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日産、車両測定検査で試験の不実施など確認。不適切な抜取検査が行なわれた台数は1171台から1205台に増加
2018年9月27日 12:47
- 2018年9月26日 発表
日産自動車は9月26日、完成検査における抜取検査の不適切な取り扱いについての調査結果をとりまとめて国土交通省に報告。同日公表したニュースリリースで今回の事案に関する同社の認識を示した。
同社は、完成検査の燃費・排出ガス抜取検査において、本来定められた試験環境を逸脱した排出ガス・燃費測定試験の実施、測定値書き換えによる検査報告書作成といった不適切な行為があったことを7月9日に国土交通省に報告。同省より同報告で判明した新たな事実に関して調査するとともに、ほかに完成検査に係る不適切事案がないか点検を進め、再発防止策を報告するよう指示を受けていた。
完成検査における不適切な抜取検査に関する調査結果では、7月9日に発表した通り、九州工場を除く日産の全車両製造工場において、国内向け型式指定自動車の燃費および排出ガス検査を行なう際に、測定値の書き換えおよび測定条件の書き換え・逸脱といった不適切な検査が行なわれていたと報告。7月9日に発表した不適切な燃費・排出ガス抜取検査が行なわれた台数は1171台であったが、詳細調査の結果、1205台となった。
なお、燃費および排出ガスの諸元値については、検証が完了していなかった「GT-R」についても諸元値の担保を確認。すべての車種において担保できていることを確認したとしている。
また、燃費・排出ガス抜取検査以外の自動車の構造、装置および性能に関する一連の抜取検査である精密車両測定検査において、「ブレーキ液残量警告灯の試験の不実施」「車外騒音、最大安定傾斜角度の試験の一部不実施」「トーイン、キャンバーおよびキャスター、前照灯の照射方向などの測定値書き換え」「社外騒音、重量測定といった試験条件の書き換え・逸脱」に関する証言が、ヒアリング調査によって確認されたことを報告した。
同社による事実確認によると、一部不適切な検査が行なわれていた車両の品質確認結果については、いずれも保安基準または検査規格に適合していることを確認している。
同社の車両製造工場において不適切な抜取検査が行なわれた背景および原因としては、「完成検査員の規範意識の鈍麻」「現場管理の不在」「完成検査員に対する不十分な教育」「完成検査員の人員不足」「不十分な設備」などの要因を挙げている。
ニュースリリース「完成検査における抜取検査の不適切な取扱いへの対応等について」に記載された「まとめ」として、「会社として、役員から管理職、工場の監督者層に至るまで、完成検査の基準・規程に反することの重大性の認識が極めて薄かった」との認識を示すとともに、あらゆる業務における法令遵守、コンプライアンンス意識の醸成・徹底を図っていくとの決意を示した。
以下に、まとめの全文を掲載する。
まとめの全文
今回の不適切な抜取り検査における原因・背景を調査した結果、「会社として、役員から管理職、工場の監督者層に至るまで、完成検査の基準・規程に反することの重大性の認識が極めて薄かった」という点において、昨年の問題と根が同じであると認識しています。特に、根幹となる完成検査制度の重要性を全社的に徹底していく必要があること、現場と管理者層(本件においては監督者)との距離を縮めること、管理者層による現場の十分な実態把握等、問題の本質は変わらないと受け止めています。
当社は、健全な改善意欲・目標達成意欲を奨励することはあっても、組織疲労・疲弊を招くようなマネージメントは持続可能性を伴わないものであり、全く目指すところでは無いと考えています。ただし、当社は、製造会社として、不断の原価低減努力は不可欠であり、原価低減努力と本件を直接的に結び付けるべきではありません。
一方で第三者報告書が指摘するように、コスト重視が現場管理の不在、抜取検査現場における人員体制が十分でなかったこと等の要因の背景であるとするならば、優先順位が正しく判断されていなかったと言え、当時から現場実態の把握が不十分であったといわざるを得ません。この度の不適切な抜取検査の背景にその様な実態の理解・把握不足による歪みが生じたのであれば、経営層が主体となって実態の理解・把握に努め、改めて従業員のベクトルを合わせていくことが必要であると認識しております。
なお、昨年の完成検査問題を受け、今年4月に設立された日本生産事業本部は、「日本のものづくり改革」と称して、コンプライアンス問題への対策の実施、推進に留まらず、職場環境の改善、老朽設備の刷新による信頼性向上等、日本のものづくりの現場の活性化やそこで働く従業員のモチベーション向上を推進することで、質の高い安全・安心な車を安定的にお客さまにお届けする活動に取り組んでいます。人的リソースへの投資等も含めた必要な投資や本件の対策の実施についても、この活動の中で推進してまいります。
更に当社は、ものづくりに直接関わる部署に限らず、法規・法令遵守に関する仕組み・体制・プロセスの総点検を全社的な活動として徹底的に行ってまいります。法令遵守の徹底を重要な経営課題として捉え、今後もこれらの活動を通じて問題が発見された場合には、責任を持って適切な処置を講じ、あらゆる業務における法令遵守、コンプライアンンス意識の醸成・徹底を図ってまいる決意です。
こうした取り組みを確実に実施し、お客さまをはじめ、あらゆる関係者の皆様からの信頼回復に努めてまいる所存です。