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【SUPER GT第3戦 鈴鹿】GT500&300優勝者会見、「NSX-GTは中速以上のコーナーでアドバンテージがある」と野尻選手

96号車 K-tunes RC F GT3の勝利の要因は“GT400”並に速かった130R

2018年5月19日~5月20日 開催

左から中山雄一選手、新田守男選手(96号車 K-tunes RC F GT3)、野尻智紀選手、伊沢拓也選手(8号車 ARTA NSX-GT)

「2018 AUTOBACS SUPER GT Round3 SUZUKA GT 300km Fan Festival」が5月19日~20日の2日間にわたって三重県鈴鹿市の鈴鹿サーキットで開催された。GT500クラスで優勝したのは8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/伊沢拓也組、BS)、GT300クラスで優勝したのは96号車 K-tunes RC F GT3(新田守男/中山雄一組、BS)となる(レースレポートはこちら)。

 決勝レース終了後には優勝選手による優勝者会見が行なわれたので、その模様をお届けする。

NSX-GTは中速以上のコーナーでアドバンテージがあると野尻選手

司会:それでは、それぞれの担当スティントの感想を、GT300のお2人から

新田選手:予選は中山選手が頑張ってくれてポールというよいポジションからスタートすることができて、他のクルマは無交換作戦でいくことは予想できたので、後続はできるだけ引き離したいと考えていた。クルマは決まってて、ブリヂストンタイヤもよく、僕の走っていたスティントは完璧だった。が、セーフティカーが出たことで、貯金が帳消しになってしまってがっかりした。それでもできるだけ引き離して、早く中山選手にバトンタッチすれば、もっといいポジションに来るだろうと思って、ハラハラドキドキしながらドライブしていた。

新田守男選手

司会:これで今回、新田選手はGT300で通算19勝で、高木真一選手と並んでトップタイです。

中山選手:新田さんの最多勝タイに貢献できてよかったし、チームも今年新しいチームとして参戦して優勝できてよかった。新田選手が綺麗なスタートを切ってくれて、SCはあったが最後まで引き離すようにしてくれてピットに入ってきてくれた。チームの方もこれまではピットでもたつくこともあったのだが、今回はピット作業も非常によかった。セーフティカーが入ったことでマージンはなくなってしまったけど、ピット作業でミスがなかったので、4輪交換しても25号車の前に出ることができた。コースに出たら、周りのクルマよりも全然速かったのだが、谷口さんのブロックが上手くてなかなか前に出ることができなかったが、最終的に前に出ることができた。開幕戦、第2戦と高速コーナーが上手く煮詰まってなかったのだが、チームのエンジニアがそこを詰めてくれて、130Rに関しては“GT400”って言っていいほどのスピードがあった。トップに立った後は谷口選手が頑張ってくれて(笑)、楽になった。

中山雄一選手

伊沢選手:とにかく嬉しい。自分のスティントはマージンを稼ぎたいとやってきたけど、セーフティカーでそれが台無しになってしまった。速さだけでなく運も味方にしないと勝てないレースだと再認識した。チームとホンダがよいクルマを用意してくれたことが全てだ。移籍して3戦目だが、野尻選手とはよいコンビを形成できていて、こんなに早く結果が出るとは思っていなかったが、それも野尻選手やチームと積み重ねてきた結果だと思っている。

伊沢拓也選手

野尻選手:この場(会見場)に戻ってくることができて嬉しい。セーフティカーでマージンが0になってそれをもう1度引き離したけど、自分に代わった後は山本選手にずっとつかれていた。彼も絶対諦めないだろうと思っていたし、自分も開幕戦で順位を落としてしまっていたので、その分はここで必ず取り返さないといけないという強い想いがあった。自分自身の気持ちを強く持つだけでなく、チームのみんなが支えてくれたからこそ最後まで折れずに走り続けることができた。伊沢選手をはじめてとしてチームみんなでやってきた成果だと考えている。

野尻智紀選手

――昨日の予選には風が大きな影響を与えたが、今日はどうだったか?

中山選手:グリップやダウンフォースは減ってるなと感じた。昨日は1分55秒台で、今日は2分1秒。何が影響しているかははっきりとは分からなかったが……。

新田選手:スタートしたときは向かい風の影響なのか、ストレートが伸びてないなぁとは感じていた。裏のストレートでもシフトのタイミングが違っていた。コーナーの感覚はあまりそこまで気にならなかった。

野尻選手:正直風が逆という感じだった。ただ、昨日の続きになるが、風が感じられなかった、ゴルフやったほうがいいのかと悩んでいるところだ(笑)。

伊沢選手:昨日とは逆向きだったけど、今日はいつも通りという感じだった。

――伊沢選手はこれまで一緒に優勝したチームメイトはファーマン選手、小暮選手、山本選手、野尻選手で4人目で、どの選手と組んでもよい結果を出している印象だが、コツがあるのか?

伊沢選手:いつも速いチームメイトと組ませてもらっているので助けられている。いつも同じ状況ではなくて、そもそも自分がSUPER GTに10年以上いて、これだけ長くやらせていただいていることに感謝したい。野尻選手にせよ、チームメイトは走り方を含めて自分と違っており、それを参考にして自分自身が成長でき、それが結果としてプラスになっている。

――8号車の2人に。ホンダ勢は開幕戦がよく、第2戦は厳しく、ここで再び浮上した。その要因は?

野尻選手:中速以上のコーナーはNSX-GTに利がある。例えば、予選などで風が吹くと安定感が増して、どんどん踏んでいける。

伊沢選手:形を含めて違う3車が争っているので得意不得意がある。富士の結果は僕らが想像していたよりもわるかったし、僕らも開幕から調子がよかったと言えばそうではなかった。ただ、ここに来るにあたってチームのクルマへの理解度が上がった。それが要素だと思っている。

97号車が優勝できたのは130Rで非常に速いクルマだったこと、0号車も18号車もそれを利用してオーバテイク

――今日のレースでのキーポイントは何か?

中山選手:セーフティカーでマージンを失う結果になったけど、GT300には無交換作戦を採るチームがたくさんいて、誰に照準を絞るって戦うのかというレースだけど、速いクルマが勝てるということを示せたレースだった。今回われわれのクルマは、コースを走っているクルマの中で1番速いクルマだったと思う。

新田選手:クルマ、タイヤ、全ての要素ですごいパフォーマンスがあることが前提だけど、ポールポジションが取れたところからレースを展開することができた。後ろのグリッドで下位にのまれないことがキーだった。それに加えて、チーム全員がノーミスでゴールまで持って来れたことも、ウェイトとして大きいと思う。

野尻選手:僕たちで言うと、伊沢選手が僕に代わるまでにギャップが作ってくれたことだ。僕のスティントで言うと、1周も気が抜けなかったので、ミスもしないし攻めないといけない中でミスしなかったことだ。

伊沢選手:野尻選手がポールを取ってくれて、ポールからスタートできたことが大きい。

――1000kmから300kmに変わってのレースだが、各選手の感想を

伊沢選手:元々1000km走るのはそんなに好きではなかったので、正直300kmになってよかったかなとは思っている(笑)。

野尻選手:昨日の予選の会見と同じメンバーがここ(優勝会見)にそろったという意味では、速いメンバーが勝つという方向性になったレース。今日のレース展開もそうだけど、スーパーフォーミュラで300kmを1人で走るよりも楽だった。スーパーフォーミュラで300kmなら正直しんどいだろう。

新田選手:長いこと鈴鹿1000kmを走ってきたが、自分の中ではよい結果が出ないイメージだった。トップを走っててもトラブルが起きたりしたので。ただ、今回勝てたのでいいイメージができたというか、完璧な状態を作り上げたチームが勝つというレースになった。その意味で300kmになったのはよかったのではないだろうか。

中山選手:僕の後ろの順位はまだまだ争っていたので、350kmぐらいだと面白かったかもしれない(笑)。

――NSX-GTとブリヂストンの組み合わせは富士の後半でピックアップに悩まされていたが、今回のレースではどうだったか?

伊沢選手:自分の時は全くなかった

野尻選手:僕の時はちょっとあった。タイヤカスも多くなっているし、ある程度は仕方ないだろうと思っていた。しかし、安定したパフォーマンスを発揮できていたので、特に問題にはなっていなかった。

――96号車の中山選手は、ピットアウト後、トップを走る0号車と18号車の2台にシケインで仕掛けて追い抜いていったが、その時の状況をもう少し詳しく教えてほしい

中山選手:ピットを出たときには、前を走る18号車と10秒ぐらい差があったのだが、0号車が18号車の前に出てきてからはあまりペースが上がらなくてすぐに両車に追いついた。それどころか後ろを走るSUBARU(61号車)がだんだん追いついてくるぐらいで……。タイムを見ていてもトップ2台のペースが2秒以上遅くて、隙を突けば大丈夫だと思っていた。後ろから見ているとトップの2台を観察していると18号車と0号車の長所は少し違っていて、その特徴を利用して逆に抜いてやろうと考えた。こちらは130Rからシケインがものすごく速くて得意としていたので、それを利用して両車を抜いていった。18号車を抜いたときには0号車まで一気に抜けそうなぐらいのスピードが自分たちにはあった。武器があるというは本当に強いなと感じた。

――19勝で最多勝タイに並んだ高木真一選手からは何か声をかけられたのか?

新田選手:こちらから声をかけるのではなくて?(笑)一緒にお酒でも飲もうかとでもいうのか……。実は(スタート前の)グリッドで向こうがやってきて、今回もういっちゃうねーって話しかけてきてくれた。富士の真一たちの展開と、鈴鹿の僕らの展開が真逆と言っていいほどで、正直こんなに上手いくとは思っていなかった。声はかけるよりも、かけられたいです(笑)。

次のレースは6月30日~7月1日(現地時間)に開催予定のタイ戦

野尻智紀選手と伊沢拓也選手(8号車 ARTA NSX-GT)

司会:それでは次のタイ戦に向けての意気込みなどを

伊沢選手:僕たちはスーパーフォーミュラもやっている関係で、5月には4レース(筆者注:SUPER GTが富士戦と鈴鹿戦、スーパーフォーミュラがオートポリス戦とスポーツランドSUGO戦)もあるので、それが終わったらひと休みしたい。正直、関係者の皆さんにはもうちょっと考えてほしい。観戦するお客さまにも大変なのではないだろうか。また、スタートももうちょっと、14時ぐらいのスタートで早めに終わる方が、やはりお客さまにとっても嬉しいのではないだろうか(司会のGTA担当者から、坂東代表の会見でも、それらについて言及があったことなどが示される)。次のタイへ向けてはウェイト次第ではあるが、今のクルマならいいレースができるのではないだろうか。

野尻選手:ウェイトは48kgということなので、48kg痩せてこようと思う(笑)

伊沢選手:皮だけになっちゃうよ!(笑)

野尻選手:来週のレースが終わったらひと休みして、気力を備えてタイでよい走りをしたいと思う。

中山雄一選手、新田守男選手(以上96号車 K-tunes RC F GT3)

新田選手:伊沢選手すごいね、もうちょっとお酒飲ましてあげるとよい風に改革できるんじゃないか(笑)。RC Fでタイでは優勝しているので、相性のいいコースだと考えている。真一に追いつけたので、抜き返していきたい。真一も年がそんなに変わらないので、オジサンでもGTでやっていけば勝てるんだということを、子供たちや若いドライバーに、いつまでも長く見せることができるドライバーになりたい。

中山選手:タイではブリヂストンがプリウスのころからよい感触なので期待している。去年は劇的な天気の変わり方でも速かったので期待が大きい、40kgのウェイトハンデが乗りますが、軽い状態で走っていなかったので、40kg増えても、オジサンをしっかり引っ張っていけるように、裏ではなくて表で支えていきたいです。これまで(開幕戦、第2戦とノーポイントで)気力がなくなっていた部分もあるけど、ランクも上の方になったのでチャンピオン争いの緊張感を続けて楽しんでいきたい。

 SUPER GTはこれから1カ月のインターバルを挟んで、次戦は6月30日~7月1日(現地時間)に予定されているタイ・ブリーラムでの「2018 AUTOBACS SUPER GT Round4 Chang SUPER GT RACE」となる。毎年文字どおり熱い(暑い?)バトルが繰り広げられる南国タイでのレースとなり、全8戦のシーズンの折り返しとなる要注目のレースとなるだろう。