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JAXA、小型衛星「RAPIS-1」搭載の実証テーマの説明会を開催。カーナビ用GPS使用で低コスト化
2018年12月19日 00:00
- 2019年1月17日 打上げ予定
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、2019年1月に打上げを予定している「革新的衛星技術実証1号機」の「小型実証衛星1号機(RAPIS-1)」および、同衛星に搭載する7つの実証テーマに関する記者説明会を都内で開催した。
革新的衛星技術実証1号機とは、JAXAが民間企業や大学などが開発した機器や部品、超小型衛星、キューブサットに宇宙実証の機会を提供する「革新的衛星技術実証プログラム」の1号機であり、7つの機器・部品の実証テーマを搭載した小型実証衛星1号機(RAPIS-1)と超小型衛星3機、キューブサット3機の計7機の衛星で構成されている。
「革新的衛星技術実証プログラム」は、2年に1回、計4回の打ち上げ実証を計画しており、実証テーマは通年公募を行なっている。国内の民間企業や大学の技術やアイデアを実際に宇宙で実証することにより、日本の宇宙産業の発展につなげることを目的としている。
同プログラムの1号機に搭載されるRAPIS-1のサイズは、1022×1082×1060mm、重量は約200kg。宇宙ベンチャーのアクセルスペースが開発した小型衛星で、同社がこれまで開発してきた50~100kg級の超小型衛星の技術をベースとしている。アクセルスペースの代表取締役CEOの中村友哉氏によると、「絶対に“死なない”衛星を目指した」ものであり、ミッション系(実証テーマ部品・機器)とバス系(電力・通信・姿勢制御などの人工衛星としての基本機能)を可能な限り独立させて、実験中のミッション系に不具合が生じても、バス系に影響することを防ぐ設計となっている。
今回の説明会では、RAPIS-1に搭載される7つの実証テーマについて、企業や大学、研究機関などの提案機関の代表者が登壇し、各テーマの概要について説明した。また、説明会の終了後には、マイクロソフトのヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」を利用して、実証テーマをMR(複合現実)で紹介する催しも行なわれた。
今回の7つのテーマのうち、自動車に関連した話題として注目されるのが、中部大学 工学部 宇宙航空理工学科・准教授の海老沼拓史氏による「超小型・省電力GNSS受信機の軌道上実証」だ。
海老沼氏は人工衛星の位置や運動を特定する軌道力学を専門としており、主に人工衛星のためのナビゲーションシステムを研究している。人工衛星用のGPS受信機は、以前はかなり大きなものだったが、カーナビ用のGPS受信機をベースに小型のものを低コストで開発する取り組みが進められている。海老沼氏は今回、最新の車載用GNSS受信機のアーキテクチャーをベースに超小型衛星での利用に最適化したGNSS受信機「Firefly」にアンテナを一体化させた「Fireant」を新たに開発してRAPIS-1に搭載し、宇宙環境での動作状況確認を行なう。
Fireantのサイズは 52×52×11mmと切手大の大きさで、重量は約45gと軽量だ。今回RAPIS-1の実証では、新開発のFireantで軌道上実証を実施し、連続運用のデータを取得する。これにより、位置情報の精度を検証するとともに、放射線による誤作動など、地上試験との比較検証を行なえる。
キューブサットのような超小型衛星のミッションは、数十機から数百機以上の衛星からなる「Swarm」がトレンドであり、多数の衛星を一度に運用するためには、衛星側の高度な自律化が求められるという。そこで必要となるのが、位置情報や速度情報、精密な時刻を提供できるGNSS受信機であり、海老沼氏は「将来の衛星の自律化や、Swarmなど新しいミッションの創出に欠かせないキーコンポーネントとなっていくデバイスであると信じています」と語った。
RAPIS-1および超小型衛星3機、キューブサット3機は現在、各種試験および安全審査などを経て、射場にて打ち上げに向けた準備を実施中で、2019年1月に、強化型イプシロンロケットにより鹿児島県のJAXA 内之浦宇宙空間観測所から打ち上げを予定している。