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【ニュル24時間 2019】スバルの技術を統括・担当する、大拔CTO(最高技術責任者)と第一技術本部 藤貫副本部長にニュル24時間参戦について聞いてみた

2019年6月20日~23日(現地時間) 開催

ニュルブルクリンク24時間レースに駆けつけた、株式会社SUBARU 取締役専務執行役員 CTO 大拔哲雄氏(右)、同 執行役員 第一技術本部 副本部長 藤貫哲郎氏(左)

 6月20日~23日(現地時間)にドイツで開催されている「第47回 ニュルブルクリンク 24時間レース」。24時間の決勝レースは22日~23日にかけて行なわれている。決勝前、チームの戦いを見守るために、日本から技術を統括・担当する役員がニュルブルクリンクに駆けつけた。スバル 取締役専務執行役員 CTO(最高技術責任者) 大拔哲雄氏、同 執行役員 第一技術本部 副本部長 藤貫哲郎氏に、スバルがニュルブルクリンクを戦う意義を聞いてみた。


──スバルがSTI(スバルテクニカインターナショナル)と一緒にニュルブルクリンクに挑戦する意義はなんですか?

大拔氏:速いクルマ、遅いクルマ、いろいろなクルマが出ている中で、我々のクルマも勝てるチャンスはあると思っていますし、なにしろコースが普通のサーキットと違って、荒れた路面を持っていたり、一般道に近いところもあったりと。多様なコース状態で我々のクルマで確認できる、それがニュルブルクリンク24時間レーズに出ている理由です。

 自分たちの量産のクルマにもつながると思っています。

ニュルブルクリンク24時間挑戦が市販車にもつながるというCTO 大拔哲雄氏

──スバルとしては、2008年以前は世界ラリー選手権に参加していました。ラリーからサーキットの戦いと変わったわけですが、ラリーでの戦いと、サーキットでの戦いの位置づけの違いは?

大拔氏:ラリーはレギュレーションの問題などもあったのですけどね。ラリーに関してはしっかり結果も出していましたし、我々としてはいろいろなところに挑戦したかったという部分もあります。

──先ほど大拔CTOから、市販車へもというお話が出ました、ニュルブルクリンク24時間レースへの参加がクルマ作りに与える影響は、具体的にはどのようなことがあるのでしょうか?

藤貫氏:クルマは極限で走らせると、いいところ、わるいところが出てきます。そのような環境に置くというのはすごく重要なことだと思っています。細かくいうと剛性のあり方などが挙げられます。静的な剛性ではなく、動的な剛性のあり方はニュルブルクリンクで勉強しました。単純に静剛性を上げていけばよいだけでないと分かってきたりとか、ではどこをどうすればよいかとか。ずいぶんここ(ニュルブルクリンク)で分かってきました。

 また、メンバーのクルマを評価する能力も上がりました。

第一技術本部 副本部長 藤貫氏は開発のために何度もニュルブルクリンクは訪れているが24時間レースは初めて。「こんな華やかなニュルは初めてですね」とにこやかに語ってくれた

──ニュルブルクリンクへの挑戦ですが、単純に成績だけを追うのであればメカニックのメンバーを固定してスキルを上げていくのもありかと思います。ところがスバル&STIの場合は、毎年異なるメカニックをニュルの現場に参加させています。この背景は?

大拔氏:各ディーラーのメカニックの方たちには、優秀な人が多いです。ここ(ニュルブルクリンク)を目指すというのは、整備をする人のモチベーションになっています。確かにレースを勝つだけであればプロフェッショナルをそろえた方がよいのですが……。いろいろな人が希望して、ここにチャレンジをするために各ディーラー選抜で上がっていくというのが、モチベーションになってよいと思っています。

 ここにメカニックが来ることで、STIとスバルだけではなくて、販売店も含めた全体のレベルアップになると捉えています。

スタート前のグリッドでメカニックと何やら語る大拔CTO

──ディラーメカニックが、ニュルに派遣されるというのは、スバルディラーの中では大きな位置づけなのですか?

大拔氏:そうですね、年々行なっていることなので。今回は、スバルからも2人参加しています。ヨーロッパ駐在からの参加もあります。

藤貫氏:スバルの2人は、技術本部(スバルの開発組織)からの参加で、実際のエンジニアになります。来ているメンバーは、振動とトランスミッションの担当で、やはりクルマを知らないといけないんですよね。どうしても専門分野に入って行きがちで、もっと広い目をもってほしいと思っています。

開発の最前線を担当する第一技術本部 副本部長 藤貫氏。技術本部のエンジニアもニュルに参加している

──今回のSUBARU WRX STIでは、センターデフとパドルユニットの制御をECUに統合した統合制御が大きく走りに貢献していると言われており、ドライバーからの評判もよいようです。この統合制御の考え方は市販車にも取り入れられていくのでしょうか?

藤貫氏:ある程度は市販車でももうやっています。VDCなどのデバイスを用いて、クルマの理想の動きを作っていく、それにはすごく実ような技術だと思っています。ニュル24時間からのフィードバックも考えています。

──市販車とニュル24時間では、速度レンジが異なります。そうした違いは問題にならないのですか?

藤貫氏:速度レンジが高いと、シビアに出ますよね。だから、ごまかしが効かない。むしろこういうところで走らせることで、さっき言ったいいところわるいところが如実に出てきます。

──予選日に辰己総監督にインタビューした際、「勝たないと意味がない。勝って帰ることだけを考えている」と言っていたのですが、勝利への思いはスバルも同じですか?

大拔氏:今年は大丈夫だと思いますけど。トラブルさえ出なければと考えています。

藤貫氏:言い訳なしですね。

──厳しいですね。やはり

藤貫氏:でも、それがレースのよさだと思っています。結局社内のテストでいろいろやっても力関係など分からないこともあります。レースをやると、マネジメント力、チームワークなど総合力が付きます。

──最後に、スバルのブランドイメージにとってニュルブルクリンクチャレンジはどうとっていますか?

大拔氏:非常に大切なことだと思っています。スバルは、これからスポーツとSUVを2つの大きな柱にしていきます。SUVの方ではクロスオーバーの部分で米国などで非常に好評です。スポーツという部分では、こういうレースを大切にしていきたいと思っています

2人とも勝利に関しては貪欲。SUBARU WRX STIとともに