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パイオニアの事業の柱に。自動運転時代に向けた走行空間センサー「3D-LiDAR(3Dライダー)」サンプル出荷説明会
1個100ドル、1万円くらいで。年間200万個~300万個で数百億円の売上に
2018年10月10日 19:13
- 2018年10月10日 実施
パイオニアは10月10日、自動運転車向けに開発を行なっている走行空間センサー「3D-LiDAR」(以下、3Dライダー)の説明会を行なった。これは、同社の「3D-LiDAR 2018年モデル」が9月下旬からサンプル出荷を開始したことにタイミングを合わせたもの。2018年モデル4機種の特徴が説明されたほか、事業規模の予測についても語られた。
説明会の冒頭、パイオニア IR・広報部 部長 小松誠氏があいさつ。「3Dライダーは自動運転において欠くことができないデバイス。地図事業と並んで成長ドライバーと位置付けている」と語った。
製品についてはスマート&オートノマスモビリティ事業開発部 部長 高木晴彦氏が詳説。パイオニアはレーザーディスクやBDドライブなどで高い半導体レーザー技術、光学技術を有しているほか、カーオーディオ&カーナビなどで車載製品としての信頼性技術もあるという。
今回の3Dライダーについては、これらの光学技術、信頼性技術がベースとなっており、半導体レーザーでスキャニングを行なうMEMSミラー機構は、サイバーナビで使われていたAR HUDユニットの投影技術がベースとなっている。
2017年に出荷したパイオニアの3Dライダーの初期モデルは、AR HUDユニットのMEMSミラー機構を利用しており、3Dライダーの原理検証に使用したという。2018年モデルでは、より3Dライダーに適したワイドなMEMSミラーを開発。長距離までセンシングする望遠タイプ、中距離タイプ、中距離タイプを2つ組み合わせたワイドタイプ、近距離のワイドタイプの4つのモデルをラインアップしている。
パイオニアの3Dライダーの特徴は、発光部となる半導体レーザーダイオードが1つ、受光部となるフォトダイオードが1つ、そしてMEMSミラーで構成されているのが特徴という。これまでの代表的なライダーでは、モーターを使ってレーザーの光を周方向に制御、縦解像度を稼ごうと思ったら解像度分のレーザー光が必要だった。
パイオニアの3Dライダーでは1つの半導体レーザーダイオードをMEMSミラーでスキャニングすることで縦解像度を設定でき、望遠タイプで76の縦解像度を実現している。これはラスタースキャンで走査しており、今回のラスタースキャンタイプ以外にもヘリカルスキャンタイプも予定している。
今後自動運転車の開発には、さまざまなセンサーが搭載されていくと予想されているが、高木部長はライダーは必須のものだという。例えば、レーダーではものがあることが分かるが正確な距離が分かりにくいし、カメラでは解像度は高いものの暗いと物体を捉えることができない。一方ライダーであれば、もともとが距離計測のツールとして開発されているので暗闇でも物体の正確な距離を計測できる。これらのセンサーが組み合わされていくのではないかとの見解を示し、ライダーにおいては望遠タイプやワイドタイプなどの組み合わせ活用もあるのではという。
そのために必要となるのはライダーの低価格化。高木部長によると、パイオニアの3Dライダーは、半導体レーザーダイオードが1つ、受光部となるフォトダイオードが1つ、そしてMEMSミラーで構成されているので価格競争力もあるという。現在のモーター駆動ライダーと比べて、駆動部が少ないため(MEMSミラーは振動で光の方向を変える)部品も少なく、信頼性も高く価格も安価にできる。同じようにMEMSミラーを採用するライダーもあるが、それは受光部にアレイを使っており、1つのフォトダイオードで受光するパイオニアは、それに対しても原理的に有利だという。
また、1つの発光部、1つの受光部で構成されるパイオニアの3Dライダーは、ライダーの混信にも強いという。将来的にライダー搭載車が増えると、どのようなクルマもライダーによるレーザーを発光。広く受光するタイプでは間違えて他のクルマのライダーレーザーを受光してしまう可能性があるという。もちろんそれはソフトウェア的にキャンセルするなどの方法があるが、パイオニアの3Dライダーの方式では混信の可能性が7億分の1と、天文学的に小さな可能性になっているとのことだ。
このパイオニアのライダーの想定している売価は1デバイス1万円。100ドル程度で、この価格の実現には年間200万個~300万個の量産が必要になるという。300万個、1万円で売上高は300億円になり、将来的な売上としては数百億円を考えているとした。
2018年モデルの望遠タイプの最大計測距離は晴天時で147m以上、曇天時で181m以上。フレームレートは24fpsで、これは試作版が50fpsでデータ量が多すぎるという顧客の声に応えたもの。905nm(ナノメートル)の半導体レーザーを使い、この波長はアイセーフに適合したものとのことだ。
高木部長は2019年モデルのスペックについても言及。2019年モデルでは望遠タイプで晴天時180m以上の測距性能を持たせたいと語り、将来へ向けての技術開発も継続中だ。
また、これら3Dライダーの使いこなし環境も準備。2つの3Dライダーを接続できるDRC BOXを用意し、さらにそのDRC BOXを3つまで接続できるMPB BOXを用意する。これにより最大6つの3Dライダーを1つのMPB BOXでコントロールできる。そのMPB BOXからのデータをNVIDIAのDRIVE PX 2などの自動運転用のコンピュータで処理できる。パイオニアはNVIDIA DRIVE PX 2用の開発環境向けに3Dライダーのデータを提供しており、自動車メーカーはパイオニアの3Dライダーを複数搭載した自動運転車の開発が容易になっているのも特徴だ。
高木部長は将来的な話として、3Dライダーと地図データの融合も考えているという。パイオニアは関連会社としてインクリメントPがあり、そのインクリメントPが加盟するワンマップアライアンスがある。このワンマップアライアンスにはHereも加盟しており、グローバルレベルでHDマップを整備しようとしている。このマップと3Dライダーを融合することで、自車位置の特定も可能になり、尤度(ゆうど)情報も出せるようになる。つまり、自動車メーカーはより容易に正しく動く自動運転車を開発しやすくなるわけだ。
現在位置比定には、4つの3Dライダーが必要という実験結果になっているが、これはリッチすぎる構成のため、将来的には前1つ、後ろ1つの3Dライダーで現在位置比定&尤度情報生成を行ないたいと語った。
この地図データと連携する3Dライダー、つまり尤度情報を出す3Dライダーについては、できれば2019年初頭には一般公開したいという。「それは、2019年のCESなのか?」という質問に対しては、それをターゲットに開発を進めているとのことだった。