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日産、日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」の象徴となる「リーフ・オープンカー」初公開

基調講演で「2030年までに東京都でのZEVの新車販売割合を50%まで高める」と小池百合子都知事

2018年5月25日 開催

日産の新しい活動「ブルー・スイッチ」の象徴となる「リーフ・オープンカー」

 日産自動車は5月25日、EV(電気自動車)「リーフ」の国内累計販売台数10万台突破を記念する「ゼロエミッション社会の実現へ」フォーラムを都内で開催。

 この会場で、EVの普及を通じて社会の変革に取り組む日産の新しい活動である「ブルー・スイッチ」の象徴となる「リーフ・オープンカー」を初公開した。

2017年10月に発売された2代目のリーフがベースとなる
リアシートはパレードカーのように高い位置にレイアウトされ、シートベルトやヘッドレストなどは備えていない
フロントシートは運転席のみで、助手席は取り外されている
日産自動車株式会社 専務執行役員の星野朝子氏が、リーフ・オープンカーをイベントやパレードなどに貸し出すと発表

 この“日本電動化アクション”と銘打たれた新しい活動のブルー・スイッチとリーフ・オープンカーについて、フォーラムの前半に実施された日産自動車 専務執行役員の星野朝子氏によるプレゼンテーション内で紹介を実施。星野氏は「日産は電気自動車のパイオニアとして、電気自動車の普及を通した社会の変革にこれからも積極的に取り組んでまいります。この日産の決意を、活動名として本日皆さまに宣言いたします。日本電動化アクション『ブルー・スイッチ』。私たちは本気で日本を世界一美しい国にしたいと思っています。世界中から日本に来た方々があっと驚くような、美しい先進国したいのです。そのために、私たちはただ電気自動車を売っているだけではだめで、そんなことでは到達できないような、クルマも、道路も、街も、社会も、日本全体がとっても美しいブルーになる。そんな風に変えていきたいんです」。

「それには皆さまの力が必要で、われわれも皆さんと一緒にいろいろなところで貢献してきたいと思っております。そんな活動の象徴として、本日この場に展示した『リーフ』のオープンカーを製作して、本日が初お披露目でございます。さまざまなイベントやパレードなどでお声がけいただき、これをお使いいただければと思っております」とコメント。イベントなどにリーフ・オープンカーの貸し出しを行ない、EVのクリーンさをアピールする意義を語った。

ブルー・スイッチの活動により「日本を世界一美しい国にしたい」と語る星野氏

「リーフを購入した人は次も電気自動車に買い替えると確信している」とスキラッチ副社長

日産自動車株式会社 副社長 ダニエレ・スキラッチ氏

「ゼロエミッション社会の実現へ」フォーラムでは、最初に日産自動車 副社長のダニエレ・スキラッチ氏が主催者講演として登壇。

 スキラッチ氏は冒頭で、この4月でリーフの国内販売台数が累計で10万台を突破したことに触れ、これが補助金などのバックアップで支えてくれた国や自治体、リーフをユーザーに届けてくれた販売店、そしてなにより購入してくれた人のおかげだとして、心から感謝したいとコメント。また、現在は自動車産業が大きな変革の中にあり、日産は「お客さまの生活をよりよいものにする」という目標を達成するため、電動化が中心的な役割を果たすと考えていると述べ、電動化が自分たちの将来におけるモビリティのビジョンを支える1つだとした。

 また、スキラッチ氏は「日産は『電気自動車革命』の新規参入組ではありません。日産は、安全で信頼性の高い、わくわくする量販電気自動車を他社に先駆けて提案したパイオニアです」とコメント。初代リーフを発売した2010年以来、4月に達成した日本での10万台のほか、グローバルでは51の市場で商品展開して32万5000台を販売しており、リーフ全体での総走行距離は40億kmを超えているが、バッテリーに関わる重大なインシデントが全く発生していないと強調。この実績が日産のバッテリー技術が持つ品質、信頼性、耐久性が比類ない水準であることの証明だと位置付けた。

 最後にスキラッチ氏は、「私がリーフを使っている人とお話しさせてもらうと、皆さんが異口同音に『リーフですばらしい体験をしてからは、決して従来のようなクルマに戻れない』とおっしゃります。また、これまでにリーフを購入した人は近々、次の電気自動車に買い替えることを確信しております。お客さまはまさに、電気自動車の技術にやみつきになっているのです。それは日産自動車も同様で、お客さまと同じく私たち日産も後戻りしません。前進あるのみです」とコメントし、自分たちのEVに対する自信を示した。

普及を続けているEVが、クルマとして以外の面でも活用されていることを紹介する星野氏

 スキラッチ氏に続いてスピーチを行なった星野氏は、「日産自動車は高品質な電気自動車をお届けするだけでなく、クルマを快適に使える環境も整備して、『理想のゼロエミッション社会』を作りたいと思っております」と語り、これまでに日産がリーフを発売してから取り組んできた活動について紹介。初代リーフの発売当時は、EVが普及していくかどうか先が見えないチャレンジングな取り組みになったが、政府や自治体からの大きなサポートもあり、さらに2014年には国内メーカー4社や金融機関などが出資する「日本充電サービス」が設立。充電インフラが充実してきたことでEVの普及に弾みが付いたと解説した。

 また、普及を続けているEVに搭載されているバッテリーは、車両走行以外に社会インフラの中で「走る蓄電池」として活用されていることを星野氏は解説。東日本大震災の発生以降は災害時の非常用電源としても注目されており、2016年の熊本地震の際にはリーフに加え、商用EVの「e-NV200」が被災した人たちに電気を届けたエピソードを紹介した。さらに太陽光で発電した電気をEVのバッテリーに蓄え、夜間などに家庭で活用する「ホームエネルギーマネジメントシステム」について説明した後、この仕組みを社会インフラのレベルまで拡大した「バーチャルパワープラント」を実現すべく、電力会社と協力して実証実験を行なっていると語った。

 このほか、EVの駆動用バッテリーも大切な有限資源であるとの考えから、初代リーフを発売する前から住友商事と協力してバッテリーの二次利用を検証する「フォーアールエナジー」を設立。3月から福島県浪江町で使用済みEV用バッテリーを再製品化する工場を操業しており、リーフのバッテリーはクルマを走らせる役割を終えた後も別の用途に利用される仕組みができあがっているとアピールした。

東京都知事 小池百合子氏

 基調講演では東京都知事の小池百合子氏が登壇。小池氏はかつて自身が環境大臣を務めていたときに「クールビズ」を提唱。目標を「流行語大賞にノミネートされること」と設定して活動し、2005年の新語・流行語大賞のトップ10に選定されたと紹介。現在は都知事として「時差Biz」に取り組んでおり、この時差Bizも開始初年度から認知率が70%を超えていい流れになっていると自己評価した。また、流行語大賞に選ばれることにこだわるのは、それが社会を大きく変えるときのキーワードになるからだと説明し、次はゼロエミッションビークルの「ZEV」を流行語大賞に入れたいとコメント。日産のリーフはまさにZEVの典型例だとした。

 自動車産業では2016年にパリ協定が発効されたことを受け、イギリスとフランスが「2040年までにガソリン車、ディーゼル車の販売を禁止する」と相次いで打ち出しており、中国でも2019年から新しい環境規制が導入される運びになっていることを説明。こうした動きを受け、世界の自動車メーカーで車両のゼロエミッション化が競い合うように行なわれていると語り、日産にはこういった流れを先導する役割を担ってほしいとした。

 また、「世界をリードする環境先進都市」を目指している東京都では、2016年3月に「環境基本計画」を策定。温室効果ガスを2030年までに2000年比で30%削減することを目標に定めており、そのためには都内で排出されるCO2の2割を占める運輸部門で、そのうち8割が自動車からとなっていることから、EVなどのZEVの早期普及が目標達成に向けた近道になるとの見解を示した。

 このほか、直近の5月22日~23日に22の都市の代表者が参加した東京都主催の国際環境フォーラムの場で、小池氏は大気汚染対策として、東京都における新車販売に占めるZEV(EV、PHEV、FCV)の割合を、2017年時点での2.1%から2030年までに50%まで高めることを宣言したとコメント。世界を大きくリードすることになるこの目標を実現するため、自動車メーカーに技術開発と販売で努力してほしいとしたほか、東京都としても支援策としてEV、PHEV、FCVを対象とした補助制度を設けており、東京都独自の政策として自動車税、自動車取得税の免除を実施してZEVの普及に努めているなどの施策を紹介した。

2030年までに東京都でのZEV(EV、PHEV、FCV)の新車販売割合を50%まで高めると語る小池氏

 このほかに講演では、東京電力ホールディングス 経営技術戦略研究所所長の姉川尚史氏、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス 代表取締役社長の吉松民雄氏が登壇。

東京電力ホールディングス株式会社 経営技術戦略研究所所長 姉川尚史氏

 姉川氏は2001年に会社に申し出てEVに関する仕事を始めたころ、日産からEVの「ハイパーミニ」がリリースされていることを知って試乗したところ、素晴らしい乗り心地で深く感銘を受け、EVの普及を推進していくことに大きな意義を感じたとのエピソードを紹介。電力会社の社員でクルマを作る立場にはないが、EVの普及でネックになっている充電インフラの面から関わってきたと語り、日本発の急速充電規格である「CHAdeMO(チャデモ)」では、EVに搭載されるバッテリーなどが進化した場合に対応できるよう、充電時の電圧などを車両側から指定する方式を採用していることが技術のキーになっていると解説した。

コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス株式会社 代表取締役社長 吉松民雄氏

 また、吉松氏はコカ・コーラが世界中で気候変動の緩和に向けたさまざまな取り組みを行なっており、自分たちも事業地域での環境負荷低減を重視して、エコノミー、エコロジー、エフィシエンシーの3Eのニーズに応える車両として、リーフを営業車などに活用していると紹介。EVのリーフは営業所などの各拠点で充電できることから、営業担当者などがガソリンの給油などに時間を割かれることがなくなり、ビジネスの効率化に大きく貢献しているとの具体例を語ったほか、同社では自社製品を運ぶトラックを多数運用していることから、将来的なEVトラックの普及にも関心を持って楽しみにしているとコメントした。