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【ニュル24時間 2019】24時間レースがゴール。88号車 SUBARU WRX STIは総合19位でSP3Tクラス優勝、コンドー45号車も総合10位に

4号車 Audi R8 LMSが残り3時間で大逆転で総合優勝

2019年6月20日~23日(現地時間) 開催

88号車 SUBARU WRX STI(山内英輝/井口卓人/ ティム・シュリック/ カルロ・ヴァンダム組)

 6月20日~23日(現地時間)に「第47回 ニュルブルクリンク 24時間レース」が開催された。6月22日15時30分(現地時間、日本時間6月22日22時30分)にスタートを切られたレースは、6月23日(同、日本時間6月23日22時30分)にゴールを迎えた。

 レースはスタートからほとんどの時間でトップを走ってきた911号車 Porsche 911 GT3 R(アール・バンバー/マイケル・クリステンセン/ケビン・エストレ/ローレンス・ヴァンソール組)に対して、残り3時間で5分32秒のタイムペナルティが出され、911号車は2位に転落。変わってトップにたった4号車 Audi R8 LMS(ピエール・カッファー/フランク・スティッパー/フレデリック・ベルビッチ/ドライス・ヴァンソール組)がそのまま順位を守ってトップでゴールした。2位は991号車、3位は3号車 Mercedes-AMG GT3(マキシ・ブーク/フバート・ハプト/トーマス・イェーガー/ルカ・ストローズ組)。

 日本勢は45号車 Nissan GT-R Nismo GT3(トム・コロネル/高星明誠/藤井誠暢/松田次生組)の10位が最上位で、SP3Tクラスに参戦しているSTI(スバルテクニカインターナショナル)の88号車 SUBARU WRX STI(山内英輝/井口卓人/ ティム・シュリック/ カルロ・ヴァンダム組)はクラス優勝を果たして、総合でも19位と2015年の総合18位に次ぐ成績をマークした。TOYOTA GAZOO Racingの90号車 GRスープラ(佐々木雅弘/ウヴェ・クリーン/ヘルフィ・ダーネンス/モリゾウ組)はモリゾウ選手のドライブでゴールし、総合41位でSP8Tクラス3位。

終盤に向けて次々とトップ勢に襲いかかるペナルティ、トラブルで優勝争いは混沌に

混沌のレースが繰り広げられたニュルブルクリンク 24時間レース

 近年のニュルブルクリンク 24時間レースは、SUPER GTのGT300クラス向けの車両でもお馴染みのFIA-GT3車両から構成されているSP9クラスが総合優勝を争うレースとなっている。このため、ドイツの自動車メーカー、ポルシェ、メルセデス、アウディ、BMWなどはFIA-GT3の車両を有力なカスタマーチームに対して供給し、事実上のワークスチームとして参戦している。今回のレースでもそうしたポルシェ、メルセデス、アウディ、BMWなどの事実上のワークスチームが優勝を争った。

 レースの序盤を支配したのは、ポールポジションからスタートした2号車 Mercedes-AMG GT3(アダム・クリストードゥールー/マルコ・エンゲル/マヌエル・メッツガー/ダーク・ミューラー組)と、予選3位からスタートした911号車 Porsche 911 GT3 R(アール・バンバー/マイケル・クリステンセン/ケビン・エストレ/ローレンス・ヴァンソール組)。この2台が順位を入れ替えながら序盤のトップ争いが展開された。

コースの各所で激しい競争が繰り広げられた

 ところが、ナイトセッションに入ってすぐ、トップを走っていた2号車 Mercedes-AMG GT3は、周回遅れになっていた90号車 GRスープラ(佐々木雅弘/ウヴェ・クリーン/ヘルフィ・ダーネンス/モリゾウ組)と接触。2号車がやや楽観的にコーナーに入ったところで、90号車がインに切り込んできて両車は接触してしまったのだ。これで90号車 GRスープラはスピンしたが特にダメージなくそのまま走り続けることができたが、2号車 Mercedes-AMG GT3の方は右フロントの足回りも含めて大きなダメージを受け、そのままピットガレージに入って修復を行なったが最終的にはリタイヤになってしまった。

2位に入った911号車 Porsche 911 GT3 R(アール・バンバー/マイケル・クリステンセン/ケビン・エストレ/ローレンス・ヴァンソール組)

 これで楽になったのは911号車 Porsche 911 GT3 R。これで2位以下に大きな差をつけて、ピットインのタイミングを別にすると2位以下に2分程度の差をつけていた。ところが、残り3時間となった現地時間12時34分に、サーキットのタイミングモニターには驚くべきメッセージが表示された。

 そのトップの911号車 Porsche 911 GT3 Rに5分32秒のタイムペナルティがそれで、120kmで走るべき黄旗区間で制限速度を大きく超える172kmで走ってしまったというのだ。これにより、911号車は2位、3位、4位を走る29号車 Audi R8 LMS(クリストファー・ミエス/レネ・ラスト/ケビン・バン・デル・リンデ/クリストファー・ハッセ組)、4号車 Audi R8 LMS(ピエール・カッファー/フランク・スティッパー/フレデリック・ベルビッチ/ドライス・ヴァンソール組)、6号車 Mercedes-AMG GT3(パトリック・アセンハイマー/ニコ・バスティアン/イェルマー・ブルマン/ガブリエーレ・ピアーナ組)の順位が繰り上がることになる。

 そう思われた矢先に、4位を走っていた6号車 Mercedes-AMG GT3がスピンしてサンドトラップにはまる事故が発生。これにより、6号車 Mercedes-AMG GT3はマーシャルカーに牽引されてピットに戻ることになり、大きくタイムロスして優勝争いから脱落ということになってしまった。

 さらに、2位に上がっていた29号車 Audi R8 LMSは左リアタイヤがパンクし、ボディを壊しながら長い1周をこなしてピットに戻ることになったため、1周の間にかなり車を壊してしまい、結局コースサイドに車を停止し、これにより29号車もトップ争いから脱落。これにより、5分32秒のペナルティを受ける(この時点ではまだ紹介していない)911号車 Porsche 911 GT3 Rと4号車 Audi R8 LMSの一騎打ちという様相になってきた。

総合優勝は911号車のペナルティ消化でトップに立った4号車 Audi R8 LMS

総合優勝を果たした4号車 Audi R8 LMS(ピエール・カッファー/フランク・スティッパー/フレデリック・ベルビッチ/ドライス・ヴァンソール組)

 現地時間の13時10分前後に、911号車 Porsche 911 GT3 Rがピットに入り、5分32秒という非常に長いペナルティをこなすことになった。これで、911号車は2位に後退して、4号車 Audi R8 LMSがこのレースで初めてトップに立つという展開になった。両車のピットインが終わって911号車がコントロールラインを通過した13時30分の段階で、2台の差は1分5秒となっており、残り2時間で911号車 Porsche 911 GT3 Rが1分の差を縮められるかどうかに注目が集まることになった。

 ここから911号車 Porsche 911 GT3 Rの怒濤の追い上げが始まる。最初のラップでは先にピットに入っていたアドバンテージを生かし、タイヤが暖まっていない4号車に対して一挙に15秒も差を縮めた。次の周も7秒縮め、差は38秒に。両車の差は瞬く間に差は縮まっていくという展開になった。そこからは4号車 Audi R8 LMSも対抗してタイムをあげ、その周では2秒縮まるだけだった。両車の差はこのあと4号車がコントロールし、30秒近い差を常につけた走行しだすと、差は縮まらなくなってきた。4号車も4輪ドリフトの走りを見せるなら、全力で走っており、最後まで気が抜けないレースになってきた。

 残り1時間になった段階で911号車 Porsche 911 GT3 Rがピットに入る。この周回だと最後まで燃料が持たない計算になり、もう1回スプラッシュで給油しないといけない計算になる。それに対して4号車 Audi R8 LMSは1周後にピットに入ったため、レース終了まで給油なしで走りきれる計算になるため、1回分のピットストップ分有利になっており、この段階でレースはほぼ勝負あった状態になった。

3号車 Mercedes-AMG GT3(マキシ・ブーク/フバート・ハプト/トーマス・イェーガー/ルカ・ストローズ組)

 その後も911号車 Porsche 911 GT3 Rはトップの4号車 Audi R8 LMSを追いかけたものの、結局差を詰めることはできず、そのまま4号車 Audi R8 LMSが優勝した。アウディ車の優勝は2017年以来となる。2位はレースのほとんどを支配したが、最後の3時間でのタイムペナルティに泣いた911号車 Porsche 911 GT3 Rは最後ガソリンがギリギリでタイムを落としてチェッカーを受けて2位に、3位は3号車 Mercedes-AMG GT3(マキシ・ブーク/フバート・ハプト/トーマス・イェーガー/ルカ・ストローズ組)となり、アウディ、ポルシェ、メルセデスという3つのドイツメーカーが表彰台を分ける結果となった。

日本チーム最上位はコンドー45号車の総合10位 GT-R、STIの88号車は総合19位でSP3Tクラス優勝

コンドーレーシングの45号車 Nissan GT-R Nismo GT3(トム・コロネル/高星明誠/藤井誠暢/松田次生組)は初出場で確実なレースを見て10位に

 日本チームで最上位となったのはコンドーレーシングの45号車 Nissan GT-R Nismo GT3(トム・コロネル/高星明誠/藤井誠暢/松田次生組)で、大きなトラブルもなく淡々と走り続けたことで、上位陣がトラブルで次々と消えていくという好機を生かして、総合10位でフィニッシュした。同チームは初出場で、これだけの好成績を収めたことになり、来年以降に向けていいステップアップになったと言ってよい。同じくSP9クラスに挑戦したRACING PROJECT BANDOHの19号車 Lexus RC F GT3(ドミニク・ファーンバッファー/マルコ・ゼーフリート/吉本大樹/ミハエル・ティシュナー組)は遅れを取り返して総合42位。

RACING PROJECT BANDOHの19号車 Lexus RC F GT3(ドミニク・ファーンバッファー/マルコ・ゼーフリート/吉本大樹/ミハエル・ティシュナー組)は総合42位

 45号車についで総合順位で上位に来たのはSTI(スバルテクニカインターナショナル)の88号車 SUBARU WRX STI(山内英輝/井口卓人/ ティム・シュリック/ カルロ・ヴァンダム組)。目標だったSP3Tクラスでのクラス優勝を2位以下に大差をつけて実現したほか、総合でも19位に入り、2015年の総合18位に次ぐ良い成績で完走することができた。

88号車 SUBARU WRX STI(山内英輝/井口卓人/ ティム・シュリック/ カルロ・ヴァンダム組)は総合19位、SP3Tクラスで優勝
スバル&STI 88号車 SUBARU WRX STI SP3Tクラス優勝
ゴールの瞬間を見守るスバル&STIスタッフ
間もなくゴールする88号車を迎える
旗を振りまくる
ガッチリ握手
辰己総監督もグー
スタッフ同士で喜び合う
ハグ
談笑
喜ぶスタッフ
ファルケン(住友ゴム工業)の今北氏もお祝いに
こちらはファルケンの谷川部長(左)
スポンサーフラッグにキス
ハイタッチ
ハイタッチ
ドライバー4人で
1番~

 それに次いだのはTOYOTA GAZOO Racingの90号車 GRスープラ(佐々木雅弘/ウヴェ・クリーン/ヘルフィ・ダーネンス/モリゾウ組)で、総合41位でSP8Tクラス3位となった。90号車 GRスープラは最後のドライバーをモリゾウ選手が努めてチェッカーを受けた。もう1台の56号車 LEXUS LC (土屋武士/蒲生尚弥/松井孝允/中山雄一組)は深夜にトラブルで長い間ピットガレージで修復したのが響いて54位となった。

90号車 GRスープラ(佐々木雅弘/ウヴェ・クリーン/ヘルフィ・ダーネンス/モリゾウ組)は総合41位、最後のドライバーはモリゾウ選手が務めた
56号車 LEXUS LC (土屋武士/蒲生尚弥/松井孝允/中山雄一組)

結果表(抜粋、暫定)

総合順位クラスクラス順位カーナンバーマシンドライバー
1位SP91位4Mercedes-AMG GT3ピエール・カッファー/フランク・スティッパー/フレデリック・ベルビッチ/ドライス・ヴァンソール
2位SP92位911Porsche 911 GT3 Rアール・バンバー/マイケル・クリステンセン/ケビン・エストレ/ローレンス・ヴァンソール
3位SP93位3Mercedes-AMG GT3マキシ・ブーク/フバート・ハプト/トーマス・イェーガー/ルカ・ストローズ
10位SP910位45Nissan GT-R Nismo GT3トム・コロネル/高星明誠/藤井誠暢/松田次生
19位SP3T1位88SUBARU WRX STI山内英輝/井口卓人/ ティム・シュリック/ カルロ・ヴァンダム
41位SP8T3位90GRスープラ佐々木雅弘/ウヴェ・クリーン/ヘルフィ・ダーネンス/モリゾウ
42位SP919位19Lexus RC F GT3ドミニク・ファーンバッファー/マルコ・ゼーフリート/吉本大樹/ミハエル・ティシュナー
54位SP-PRO1位56LEXUS LC土屋武士/蒲生尚弥/松井孝允/中山雄一