ニュース
ロータス最強のフルEVハイパーカーが日本デビュー。その名は「Evija(エヴァイヤ)」
価格は約2億6000万円。4つのモーターで計2000PS/1700Nmを発生
2019年9月8日 17:19
- 2019年9月8日 実施
英ロータスの日本正規輸入代理店であるエルシーアイは9月8日、富士スピードウェイ(静岡県駿東郡小山町)で開催された「Japan Lotus Day 2019」で、7月に英国 ロンドンで世界初公開されたばかりのフルEV(電気自動車)ハイパーカー「Lotus Evija(ロータス エヴァイヤ)を日本初公開した。
8月の米国 モントレー・カーウィークから始まったワールドツアーの一環で、今回は日本の見込み客へのアピールとなる。ロータスが2017年にジーリー(中国 吉利汽車)傘下に入って以来、初の新型モデルとなるエヴァイヤは、開発コードナンバーである「Type 130」にちなんで130台が限定生産され、価格は200万ポンド(日本円で約2億6000万円)とアナウンスされている。
最高出力2000PS、最高速320km/h以上、最大航続距離400km
発表会でまず登壇したのは、この日のために英国から来日したロータス・カーズ・エグゼクティブディレクターのジェフ・ダーウィン氏だ。
「世界初、全英国製でロータス初の電動ハイパーカー『ロータス・エヴァイヤ』を発表するため、日本に戻ってこられて光栄です。エヴァイヤは、自動車のデザインにとっても、エンジニアリングにとっても大変魅力的なものです。しかも俊敏でたくましく、現代的なものでもあります。同時にロータスのDNAとキャラクターも引き継がれています。美しい外観の下に、一体のカーボンファイバーモノコックと、超先進的な電動のパワートレーンを搭載しています。パワーはロードカーとしては初の2000PS超えを誇ります。エヴァイヤの名前は、『Eve』という単語の変化形から生まれたもので、『最初の存在』『命あるもの』という意味が込められています。クルマ作りでもモータースポーツでもパイオニアとして確固たる地位を築いているロータスにとって、ふさわしい名前です」と紹介した。
エヴァイヤが搭載する強力なモーターによるパワートレーンは、合計で最高出力2000PS、最大トルク1700Nm(173.3kg)を発生。電力を供給する2000kWのリチウムイオンバッテリーパックは、ロータスとジョイントベンチャーを組むWAE(Williams Advanced Engineering)製。2シーターの座席のすぐ後方に収められ、バッテリーカバーがリアガラス越しに見える状態になっている。それぞれが500PSを発生するモーターで4輪それぞれを駆動し、0-100km/h加速3秒以下、0-300km/h加速9秒以下という強力な加速力と、最高速320km/hというパフォーマンスを発揮する。また、中、高速域での加速力についても、100-200km/h加速が3秒以下、200-300km/h加速が4秒以下という圧倒的な数字を叩き出している。
バッテリーの充電速度も世界最速を誇り、800kWの電力を供給可能なユニットとなっている。現時点ではまだ商品化されていないものの、実現すればわずか9分でフル充電できるようになる。現在市販化されている中で最速の350kW充電ユニットなら12分で80%、18分で100%充電となる。最大航続距離はWLTP複合サイクルで250マイル(400km)、NEDC複合サイクルで270マイルを公称する。
また、高度なエアロダイナミクスと4つのラジエーター冷却パッケージによりバッテリーが最適な温度に保たれるため、強力なパワーを一定時間維持することも可能になっており、少なくとも7分間はトラックモードで出力レベルを下げることなくフルパワーが引き出せるという。
ポロシティ(多孔性)がコンセプトのエクステリア
エヴァイヤのボディは4459×2000×1122mm(全長×全幅×全高)。米国の超音速機「SR-71」から着想を得たフルカーボンのエクステリアは、地面に低くかがんだようなフロントとどっしりとたくましいリアの間に、ティアドロップ型キャビンを低い位置に収められたスタイルだ。
デザインについて説明したのは、同じく来日したロータス・カーズ・リードデザイナーのバーニー・ハット氏。「エヴァイヤが目指したのは、息を呑むような美しさと時代に即した形、唯一無二のデザインフィーチャーです。そして、英国 ロータス流のプレステージを取り入れたもので、すぐにロータスと分かる形を目指しました」と概要を説明する。
「ロー&ワイドなエクステリアの中で最も特徴的なのは、ボディサイドのリアクォーター部を貫くベンチュリートンネルで、ル・マンのレースカーからヒントを得たものです。『ポロシティ』(多孔性、多くの穴がある)と呼ばれるデザインコンセプトで、空気が最適な流れでボディシェルを通り抜ける構造になっており、そのエアフローによってホイールを押し付ける圧力が増大し、ドラッグが低減されるのです」。
車両を後方から見ると、左右のベンチュリートンネルの開口部がLEDで縁取られており、赤いリボン状の印象的なテールランプになっている。夜間になると、ジェット戦闘機のアフターバーナー(再燃焼装置)のような視覚効果を発揮し、各トンネル内には内部を照らすLEDも隠されているという。
また、ハット氏は「ヘッドライトは、世界で初めてハイビームとロービームの両方にレーザーを採用。バイプレーン(複葉)のフロントスプリッターは、ミッドマウントのバッテリーパックとフロントのeアクスルを冷却する役目を持ち、フロント中央の四角いセクションとサイドウイングは、偉大なF1カーである『Type 72』へのオマージュとなっています。ドアミラーはドラッグ低減のため取り払われ、フロントウイングに組み込まれた電動式カメラがロック解除とともにせり出す仕組みとしました」と説明。
シャシーはモータースポーツから生まれたワンピース構造のカーボンファイバーモノコックを採用。フロントとリアのサブフレームを合わせても重量はわずか129kg。車体全体の重量も、EVハイパーカーとしては世界最軽量の1680kgを実現している。
モータースポーツ仕込みのインテリア
インテリアについてハット氏は、「強烈な個性を放っているのが、外からフロントガラス越しに見える“フローティングウイング”型のダッシュボードです。エクステリアのポロシティコンセプトを室内にも反映したもので、その形状は、1950年代末から1960年代はじめにかけてロータスが試作したレーシングカーから着想を得たもの」と語る。ダッシュボードにはインストルメントパネルとエアダクトが収められていて、「ロータスのコンポーネントは何1つ安易なものであってはならない」というコーリン・チャップマンの“鉄の掟”が反映されたものだ。
両サイドのディヘドラルドアは、ドアハンドルがなくリモコンキーで開閉する仕組み。車内に乗り込むとルーフコンソールに組み込まれたスイッチが作動してドアが閉まるシステムだ。ルーフコンソールは1970年代末から1980年台はじめのロータス「エスプリ ターボ」でも採用されており、このあたりもロータスを象徴するモデルへのオマージュだと言ってよい。
ステアリングホイールはLMP(ル・マン プロトタイプ)やF1マシンと同様の楕円形で、下側中央には「レンジ」「シティ」「ツアー」「スポーツ」「トラック」の走行モード選択スイッチを配置した。その奥には唯一のデジタルディスプレイを設置し、通常は必要最小限の情報のみが表示されるようになっている。
センターコンソールは、宙に浮いた“スキーのスロープ”のような形状で、触覚フィードバック技術を用いたタッチ式ボタンを配置。各ボタンには六角形のくぼみがつけられ、表面に光が当たると“自然の創造物であるかのような視覚効果”が生まれるという。
ロータスがこの時期にEVハイパーカーを出した理由について、ダーウィン氏は「前々からこうしたハイパーカーを作ろうという計画はあった。今回は、親会社である中国の吉利汽車(ジーリー)の力が大きかった」とコメント。生産はロータスの歴史ある故郷、英国 ヘセルに新設される専用の製造施設で2020年に開始される予定で、予約には25万ポンド(約3250万円)の手付金が必要となる。エヴァイヤのオーナー向けサービスメンテナンスについても現在計画中だという。