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EVやPHEV向けの電動モーターなどを製造するZFのシュバインフルト事業所

電動車やMaaS向けのソリューションを拡大

ドイツ シュバインフルトにあるZFの事業所に掲げられている「Headquarters of E-Mobility(E-モビリティの本拠地)」の看板

 ドイツの部品メーカー「ZF」(ZF Friedrichshafen AG)は、同社のE-モビリティ事業部があるドイツ シュバインフルトの事業所を日本の報道関係者に公開した。ZFのシュバインフルトの事業所は、同社の電動車(EV/PHEV/HVの総称)向けソリューションを生産・開発する拠点として機能しており、今回公開されたのは同社が自動車メーカーなどに提供している電動ドライブを生産する工場だ。

 また、ZF E-モビリティ事業 責任者 ヨルグ・グローテンドースト氏は記者との質疑応答に応じ、「欧州ではMaaSやPHEVへの注目が高まっている」と述べ、ZFのE-モビリティ事業部として、今後もPHEVなどの電動車やMaaSに向けたソリューションを提供していくと述べた。

ZFのシュバインフルト事業所では付加価値が高いモーターなどを生産

シュバインフルトにはこうしたZFの事業所が多数点在している

 ZFのシュバインフルトの事業所は、2001年にZFが買収した部品メーカーSacks(ザックス)の本社があった拠点で、現在はE-モビリティ事業部の拠点として活用されている(ZFとSacksの歴史に関しては別記事を参照)。その事業所は、建物が1つだけといった小規模な拠点ではなく、シュバインフルトの街の中に拠点が点在しており、工場や開発拠点として活用されている。

ローターにパーツを組み付けているところ。多くはロボットで組み付けなどが行なわれるが、人の手でも行なわれる

 ZFの電動モーターの工場もシュバインフルトにあるZFの拠点の1つで、かつてはショックアブソーバーやクラッチなどのパーツを製造していた工場だという。現在もそうしたパーツの一部を作っているが、現在はより付加価値の高いパーツの製造へと移行しており、その中でも力を入れているのが電動車向けのパーツだという。今回見学した工場では主に2つのラインが用意されており、1つは第3世代のハイブリッドドライブ、そしてもう1つがエレクトリックアクセル、つまりEV用のモーターのことで、それらをローターなどから製造していく。

生産中の様子

 ラインは多くが自動化されており、ロボットが製造をしている。例えば、ローターに磁石を組み込んでいく工程ではロボットアームが忙しく動き、ローターに正確に磁石を組み込んでいく。エレクトリックアクセルの製造過程では、モーターだけでなくクラッチなども一体にして組み込まれる。このため、オイルルームなどが用意され、そこでクラッチが組み込まれていく。

 そうしてできあがったエレクトリックアクセルは最後に検査過程に送られ、動作するか確認した後で、自動車メーカーなどのOEMメーカーに向けて出荷される。

電動車向けとMaaS向けのソリューションを拡大していくZF

ZF E-モビリティ事業 責任者 ヨルグ・グローテンドースト氏

 日本の報道関係者との質疑応答に応じたグローテンドースト氏は「現在、欧州の市場はドラスティックに変わってきている。多くのユーザーが持続的成長性(サステナビリティ)についての話をするようになってきており、従来の“馬力が”などという世界から変わりつつある。そしてもう1つの成長の柱はMaaSだ。すでにドイツでも若い人は自分のクルマを所有しなくなってきており、MaaSで必要な時だけ利用するというかたちになっているし、フランクフルトやベルリンなどでよく見かけるキックボードのような新しい乗り物も登場している」と述べ、今後の欧州の自動車産業にとって重要なことが、持続的成長性を実現するための電動化への注目度やMaaSへの注目度は上がっていると説明した。

ZFがフランクフルトモーターショーで展示した自動運転バスのスケルトンモデル
同社の自動運転用ECU「ProAI」が搭載されていた
自動運転バスの開発を行なうスタートアップ企業「e.Go」に投資(フランクフルトモーターショーでのプレゼンテーション)

 そうした状況に対応するために、ZFは例えば自動運転バスのスタートアップ企業のe.Goなどに投資を行なっている。グローテンドースト氏によれば「伝統的な会社はすぐに方向性を変えることは難しいが、スタートアップはそうではない。そういう会社と提携していくことで、会社を変えていくことを加速するのだ」と述べ、今後もMaaSの分野ではスタートアップ企業への投資などを通じて、取り組みを強化していくと説明した。

欧州ではPHEVへの注目が高まっている(フランクフルトモーターショーでのプレゼンテーション)
フランクフルトモーターショーで展示された第4世代のPHEV用8速トランスミッション

 また、「フランクフルトモーターショーでは、従来よりもPHEVへの注目度が上がっているのでは?」という質問に対しては「ハイブリッドテクノロジーは、EVへの正しい橋渡しになる技術だ。ただ、そのニーズは地域により異なっている。例えば米国の場合は、100kmを超える距離になれば飛行機が選択されるため、EVが選ばれているという側面がある。それに対して欧州では数百kmでも自動車で移動というニーズがあり、郊外に行くとEVの充電器がないということが考えられるため、電気と内燃機関のよいところを併せ持っているPHEVが注目されている。重要なことはバッテリーのコストと内燃機関のバランスを取ることだ。ただ、欧州でも日々のドライブの90%は100km以下であり、それに合わせてバッテリーの容量を決めることが大事だ」として、同社としては欧州ではそうしたPHEVのソリューションを提供していく計画だと説明した。

 また、自動運転に関しては、レベル5のロボットタクシーや自動運転バスなどを推進していき、そのために同社としてe.Goに投資したと述べ、乗用車に関してはレベル2やレベル2+などのADASが当面は重要になるだろうとした。