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【ル・マン24時間 2019】日本時間22時の決勝レーススタートに向け、トヨタ2台はウォームアップで1-2フォーメーション

トヨタ2連覇へ向けて順調な滑り出し

2019年6月15日15時(現地時間) 決勝スタート

2019年6月15日22時(日本時間) 決勝スタート

ウォームアップ走行を走る8号車 Toyota TS050 HYBRID(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組)

 世界三大レース(F1モナコGP、インディ500、ル・マン24時間)の1つに数えられる第87回ル・マン24時間レースは、6月15日15時(現地時間、日本時間22時)に決勝レースのスタートを迎える。

 それに先だって9時(現地時間、日本時間16時)からはウォームアップが行なわれ、Toyota Gazoo Racingの2台が1-2と快調な滑り出しを見せた。トップタイムをマークしたのは、ポールポジションを獲得した7号車 Toyota TS050 HYBRID(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組)。2位が8号車 Toyota TS050 HYBRID(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組)となった。

ウォームアップ走行でトップタイムは、ポールポジションを獲得した7号車 Toyota TS050 HYBRID(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組)
トヨタのピット風景

EoTの改定などで昨年より差が縮まったトヨタとプライベートチームのLMP1

 ル・マン24時間レースは1922年に初めてレースが行なわれた伝統のレースで、第2次世界大戦での中断などを挟んでこれまでに86回行なわれており、今回は87回目になる。

 現在のル・マン24時間レースは、世界耐久選手権(WEC)の1戦とされており、今回のレースは今シーズンから始まった新しいシーズン形式(ル・マン24時間が最終戦)での最終戦となるレース。このため、今回のレースの結果で、各クラスのチャンピオンが決まるレースとなる。今シーズンはそうしたル・マン24時間レースが最終戦になる最初のシーズンとなるため、昨年(2018年)のル・マン24時間レースが第2戦として行なわれるという変則的なシーズンになっており、そのためにスーパーシーズンと呼ばれている。

決勝前日となる金曜日、ル・マン市内でパレードが行なわれた

 ル・マン24時間レース、そしてWECには4つのクラスが用意されている。それがLMP1、LMP2、LMGTE Pro、LMGTE Amという4つのクラスだ。LMPはLeMans Prototype(ル・マン・プロトタイプ)という名称の省略形であることから分かるように、ル・マンやWECに特徴的なプロトタイプカーで、上位クラスのLMP1とLMP2という2つのクラスが用意されており、LMP1はワークスとプライベーター向け、LMP2はプライベーター向けとなっている。

 LMGTEはGTカーのル・マン版という意味で、ル・マン向けのレギュレーションで作られたGTカーとなる。プロドライバー向けのLMGTE Pro、ジェントルマン・ドライバー向けで3人のうち1人まではプロも走れるLMGTE Amという2つのクラスから構成されている。

 このうち総合優勝を争うのが、LMP1クラスとなる。LMP1クラスには2017年まではトヨタとポルシェという2つのワークスチームが総合優勝を競っていたが、2017年シーズンの末を持ってポルシェが撤退、現在のスーパーシーズンではLMP1のワークスチームはトヨタだけになってしまった。このため、ル・マン24時間の主催者であるACOはLMP1に参戦するプライベーターチームに対して、ワークスチームであるトヨタとの差を縮めるためにEoT(Equivalence of Technology)という性能調整の仕組みを導入し、ワークスチームでありLMP1で唯一のハイブリッドシステムを搭載しているトヨタとの差を縮め、プライベートチームにも戦えるようにしてきた。ただ、これまでそれが機能していたかと言えばそうでもなく、昨年のル・マン24時間レースでは、1-2フィニッシュを飾ったトヨタと3位以下の間には12周の差がついており、大きな差があったということは否定できないだろう。

 そこで、ACOではレースごとにEoTを改定しており、今回のル・マン24時間レースに先立ってもEoTが改定されており、トヨタに10kgのバラストが積まれることになり、プライベーターに対してはエンジンや車両側の制限が緩和されるなどの措置が加えられている。これにより、トヨタとプライベーター勢の差は縮まっており、3位になった17号車SMPレーシングと2位のトヨタ8号車の差はコンマ2秒でしかない。昨年よりは両者の差は縮まり、緊迫したレースになる可能性は高まっていると言える。

ウォームアップではトヨタの7号車と8号車が1-2フォーメーションを形成

 そうした中で行なわれた決勝レース前最後の走行機会となるフリー走行では、一昨日の予選結果(関連記事:予選終了。小林可夢偉選手がドライブする7号車 Toyota TS050 HYBRIDがポールポジション獲得)を反映したように、Toyota Gazoo Racingの2台が1-2という結果になった。

 トップタイムをマークしたのは7号車 Toyota TS050 HYBRID(マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス組)で、2位が8号車 Toyota TS050 HYBRID(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/フェルナンド・アロンソ組)となった。3位に入ったのはRebellion Racingの3号車 Rebellion R13 - Gibson(トマス・ローラン/ナタナエル・バートン/グスタヴォ・メネゼス組、MI)で、4位は予選3位になっている17号車 BR Engineering BR1 - AER(ステファン・サラザン/イーガー・オルドゼフ/セルゲイ・シロトキン組、MI)。決勝レースではTGR、レベリオン、SMP Racingの6台を中心に総合優勝が争われることになりそうだ。

 LMP2のトップタイムはG-Drive Racingの26号車 Aurus 01 - Gibson(ロマン・ルシノフ/ジョブ・ヴァン・アイテルト/ジャン・エリック・ベルニュ組、DL)、LMGTE Proは92号車 Porsche 911 RSR(ミハエル・クリステンセン/ケビン・エストレ/ローレンス・ランソール組、MI)、86号車 Porsche 911 RSR(ミハエル・ウェインライト/ベンジャミン・バーカー/トーマス・プレイニング組、MI)となっている。

24時間後にチェッカーを受けるまでレースの行方は分からない。TV中継や配信などで楽しめる

 レースは例年どおり、現地時間土曜日の15時(日本時間22時)にスタートし、24時間後の翌日(6月16日)15時(日本時間15時)にゴールする予定。

 ル・マンのルールは特別で、周回やタイムが他車に比べて早いだけでなく、チェッカーを受けなければ順位として認められないというルールがある。過去にはこのルールに泣かされた車両が多数ある。

 最も有名な例としては、2016年に中嶋一貴選手がドライブしていたTS040 Hybridがレース終了まで後数分というころまでトップを走った後、有名な「ノーパワー、ノーパワー」という中嶋選手の叫びと共にスローダウン、結局そのままチェッカーを受けることができず(正式には最終ラップを規定時間内で走り切ることができず)、優勝を失うだけでなくリタイア扱いになってしまった例もある。この例が歴史上最も有名なゴール目前のリタイアだが、他にも23時間走って2位だったのにリタイアになって順位を失うなどの例は多く、意外とこのチェッカーを受けないといけないルールはくせ者なので、覚えておいて損はない。

 2連勝を狙うToyota Gazoo Racingに関して言えば、確かにEoTにより昨年より差は縮まっているが、唯一のハイブリッド車としてレース中に周回遅れを抜く時のアドバンテージなどはまだまだ大きいとプライベートチームのドライバーは指摘しており、その意味では1周での差は縮まっているが、総合力では優位であることには違いはないだろう。となると、敵は自分自身と言え、ちょっとした緩みでトラブルを出すと、昨年よりも小さいでプライベートチームが追いすがってくるという状況だと言うことが出来、決して安穏とはしていられる状況ではない。

 そして、繰り返しになるがル・マン24時間レースは、2016年の時のようにチェッカーを受けることができなれば、レースを失うのがル・マン24時間のルールだ。その意味で、日曜日の15時まで何が起こるか誰にも分からない、本当の筋書きのないレースが展開されるのに改めて期待したい。

 こうしたル・マン24時間レースを映像で楽しむには2つの方法がある。1つはAndroidやiOS向けのル・マン24時間公式アプリで追加料金を払うとストリーミング映像でライブ中継を楽しむことができる。ただし、この場合は解説などは英語のみとなる。

 日本でもおなじみ高橋二郎氏をはじめとした日本の解説陣による解説でレースを楽しみたい場合は、BS放送局のJ-SPORTSないしは、同じくJ-SPORTSが提供している動画ストリーミングサービスのJ-SPORTSオンデマンドなどによる24時間中継を楽しみたい。詳しくはJ-SPORTSのWebサイトを参照いただきたい。

 また、2連覇を狙うトヨタのレース活動を担っているToyota Gazoo Racingは同チーム2台(7号車、8号車)のオンボードカメラのライブストリームを提供する。詳しくはToyota Gazoo RacingのWebサイトWebサイトから詳細をご覧いただきたい。TwitterなどのSNSで応援する場合にはハッシュタグ「#TGRルマン」をつけて応援することを同チームでは呼びかけているので、こちらもお忘れなく。