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CHAdeMO協議会、志賀俊之氏が会長を退任。新会長は東京電力HDの姉川尚史氏に

日中共同開発の次世代規格「ChaoJi」の試作品を公開した「2019年会員大会」

2019年5月27日 開催

CHAdeMO協議会 2019年会員大会に出席したCHAdeMO協議会 会長の志賀俊之氏

 CHAdeMO協議会は5月27日、2019年度の活動方針を示す「2019年会員大会」を開催。会場では、同協議会会長の志賀俊之氏が退任し、新たに現代表理事の東京電力ホールディングス フェローの姉川尚史氏が会長に就任することが報告されるとともに、日中で共同開発する次世代の超高出力充電規格「ChaoJi」の試作品などが公開された。

 同大会では、次世代の超高出力充電規格「ChaoJi」について、日中2国間の協力関係にとどめず日中以外の他国の企業/団体にも広く参加を呼びかけるとともに、世界各地で再生可能エネルギーの出力変動調整にEVを活用する実証プロジェクトが行なわれており、V2X技術のいっそうの拡大を目指していくことを参画する会員企業らと確認した。

日中で共同開発する次世代超高出力充電規格「ChaoJi」の試作品。車両側に設置されるインレット
液冷のためのパイプが用意されている
液冷のためのパイプのないモデルも
コネクタのスケッチも公開

 会場で登壇したCHAdeMO協議会会長の志賀俊之氏は「当協議会は2010年の設立以来、安全で互換性、信頼性、拡張性の高い技術規格の確立を目指して今年で活動10周年の節目を迎えました。この10年間を振り返ると、充電器数は設立初年の70倍の2万5300基に、会員総数は初年の3倍近い国内外39か国、426社に上り、協議会活動はグローバルで飛躍的な成長を遂げました」とこれまでの活動を振り返った。

 直近2018年の活動について、志賀氏は「多くの協議会活動がダイナミックに発展した1年にもなりました。EVの高性能化や大型車両の電動化を鑑み、次世代の高出力充電規格の制定を目指して、昨年8月に中国電力企業連合会と共同検討の覚書を調印いたしました。この規格が世界統一規格として、日中のみならずグローバルEV市場での展開を前提として、既存の急速充電規格との後方互換性やV2X機能を確保する究極の充電規格となります」と話した。

 この次世代の充電規格「ChaoJi」については、2020年の規格設定を目指して日中間で技術検討が進められており、CHAdeMO協議会においても次期CHAdeMO標準仕様として採用することが正式に決定されたことを報告。

 続けて、志賀氏は「2輪車用を含めた小型車両や大型車両などの車両電動化ニーズに応えるべく、小型車用の低出力型CHAdeMO規格、大型車用のパンタグラフ式高出力充電規格を、国際電気標準会議IECに提案して年内の国際規格化を目指しています。これにより、低出力から高出力、小型車から大型車をカバーするCHAdeMO規格ラインアップが完成する見通しです」との見通しを示した。

 また、充放電技術関連について、志賀氏は「電力グリッドとEVのエネルギー連携V2Xのグローバル展開に鑑み、EVによる放電をした場合の安全性の検討、各国電源グリッドの電源品質やEV放電に関するグリッド視点での要求スペックの確認に着手しております。社会全体のエコシステムの重要要素である電動車両の普及と、それを支える充電インフラの発展に貢献すべく、力強く歩みを進めてまいりたい」との方針を述べた。

 今回、同協議会の会長を退任することについて、志賀氏は「本年6月の日産自動車株主総会を持って取締役を退任することにいたしました。合わせて日産に関連する団体の理事長職などから退任する予定で、CHAdeMO協議会の会長の職も合わせて退任することにいたしました。思い起こしますと2010年に誕生したCHAdeMO協議会もまる10年、EV時代の来訪を夢見て、さまざまな局面で関わってきたのが今懐かしい思い出になっています。特に欧州米国との規格協調では、国際標準化を作っていく難しさを身をもって経験いたしました。そういった困難を乗り越えてCHAdeMOがここまで発展成長できたのは、まさに会員企業の皆さま方のおかげだと思っております。会長を引き継いでいただく姉川さんとは、私自身10年以上のお付き合いで、まさに姉川さんはCHAdeMOの生みの親であります。姉川新会長のもとで、CHAdeMOがますます発展することを心より祈っております」と述べた。

ChaoJiをCHAdeMOの次世代規格として正式採用

CHAdeMO事務局長 吉田誠氏

 CHAdeMO協議会の事業報告と2019年度活動計画については、CHAdeMO事務局長 吉田誠氏から説明があり、4月19日に行なわれたCHAdeMO理事会において、ChaoJiについて、CHAdeMOの次世代規格として採用が決定したことが報告された。

 今後の規格化計画では、ChaoJiについて2020年規格完成に向けて実証実験の開始。日中双方で車両インレット、コネクタ、アダプタを準備。耐熱、強度などのハード、コントロールパイロットなどソフトの両面で実験を進めるという。

 また、CHAdeMO協議会と中国電力企業連合会との覚書では、世界的な普及に向けて協力することも記載されており、ドイツ、フランス、ASEAN各国、韓国、豪州、南米などに採用を呼びかけていく。また、2輪車(小型車)用充電規格については2019年中の規格化、大型車用パンタグラフ規格については2019年IECでの規格化に目途付けを目指すという。

CHAdeMO事務局長 吉田誠氏が示したスライド

姉川新会長、日産「リーフ」で東京から長崎まで往復2850kmの旅。10年間の取り組みで拡大した充電ネットワークを確認

CHAdeMO協議会 会長に就任予定の東京電力ホールディングス フェロー 姉川尚史氏

 新たにCHAdeMO協議会の会長に就任する姉川尚史氏からは「CHAdeMO 10年のあゆみと将来」と題した講演が行なわれ、その中でこの10連休のうち6日間を使って、日産「リーフ」で東京から長崎まで往復2850kmの旅をしてきたことを報告。この10年間で整備された充電インフラ、サービスによって不安なく走れるようになったという旅先で出会ったEVユーザーの声を紹介。姉川氏は「これも志賀さまのリーダーシップ、会員の皆さまの創意工夫、情報共有といった盛り上げの結果だと思います。これから皆さまの努力がもっともっと大きく結実するよう、私自身も頑張っていきたい」との意気込みを語った。

 その後のCHAdeMO総会セミナーでは、経済産業省 企画官 電池・次世代技術室長石川浩氏から「自動車を巡る構造変化 日本の目指す方向性」、CHAdeMO欧州事務所 ブレッシュ山辺知子氏から「チャデモ欧州事務所の活動について」、東京消防庁 予防部 予防課 副参事 中野孝雄氏から「全出力50kWを超える急速充電設備の火災予防対策に関する検討部会報告」、ULジャパン事業開発部 部長 川口昇氏「大容量充電に対応した安全認証規格 UL2251について」といった講演が行なわれた。