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【ル・マン24時間 2018】トヨタ 友山副社長、GRスーパースポーツコンセプトの市販を「近い将来」と説明
TOYOTA GAZOO Racing記者会見
2018年6月16日 18:34
- 2018年6月15日(現地時間)開催
6月13日~17日(現地時間)、フランス ル・マン市のサルト・サーキットで「第86回 ル・マン24時間レース」が行なわれている。例年金曜日(2018年は6月15日)は休息日で、サーキットではファンのためのピットウォークやメディア関係者などを対象にした記者会見が実施される。
1985年にトムス85Cで初参戦して以来、33年越しの初優勝を目指すトヨタ自動車も、サーキット内に特設されている「TOYOTA Fan Village Area」において記者会見を開催した。この中でトヨタ自動車 副社長 兼 GAZOO Racing Company プレジデント 友山茂樹氏は、1月の東京オートサロンでワールドプレミア(世界初公開)した「GRスーパースポーツコンセプト」を、欧州で初めて公開した。
自らもドライブした“楽しいクルマ”「TS050-HYBIRD」をベースにしたGRスーパースポーツコンセプトの市販をル・マンで約束
記者会見に登壇した友山氏は、「ル・マン24時間は世界で最も有名なレースで、非常に熱狂的なときだ。昨年は私のボスに当たる豊田章男がこのサーキットに来て、その空気に触れた。自動車メーカーにとってとても重要な歴史的なレースであることを再確認する時間となった。昨年は残念ながら勝てなかったが、今年こそとドライバーに誓ってここまでやってきた」と述べ、2018年はトヨタにとって勝ちを獲りに行く年だとした。そして、1年間の準備の結果として「クルマは耐久性を増し、チームも成長した。さらにフェルナンド・アロンソ選手もチームに加わってくれてパワーアップした」と述べ、その準備が整い、あとはレースを迎えるだけだとした。
友山氏は自身がプレジデントを務めるGAZOO Racing Companyについて説明。「我々のカンパニーはトヨタ自動車の中で最も小さなカンパニーとしてスタートしたが、今後もレーシングカンパニーであり続ける」と述べ、Yaris GR(日本名GR Vitz)、スープラ・レーシング・コンセプトなどの車両を紹介し、GAZOO Racing Companyがそうしたピュアスポーツカーを市場に送り出すカンパニーとして設立されたことを説明した。
GAZOO Racing CompanyがTOYOTA GAZOO RacingとしてWECに参戦する意味について「WECは世界で最もプレステージがあるシリーズの1つで、過去6年にわたり参戦してきた。もちろんレースで勝つことは重要だが、それと同時に技術の研究開発も重要な要素である。電動化の技術などを生産車にフィードバックしていくという役割がある。残念ながら我々の競合だったポルシェが撤退してしまったが、それでも引き続きル・マンはハイブリッドシステムの開発に必要な場だ」と述べ、引き続きル・マン24時間に参戦する理由が、技術の開発、特にハイブリッド開発であることを強調した。
その上で、トヨタがル・マンで走らせるTS050-HYBIRDの技術をベースにして開発した次世代スーパースポーツとして「GRスーパースポーツコンセプト」を欧州で初公開。GRスーパースポーツコンセプトの詳細については、関連記事(1000PSの新コンセプトカー「GRスーパースポーツ コンセプト」)ご覧いただきたいが、2.4リッター直噴V6ターボのICEとToyota Hybird System-Racing(THS-R)を組み合わせたパワーユニットを搭載しており、システム出力735kW(1000PS)を実現する、2シーターのロードカーになる。
友山氏が「これが欲しい人?」と言うと、最前列に座っている、TOYOTA GAZOO Racingのドライバー達全員が率先して手を上げ、特に大きく手を上げた小林可夢偉選手に対して友山氏は「可夢偉ありがとう、お金貯めておいてね」と返すと、会場は笑いに包まれた。
実は友山氏、その小林可夢偉選手のレクチャーを受けて、富士スピードウェイでTS050-HYBIRDを自分でドライブしたという。友山氏は「覚えることのリストがものすごいあってこれは無理かと思ったのだが、なんとかスタートできた。ドライブしてみると楽しくて笑ってしまった。これまで一度も体験したことがないクルマだった」と述べ、そのTS050-HYBIRDのエッセンスをGRスーパースポーツコンセプトに詰め込むというコンセプトでプロジェクトを始めたことを明かし、「みなさんもいつか本当にこれを運転するときがくるだろう」と述べ、市販していく計画であることを明らかにした。
友山氏はプレゼンテーションの最後に、豊田章男社長の「自動車産業の誕生から100年が過ぎ、これまで何度も変革の波に直面したように、今は変革の時となっている。しかし、私は次の100年でも自動車が楽しいことが重要だと信じている」という英語のコメントを紹介。単なるコモディティになるのではなく、ユーザーに楽しさを提供していくことが重要だと述べ、話を締めくくった。
TMG村田社長はGRスーパースポーツコンセプトベースでのル・マン参戦を示唆
友山氏のスピーチの後、チームのオペレーションを担当するTMG(Toyota Motorsport GmbH、トヨタ自動車の欧州でのモータースポーツの拠点企業、WEC参戦以前はF1参戦を担っていた) 社長 村田久武氏、7号車のドライバー(マイク・コンウェイ選手、小林可夢偉選手、ホセ・マリア・ロペス選手)、8号車のドライバー(セバスチャン・ブエミ選手、フェルナンド・アロンソ選手、中嶋一貴選手)が登壇し、欧州広報担当者からの質疑応答が実施された。
──友山さん、このGRスーパースポーツコンセプトはいつ発売するのか?
友山氏:プレゼンテーションでも言ったように、「近い将来」(Near future)だ。いつとは具体的にはいえない、トップシークレットだし(笑)。
──村田さん、あなたの後ろにあるクルマでル・マンにでることはあるのだろうか? 2020年から規定が変わるみたいだし……。
村田氏:それは友山さんとお話合いをしないといけないな、こんなにセクシーなクルマを作って2020年に参戦するとか最高だね。
友山氏:それはいいアイディアだね(笑)。でもル・マンはこういうクルマを発表する場としても最高だろうね。
──村田さん、TS050-HYBIRDで戦った経験はこのクルマの開発にも活かされている?
村田氏:我々がレーシングハイブリッドの開発をレーシングフィールドで続けているのは、こういうクルマに技術をフィードバックすることで、それが我々の夢の1つだ。
──明日の目標は?
村田氏:もちろんポディウムのトップが目標だ。
──マイク、予選まではどうだったか?
マイク・コンウェイ選手:昨日は非常にトラフィックがすごくてクリアラップをとることができなかった。難しかったが、両方のクルマがフロントローにつけられたのはいいことだ。長いレースだし、コンディションも変わってくると思うので、トリッキーなレースになると思う。日曜日に向けて頑張るよ。
──ホセ、君の後ろにあるクルマ(GRスーパースポーツコンセプト)はどうだい?
ホセ・マリア・ロペス選手:ぜひ早くドライブしたいね(笑)。TS050-HYBIRDをドライブするのは非常にファンタスティックなことで、非常に楽しいよ。ル・マンにいるということそのものがとても特別なことだ。
──可夢偉、昨日のアタックはどうだったかな?
小林可夢偉選手:予選ではトラフィックに引っかかってしまった。一貴はとてもいい走りをして、チームが1-2をとったのはいいことだ。去年はポールポジションをとって勝てなかったので、今年は戦略を変えて2位でもいいと思ったんだ、勝つためにね(笑)。
──後ろのクルマ(GRスーパースポーツコンセプト)はどうかな?
小林可夢偉選手:TS050-HYBRIDとはちょっと違うけど、非常に速いプロトタイプカーだ。すでに東富士の研究所で隣に60~70歳ぐらいの人を乗せて走ったんだけど、性能がすごすぎてずっとおびえていたよ(笑)。でも乗った感想はとても快適で、素晴らしい性能を持っている。こんなハイパフォーマンスカーが公道を走れれば、本当に素晴らしいことだと思う。
──セブ、昨日の予選はどうだったかな?
セバスチャン・ブエミ選手:非常によい週末を過ごしていると思う。一貴は本当にいい仕事をしてくれた。ただ、それはまだ小さなパートであって、戦略などをよく話し合って、簡単ではないと思うけどレースに勝ちたいね。
──一貴、2回目のポールポジション獲得おめでとう。
中嶋一貴選手:昨日は非常にいいラップができた。チームにとってもよかったし、非常に運がよかったと思う。でもレースで重要なことは日曜日の午後3時にいい運があることなので、そうだといいね。これまでよくない思い出もあるけど、今年こそそれを払拭して、今回こそ僕たちの“時”が来るといいね。
──フェルナンド、今シーズンから我々のチームに加入してどうかな?
フェルナンド・アロンソ選手:非常にグレートな滑り出しで、とても楽しんでいる。冬の間のテストでも、そしてレースでも競争力があることを確認できている。これからすべてのレースで勝ちたいね、スパでも勝てたし、素晴らしいレースをしたいね。そしてできれば、日曜日の午後にも同じ質問をしてほしいな(笑)。