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日産、2019年度末までに30以上の自治体などとの連携を目指す「ブルー・スイッチ」活動説明会
東日本大震災で経験した「歯がゆい思い」も紹介
2019年8月30日 21:25
- 2019年8月30日 開催
日産自動車は8月30日、EV(電気自動車)を使って社会課題の解決に取り組む「ブルー・スイッチ」の活動内容を紹介する説明会を日産グローバル本社(神奈川県横浜市)で開催した。
ブルー・スイッチは、日本が抱えている地球温暖化や自然災害などの対策といった課題にEVを使って取り組む「日本電動化アクション」と名付けられた活動。2018年5月のスタートから1年以上が経過している。
説明会では日産自動車 日本事業広報渉外部 担当部長 大神希保氏が解説を担当。大神氏は日産の代表的なEVである「リーフ」が2010年12月の発売以来、これまでに累計約12万8000台を販売していることを紹介。発売当初に“EVの3大課題”として取り上げられていた「航続可能距離」「充電インフラ」「価格」について、初代リーフの発売直後は24kWhだったバッテリーが現在では約2.5倍の62kWhまで増加し、JC08モードでの航続可能距離は200kmから約3倍の570kmまで増えていると説明。
充電インフラは2019年4月末現在の充電器数(普通充電器+急速充電器)が3万262基まで増加。これは近年減少傾向となっている全国のガソリンスタンド数(約3万か所)を上まわる数字であるとした。価格についてもバッテリーの容量増や自動運転技術の「プロパイロット」といった装備充実を行なっていながら、300万円台後半からスタートした当初から、現在でも400万円台前半からと価格上昇を抑制。こうしたさまざまな取り組みで着々と台数を増やし、EVの普及に務めていると語った。
このように、EVが移動手段として一般化し、今後も拡大を続けていくとの予想から、日産が大きな目標として掲げている「ゼロ・エミッション」「ゼロ・フェイタリティ(死亡重傷事故ゼロ)」を実現するためにブルー・スイッチの活動を開始したという。
ブルー・スイッチの具体的な内容としては、大容量バッテリーを搭載して「走る蓄電池」となるEVを使い、「防災」「エネルギーマネジメント」「温暖化対策」「観光」「過疎」といった地域社会が抱える課題を、自治体や企業などのパートナーと連携して解決を目指していく。この5種類の社会課題の中で、今回の説明会では防災に対する取り組みが取り上げられた。
具体例として2011年3月に発生した東日本大震災の事例を挙げ、インフラの中で電力の復旧は災害発生後3日目の時点で約75%となり、災害に強いことが証明されたという。日産は発売直後のリーフを60台ほど集めて被災地に貸与したが、地震発生後に動き始めたことから実際にリーフが被災地入りしたのは発生から3~4日後のことになり、「もし事前にリーフが現地にあったら」と歯がゆい思いをしたと大神氏は語った。
また、災害による停電は、2018年の1年で700万戸以上が発生しているなど、自然災害の規模が大きくなっている近年は深刻な社会問題になっているとした。これに対し、規模の大きな自治体などでは定置型の蓄電池を導入するといった手段も執れるが、規模の小さな自治体や個人などでは、日ごろは移動手段として利用し、もしもの際にはバックアップ電源として活用できるEVの導入をアピールしているという。
日産では2018年9月に、東京の練馬区と「災害時における電気自動車を活用した電力供給に関する連携協定」を締結。これを皮切りに、これまでに9つの自治体や企業などと連携協定を締結してきている。これに加えて現状で100件ほどの協議を進めており、2019年度内に連携協定全体で計30件の規模に拡大する予定と紹介された。
このほかに説明会では、防災以外の4つの社会課題に対するブルー・スイッチの取り組み事例についても紹介された。
可搬型パワーコンディショナーを使った給電デモを実施
説明会の終了後には、地下駐車場の一角でリーフによる給電デモを実施。40kWhのバッテリーを搭載したリーフがニチコン製の可搬型パワーコンディショナー「パワームーバー」と接続され、液晶TVやPC、スマートフォン、扇風機などを動かす光景が紹介された。