイプの証
シビック CVCCの車内。上下に分かれ視界が広く感じるダッシュボード周り
4速マニュアルトランスミッション
メーター周り。最大トルクは3000rpmで発生。レッドゾーンは6000rpm
ホイールサイズは12インチ
シビック CVCCのディテール
シビック CVCCのエンジンルーム。上の丸いものはエアフィルター
ハッチバックタイプでもリアゲートは荷室のみが開く
トランクルーム
カバーをめくるとスペアタイヤがある
シビック CVCCのデモンストレーション走行
シビック CVCCのデモンストレーション走行
シビック CVCC(その2)

ドリーム CB750 FOUR(1969年)

ドリーム CB750 FOUR(1969年)

「ドリーム CB750 FOUR」は、量産では世界初の空冷4ストローク直列4気筒OHCエンジンを積んだモデル。最高出力は67PS/8000rpm。量産車として初めて最高速200km/hを超えた。マルチエンジンを搭載した大排気量かつ高性能なスポーツモデルを、スーパースポーツと位置づけることになった先駆モデルと言える。ダブルクレードルのフレーム、初の油圧ディスクブレーキなど、現在でもある大型ネイキッドタイプの源流がここで生まれているのが分かる。このマシンは、初期型の「K0」と呼ばれる現在でも最も人気のあるモデル。

 今や大型2輪はリッター超も当たり前だが、当時の750ccは国内最大排気量。“ナナハン”が大排気量で速いオートバイの代名詞で憧れだった。現在販売されている「CB1100」が空冷直列4気筒DOHCエンジンを搭載し、スタイリングも含め色濃く影響を残していて、今も色あせない不動の人気があることが分かる。

 特徴的なのは、均等に振り分けられた4本のストレートなマフラーから出る排気音。当時としては静かだったのだが、現代ではあまり聞くことができない迫力ある音。デモ走行でもその力強い音は健在だった。

直4マルチ、スーパースポーツバイクの先駆け「ドリーム CB750 FOUR」
ドリーム CB750 FOUR
左右に2本ずつ均等に振り分けられた4本のプレス成形マフラー
空冷直4エンジン。今はもうあまり見かけなくなった空冷フィン美しい。最初期型のクランクケースは砂型を使って作られた
4連のキャブレター
セル始動だがキックスターターも備えている
フロントホイールは19インチ。油圧のシングルディスクブレーキを備える
アップタイプのバーハンドルは高く広め
スピードメーターは200km/h超えも刻まれている
ドリーム CB750 FOURのディテール
ドリーム CB750 FOURのデモンストレーション走行
ドリーム CB750 FOURのデモンストレーション走行
ドリーム CB750 FOUR(その2)

スーパーカブ C100(1960年)

スーパーカブ C100(1960年)

 2輪では2ストロークエンジンが主流だった当時に、低燃費で静粛性の高い50cc空冷4ストロークOHVエンジンを搭載。最高出力は4.5PS/9500rpm。最高速は70km/h。左手のクラッチ操作が要らない自動遠心クラッチの3速トランスミッション、跨ぎやすい低床バックボーン式フレーム、泥はねや走行風を防ぐ樹脂素材を使った大型レッグシールド、ボトムリンク式のフロントサス、ケースに入れられた駆動チェーン、大きめの荷台など、軽く女性でも乗りこなせ、仕事に使いやすいようにさまざまな工夫がされている。

 スーパーカブの基本形がすでにこの初代モデルで完成していて、今でも基本的な部分はまったく変わらずに、50ccと110ccにて派生モデルが販売されている。

初代スーパーカブ「スーパーカブ C100」。最初の時点から現在まで大きく変わっていない
スーパーカブ C100
スーパーカブ C100のディテール
スーパーカブ C100のデモンストレーション走行
スーパーカブ C100(その2)

ホンダ A型(1947年)

ホンダ A型(1947年)

「ホンダ A型」は、本田技研工業設立の前年となる1947年に「Honda」として初のオリジナル製品として市販された製品。自転車用補助2ストロークエンジン。当時オートバイはまだまだ高価なので、自転車に後付けするエンジンが重宝された。一般的なピストンバルブではなく、クランクケースに付けるロータリーディスクバルブを使用していた。これは性能アップのためではなく、貴重な燃料をいかに節約できるかを考えての採用。キャブレターもシリンダーではなく下側のクランクケースに付いている。

 さらにクラッチの役目を果たす、手動レバーで切り替えるベルト変速装置(特許取得)で後輪に動力を伝えているアイディアの塊のような製品。最初自転車としてペダルをこぎながら、その動力でエンジンをかけ、エンジンがかかったらこぐのを止め、エンジンの動力で進んでいく。その排気音から、当時「バタバタ」や「ポンポン」などの愛称で呼ばれていたそうだ。1947年から1951年まで生産され広く親しまれたモデル。

ホンダ A型。市販の自転車に取り付けるタイプの自転車用補助2ストロークエンジン
ホンダ A型
2ストロークエンジン部分
キャブレターがクランクケース側に付いている
タンクに「Honda Motor」のウイングマーク。最初期のロゴということになる
後輪に動力を伝える変速装置
レバーを前に倒してクラッチを繋ぐ
マフラー
アクセル操作は右手で行なう
ホンダ A型のデモンストレーション走行
ホンダ A型(その2)

開館20周年新展示「ホンダ 夢と挑戦の軌跡」

 ホンダコレクションホール1階のエントランス横のコーナーでは、ホンダ創業期の事業足跡を紹介する開館20周年新展示「ホンダ 夢と挑戦の軌跡」が3月17日から始まっている、創業者 本田宗一郎氏と藤澤武夫氏の発想と歩みを、年代ごとに追いかけ紹介する展示となっている。

開館20周年新展示「ホンダ 夢と挑戦の軌跡」
1962年第9回全日本自動車ショーで発表された、ホンダが4輪進出を目指し開発した「ホンダ スポーツ360」
ホンダ「CA100」スーパーカブの輸出モデル
ホンダ「RC142」は1959年にマン島TTレースに出場し、3台が完走。チーム賞を獲得
現地で2バルブから4バルブ化した、125cc2気筒4バルブDOHCエンジンを搭載
カウル内のタコメーター
ケーヒンのキャブレターとエンジンが覗く
RC142のエンジン。最高出力は18PS/13000rpm
1960年製ホンダ耕うん機「F60」。80ccの4ストロークエンジンと日本初の油圧サイドクラッチを搭載する
1958年製ホンダ「VNC型」汎用エンジン。農家の作業を軽減する
初の本格的な完成2輪車。1949年製ホンダ「ドリーム D型」
クラッチ操作が不要な2速変速機を搭載する
第1号試作エンジン。シリンダーヘッドまでの背が高く、社内で“煙突エンジン”と呼ばれていた
この構造を改良し、「A型」エンジンが作られる。なんとガソリンタンクは湯たんぽを流用している
当時18歳の本田宗一郎氏が「アート商会」で働いていた時代に助手として製作した「カーチス号」
シビック CVCCに搭載していた、世界初の低公害エンジン「CVCC」のカットモデル
自転車用補助エンジン「カブ号F型」を全国の自転車店に発送していた荷姿。段ボールは当時まだ珍しかった

 ここからは、パネル展示をお届けする。

開館20周年新展示「ホンダ 夢と挑戦の軌跡」パネル
コレクションホールは常設の展示もたっぷりある。4輪車のコーナー
2輪車のコーナー。カワサキ Z400FXやスズキ RG250ガンマといった他社モデルも見受けられる