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マツダ、6月から社長に就任する丸本明副社長が記者会見。「『飽くなき挑戦』が私にとっても会社にとっても最も重要」
丸本氏は「強みを生かし、課題を克服しながら運営できる人材」と小飼社長
2018年5月12日 00:00
- 2018年5月11日 開催
マツダは5月11日、6月から新たに代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)に就任する丸本明氏と、現社長の小飼雅道氏による記者会見を都内で開催した。
会見ではまず、2013年6月に代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)に就任して5年間にわたりマツダの舵取りを務めてきた小飼氏がスピーチを行なった。
小飼氏は同日に発表した、6月26日開催予定の株主総会終了後の役員人事について改めて説明し、現代表取締役副社長の丸本氏が新たに代表取締役社長 兼 CEOに就任し、自身は代表取締役会長に就任。これに伴う役員人事の変更に実施されるとコメント。丸本氏はこれまで、社長補佐に加えて米国での生産・販売事業、総務、広報、人事といった管理領域を担当してきたと紹介した。
また、小飼氏は自身が社長に就任した2013年以降、マツダは「構造改革プラン」で掲げた「商品・開発」「ブランド・販売」「グローバル生産」「財務基盤強化」の4つの重点施策の加速と実行により、外部環境の変化に対して強固な経営基盤を持つことが自身に託された役割であったと説明。これまでに「SKYACTIV」の各技術を量産化し、もの作り革新、海外生産の拡大、販売革新などを進め、開発から販売・サービスまでの全社員で「ワンマツダ」として取り組んできたと強調した。
今後はこれまで続けてきた構造改革の取り組みを基盤に、「SKYACTIV」第2世代商品の量産化を開始することに加え、トヨタ自動車との提携による生産工場などの協業を確実に実行することで、将来に向けた成長基盤を確立していきたいと述べた。
このために、新社長となる丸本氏には、マツダグループが心を1つにした“一気通貫”で取り組みを進めてくれるものと確信しているとコメントした。
続けてスピーチした丸本氏は、最初に自身のこれまでの経歴についてコメント。丸本氏は1980年にマツダに入社してから、エンジニア、開発主査などを務めて開発領域で長らく活動し、品質担当、欧州におけるフォードとのプログラムなどを担当。帰国後には商品企画などを手がけ、2008年からは経営企画にも携わるなど、12年にわたって商品や経営の企画担当を歴任してきた。
社長の大任を引き受けるにあたって丸本氏は「身の引き締まる思い」と語り、打診から日も浅く、まだ抱負などを述べる段階にないとしつつ、会社として取り組むべき課題、方向性についてはすでに定めており、これに向けてスピード感を持って取り組むことが第一と語った。
また、マツダでは以前から「お客さまに一番近いブランド」になることを目指していると丸本氏は述べ、まだ道は半ばであり、今後も継続して強化が必要だとの見方を示した。先だって決算発表に合わせて発表した中期的な取り組みの方向性を、早急に次期中期計画に落とし込んで着実にブランドと収益の目標達成を図り、次期中期計画の実現を見据えた道筋を固めることが自身に託された責任だとの受け止めを示している。
「『飽くなき挑戦』が今の私にとっても会社にとっても最も重要」と丸本氏
記者会見の後半には質疑応答を実施。丸本氏に対してマツダにとっての当面の具体的な課題について質問され、これに対して丸本氏は「足下を中長期的に見た課題は山積みだと認識しています。その中でもとくに、ここ2~3年は『稼ぐ力』が低下していると思いますので、これを解決することが最重要課題との認識です。地域としては、昨年度の決算を見たときに、対前年で台数構成や販売領域を収益で見るとマイナス250億円。それは米国で500億円減っていて、その他の市場では対前年で250億円上げている。米国以外の国々では結構頑張ってくれているのですが、マツダにとって米国市場は収益面、ブランド面でも最重点市場であると認識しています」と回答した。
また、座右の銘についての質問に対しては、「座右の銘ではないですが、今、私と会社にとって大切なことが何だろうと考えたときに、故山本健一社長が遺された『飽くなき挑戦』というのが、今の私にとっても会社にとっても最も重要なことだろうと考えています。会社の規模を考えたときに、生き残っていくためにマツダは挑戦し続けなければいけないと考えます。現在でもいろいろな挑戦をしてくれていますが、さらに挑戦し続けなければいけないと認識しております」と丸本氏はコメントしている。
小飼氏に対しては、開発畑出身としては山本健一氏以来となる丸本氏を起用した理由について問いかけられ、これに「とくに開発をバックボーンにしていることが主旨で人選を行なったわけではありません。彼とは昔から一緒に仕事をしておりますし、これまでに開発のシャシー担当や新型車開発のリーダーも務めてきました。さらに品質部門や海外でのジョイントビジネス、当社の中長期の戦略を立てる部門なども経験し、重要な職場を幅広く歴任してきました。各部門の専門性は当然ながら習得し、各領域の強みと課題を理解しております。つまり、会社の強みと課題を熟知した人材なので、『SKYACTIVの第2世代商品』を成功に導いていくうえで、しっかりと強みを生かし、課題を克服しながら運営していける。そういった人材ということで起用しました」と小飼氏は答えた。
また、6月から会長に就任する小飼氏に対して、今後はどのような活動をしていく予定なのかについては、「現任の金井会長が担当しております対外的な仕事、あるいは地元広島の産学官での取り組みなどを引き継いで進めていきたいと思います。また、ビジネスパートナーとして、トヨタ以外にも海外のパートナーなどとの関係作りをする必要がありますので、引き続きマツダとの関係を維持していくコミュニケーションを進めていきたいと思います」とコメントしている。
トヨタとの協業で印象に残っていることを問われた丸本氏は、「2015年5月から業務資本提携をしておりますが、2013年の秋ごろから私はトヨタさんとのコンタクトを始めていて、それからは5年近くになります。その間に社内と同じようにとことん話し合うことを重ねてきました。その中でお互いにとってWin-Winになるものは何だろうかと、学び合えるものは何だろうということを築き上げてきました。そこで思い出に残っているのは、公表していることでは米国の新工場やEVアーキテクチャーの共同開発になりますが、そうした実体としてのベネフィットもさることながら、いろいろな領域で弊社とトヨタの関係者で話し合い、学び合ってくれていることを、報告を聞くたびに感じるわけです。それが私にとって一番嬉しいことだと思っております」。
「今後についてですが、弊社が単独でやるには時間やお金がかかりすぎてしまい難しいと感じることでも、遠慮なく『こういったことはできませんか?』と言わせていただいておりますので、そこで上手く噛み合う関係が築けていったら前に進められるのかなということで、今後も拡大していくことを期待しています」と答えている。
また、丸本氏の人物像についての質問で、「仕事ぶりが優秀で優れているという点は皆さんご指摘のとおり、あと、従業員に対しての細かな目配りや配慮などが、見た目以上にすばらしいです。きめ細やかで、常に偏りなくその人を見ていて、いろいろな意見に対するまとめ方も極めてフェアな振る舞いや言動という人です」と小飼氏は評した。