ニュース

ニュル24時間レースで88号車 SUBARU WRX STIクラス優勝。STI 辰己英治総監督、「すべてをうまく調和する。調和なんですね」

2019年6月20日~23日(現地時間) 開催

ニュル24時間レースの戦況を見守るSTI 辰己英治総監督(中央)

 6月20日~23日(現地時間)に「第47回 ニュルブルクリンク 24時間レース」が開催された。6月22日15時30分にスタートした決勝レースは、23日15時30分にゴールを迎えた。

 このニュル24時間レースに参戦したスバル&STI(スバルテクニカインターナショナル)の88号車 SUBARU WRX STI(山内英輝/井口卓人/ティム・シュリック/カルロ・ヴァンダム組)は見事SP3Tでクラス優勝。総合でも19位となった。

 実際の戦いぶりについても、トラブルフリーで安定した走りを見せた。何よりもすごいのは、予選53位(9分01秒872のタイム)からスタートした88号車 SUBARU WRX STIは、終盤にぐいぐい順位を上げ19位を獲得したこと。この19位という順位は、上はほとんどが純レーシングマシンであるGT3マシンで、下もGT3マシンやGT4マシンが続く。2.0リッターターボということを考えると、驚異的な総合順位を獲得している。

 今回のニュル24時間はクラッシュが続出するなど大荒れに荒れたが、そこをしっかり乗り切り、速い走りでSP3Tクラス優勝を成し遂げた88号車 SUBARU WRX STI(山内英輝/井口卓人/ティム・シュリック/カルロ・ヴァンダム組)。チームを指揮したSTI 辰己英治総監督に、優勝パーティでちょっとだけその要因を聞いてみた。


──クラス優勝おめでとうございます。完勝と言ってもよいような内容で、トラブルもなく24時間走り切ったのですが、この勝利の要因は?

辰己総監督:それは、これまでの失敗じゃないですかね。うまくいっちゃうと、必ずまた失敗したり。やっぱり失敗するというのは、大失敗しない限りは、いいんじゃないですかね。

──今回SUBARU WRX STIは、サメ肌にした、アルミホイールにした、重心を下げる工夫をしたなど、いろいろな対策を行なっています。乗り手であるドライバーがこのクルマの能力を100%引き出しからこそ、完璧なクラス優勝ができたと思うのですが、クルマに限った対策では、どの対策が勝利に寄与しましたか?

辰己総監督:ドライバーがこのクルマの能力を引き出してくれた。これがまず前提。その上で、私のイメージは、ECUの統合制御と、ホイールとタイヤのマッチング? 要するにホイールとタイヤと車体とのマッチングね。それが、やっぱり命ですね。

 統合制御のよさは、シフトの精度の向上ですかね。シフトってやっぱりドライバーにすごい心理的な負担を与える。それがうまくいかないと、壊れちゃう。常にその心配がある。それがきれいに収まると、ドライバーが運転に集中できる。

 だから、なにってことなく、すべてなんですね。すべてをうまく調和する。調和なんですね。調和できないとすべてがうまくいかなくなる。「ここだけがすげぇんだよ」って言ってもダメなんだよね。ぜんぜん。すべてが統合制御ではないですけど、すべてが調和って、なんかあるんですね、きっと。

 みんな違う方向を見ていいものを作ってもいいものにならない。だから最終的には目標を決めて、そこにみんなが力を結集するとすごい力になる。それがなかなかできないんですね。

──タイヤ、ホイール、車体のマッチングがうまくいったとのことですが、別途ファルケン(住友ゴム工業)の谷川部長らにインタビューした際、昨年起きた偏摩耗対策のためにタイヤの構造を変更したとのことでした。SUBARU WRX STIもスクラブ半径を変更するなど、一体となっての変更がありました。この偏摩耗対策は、今年はうまくいったということでしょうか?

辰己総監督:タイヤは去年と違う、グリップを上げてあるなどしてもらった。毎年毎年試行錯誤ですね~(笑)。

──決勝前に話をうかがったときには、「2015年の総合18位は超えたいよね~」とおっしゃっていました。今回は完勝に近い内容でしたが総合19位。この結果をどう見ていますか?

辰己総監督:そうね、ちょっとね(笑)。19位だったよね。惜しかったな~。でもまあまあ(笑)。

──SUBARU WRX STIのスタートは3グループの最後になるグループ3で、スタートシークエンスでトップから6分遅れのスタートでした(グループ1の後、3分遅れでグループ2がスタート。さらに3分遅れでグループ3がスタート。なので6分遅れになるルール)。これが影響しましたかね?

辰己総監督:6分ハンデはしょってますね(笑)。うちらは予選53位なんだけど、それがスタートしたら100位(笑)。100位からいくのはちょっと大変。あのグループ分けは、どちらかというと排気量で分けていくんですね。すると2リッターは一番後ろのグループになってしまう。

──すると予選に意味はあるのですか?

辰己総監督:意味はあります。予選がよかったのでグループの中のトップでスタートできる。だから、最後にどんどん順位が上がったのは、そういう人たちを少しずつ、こうやって(と身振り手振りで)抜いていったんですよ。それで順位が上がりました。これは25位くらいで終わるのかなと思っていたら、19位になった。

(この後、辰己総監督は乾杯の嵐に……)

ゴール後、ドライバーと勝利を祝い抱き合う辰己総監督

 優勝記念パーティのため、最後は辰己総監督は乾杯の嵐になってしまったが、88号車 SUBARU WRX STI(山内英輝/井口卓人/ティム・シュリック/カルロ・ヴァンダム組)はニュル24時間レースで本当に強いレース運びをしていた。2.0リッターターボエンジンという小排気量(相対的に)であるにもかかわらず、大排気量モデル以上の安定感で速い走行を刻んでいた。

 とくに今年のニュル24時間は、気温が高く、路面温度も40℃以上と暑さが厳しい状態。その中で安定して走行していたのは、熱問題対策もしっかりできていたということになる。事前の準備をしっかり行ない、辰己総監督言うところの「調和」で勝利したスバル&STIチーム。辰己総監督もこれまでにない理想的な勝ち方と語るなど、全員が1つになったときの強さを見せつけられた24時間レースだった。