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自工会の豊田会長、令和の幕開けに「元気に輝く日本を取り戻したい」。3つの重点方針発表

平成については「日本のものづくりを必死に守り抜いた30年」

2019年5月13日 開催

一般社団法人日本自動車工業会 会長でトヨタ自動車株式会社 代表取締役社長の豊田章男氏

 自工会(日本自動車工業会)会長の豊田章男氏は5月13日、新元号「令和」初となる会長記者会見を実施。会見では、自工会の活動における重点方針の3本柱を発表するとともに、令和の時代に向けて日本の自動車産業が目指す姿や果たすべき役割などについて、その考えを話した。

 この記者会見の冒頭に、豊田会長は「天皇陛下の御即位、新たな元号令和の始まりを心よりお喜び申し上げます」とお祝いの言葉を述べるとともに、平成という時代について「自工会も、昭和、平成、令和、3つの時代を迎えることになりました。平成はどんな時代だったか? 昨年からそんな質問をいただきました。自動車産業の平成をひと言で申し上げますと、縮小を続ける市場、度重なる自然災害の中で、日本のものづくりを必死に守り抜いた30年ということだったと思います。平成の自工会として私の記憶に強く残っているのは、自動車業界がオールジャパンになれた時のことでした。東日本大震災の時に、私たちは1人でも多くの笑顔を取り戻したいと、復旧復興に向けて心を1つにすることができました。各社が自社の利益を優先することなく、1つになって取り組めたことは、つらい思いでの中ではありますが、よい記憶として残っています」と振り返った。

 今回、自工会の活動における重点方針の3本柱として、「未来のモビリティ社会の実現」「次世代につなぐ豊かなクルマ・バイク文化の創造」「持続的発展を支えるビジネス環境の整備」を掲げた。豊田会長は未来のモビリティ社会の発展に向けて“ホームプラネット”への想いを持つことと、オールジャパンで活動を推進していく必要性を強調した。

 未来のモビリティ社会の実現では、産官学・異業種との連携により、モビリティを通じた社会課題の解決・新たな価値創造に貢献。CASEの進展を踏まえ、安全・安心、環境に優しいモビリティ社会像の具体化、および実現に向けた必要施策を明確化する。

 次世代につなぐ豊かなクルマ・バイク文化の創造では、東京モーターショーや東京オリンピック・パラリンピックを活用し、次世代のクルマ・バイクファン作りや豊かなライフスタイルの実現につなげる。

クルマ・バイクファンの育成・拡大として、クルマ・バイク好きが主役となって楽しめる機会の提供や、テクノロジーがもたらすモビリティの新たな可能性、魅力を次世代を担う若者を中心としたファン拡大を目指す。また、東京モーターショーや東京オリンピック・パラリンピックを活用した情報発信力強化として、すべての人・モノの移動をより助け、もっと便利にするテクノロジーを通したモビリティの付加価値の提案に取り組むとしている

 持続的発展を支えるビジネス環境の整備では、自動運転などの制度整備の推進、次世代自動車などの実用化と普及につながる活動の推進、サプライチェーン全体への適正取引の推進など、国内外でのより自由で公正なビジネス環境に向けて取り組み、持続的成長に貢献することを目指すという。

一般社団法人日本自動車工業会 会長でトヨタ自動車株式会社 代表取締役社長の豊田章男氏(左)、日本自動車工業会 副会長の永塚誠一氏(右)

 新たに始まる令和という時代に向けて、豊田会長は「私ども自動車産業の令和は、ホームプラネットという視点を大切にしていきたいと考えています。日本では近年自然災害が度重なり、尊い命が失われ、多くの方がそれまでの普通の生活を失っています。世界的にもこうした災害は続いており、悲しみが絶えません。要因の1つには地球温暖化があると思います。温暖化以外にも地球規模の課題は、大気汚染、エネルギー問題などたくさんございます。どれも昭和に始まり、平成の時代にも解決できず、深刻になっているものばかりであり、いずれも自動車が1つの要因であるのは残念ながら事実だと思います。交通事故もゼロにはなりません。便利さ、楽しさといったクルマのプラスの面が大きくなった一方、環境汚染や交通事故など未来へ残してはいけないマイナス面がまだまだ残されております。プラスの面をもっと大きくして、お客さまに笑顔になっていただくことにも引き続き取り組んでまいりますが、それだけでなく、次の世代が安心して暮らすことのできるこの美しいふるさとを守っていく。マイナスの面をミニマイズしていくことも、われわれ自身で絶対にやり遂げなければいけないと思っています」との意気込みを示した。

 豊田会長も使う“ホームプラネット”という言葉については「あたりまえですが、われわれが生きるこの星は空も海もつながっていますので、持つべき視野は地球規模でないといけないと思います。生まれた町や国を愛するように、世界中のみんなの故郷であるこの星を愛して、美しい故郷を引き継いでいくことが、私たちの世代に課せられた責任だと思います。だからこそ、ホームタウン、ホームカントリーに加えて、ホームプラネットという概念が、今われわれに求められているのだと思っています」と説くとともに、「自動車業界はこれまでにも新たな環境技術開発に積極的に取り組んできました。ただ、どんなに優れた技術でも普及しなければ世の中のお役に立つことができません。国によって環境問題の状況やクルマの使われ方は異なります。地球上のどんなお客さまのご要望にもお応えするためには、さまざまな電動車をフルラインアップで取り組んでおく必要があると思います。ハイブリッド、プラグイン、燃料電池、ピュアEV、今の日本の自動車産業はどの国よりもそれぞれの取り組みが進んでいます。環境技術を普及させることで、地球という美しい故郷ホームプラネットを守りたい、それをわれわれ日本の自動車産業が世界に先駆けていければと思っています」と述べた。

 会見では、新しい時代が幕を開ける時に豊田会長も休みを取れたことを報告。令和の時代における日本の自動車産業の役割について、豊田会長は「皇位継承に伴い新しい時代を迎えるのは、日本らしさの1つだなと思いながら、日本という国に生きているからこそのありがたみのようなものを感じておりました。残念ながら平成の日本は、他国に比べて成長が鈍化してしまいました。新たな時代を迎えて元気に輝く日本を取り戻したいと思ったのは私だけでないと思います。日本が世界のお役に立てる、世界に感謝されるような日本になる、新たな時代はそんなふうに輝く日本になっていければと願っております。大変革を迎えたわれわれ自動車産業は、そんな日本になっていくための大きな力になれると信じております、しかし、1社だけ、1産業だけの力で大変革を力にかえるのは難しいかもしれません。自動車各社が競い合いながら力を合わせていく、業界を超えてほかの産業の皆さまとも仲間になっていく、さらには国とも一体となり、いろいろご支援をいただけて初めて思いを叶えていけると考えています。令和には、人々が美しく心寄せ合う中で文化は花開くという意味があると聞きました。故郷である地球、ホームプラネットへの想いを持ってみんなが心を寄せあえるオールジャパンになれば、世界の人々から“日本の自動車があってよかった、ありがとう”と言ってもらえるようになると信じております」と話した。