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日産、2019年度 第2四半期決算。売上高2兆6307億円、純利益590億円と回復基調を示すも通期予想を下方修正

事業構造改革の効果が一部で出はじめてきたとスティーブン・マー氏

2019年11月12日 開催

日産自動車株式会社 常務執行役員(CVP)スティーブン・マー氏。12月1日から一新される新執行体制で、新たに執行役 CFO(最高財務責任者)に就任する

 日産自動車は11月12日、2019年度 第2四半期と同上期の決算を発表。同日に神奈川県横浜市のグローバル本社で決算説明会を開催した。

 日産の第2四半期の売上高は前年同期(2兆8161億円)比で6.6%減となる2兆6307億円、営業利益は同(1012億円)70.4%減の300億円、当期純利益は同(1304億円)54.8%減の590億円。また、第2四半期累計3か月のグローバル販売台数は同(137万4000台)7.5%減の127万台となっている。

2019年度 上期の決算内容や2019年度通期の見通しなどを解説するマー氏

 今回の決算説明会では、12月1日付けで変更される日産の新たな執行体制において、前任の軽部博氏に代わって新たに執行役 CFO(最高財務責任者)に就任するスティーブン・マー氏が解説などを担当。

 マー氏は第2四半期の販売実績について、中国では全体需要を上まわって健闘したものの、米国、欧州、日本などの主要な地域で全体需要を下まわり、マーケットシェアも減少となっていると説明。しかし、事業構造改革の一貫として着手した在庫調整が第1四半期の間に進み、ほぼ適正な販売会社在庫水準を実現したことを受け、第2四半期は卸売り台数ベースで見ると前年同期からの減少率を大きく抑制。第1四半期との比較でも、全体で8000台増という販売台数と比べて卸売り台数ベースでは約9万台増になると解説。利益改善に貢献しているとアピールした。

 300億円となった営業利益の増減要因については、販売費用の抑制によって10億円の増益となったが、為替や環境規制などの対応、研究開発・生産費用、その他の費用などの減益要因が大きく上まわっているという。しかし、同じく事業構造改革の一貫として行なっている「米国における販売の質の向上」に向けた取り組みで結果が出はじめており、販売活動で増益を確保できるようになったことがポジティブだと語った。

 このほか、日産のビジネスで大きな割合を占める米国事業の推移について時間を割いて解説が行なわれ、「台あたり平均売価」が2018年度の数値を上まわる状態になっていることを紹介。また、インセンティブと呼ばれる販売奨励金は通常の小売り、フリート販売ともに抑制することに成功しており、販売会社の在庫を2万2000台(9%)減少させたことをアピールし、販売・金融事業の改善、安定化も順調に進捗していると示し、日産の米国事業がリカバリーに向けて第1歩を踏み出し、今後も継続的に販売の正常化に取り組んでいくとした。

 また、事業構造改革でもう1つの柱に位置付けられている「新商品・新技術」では、「ニッサン インテリジェント モビリティ」を軸に着実に成長を目指すとして、例として先日開催された「東京モーターショー 2019」で世界初公開した「ニッサン アリア コンセプト」「ニッサン IMk」を挙げ、この2台は近い将来に市場投入して人々に乗ってもらえるようになり、日産における今後のラインアップの方向性、新開発となるEVプラットフォームがもたらすデザインと技術などについて提案するモデルになっていると説明した。

2019年度 第2四半期(3か月)決算内容の総括
2019年度 第2四半期(3か月)における北米地域の営業利益増減要因
米国事業の状況説明
2019年度 第2四半期(3か月)の主要財務指標

 2019年度 上期では、日本以外のグローバル市場で全体需要が減少。日産の販売も前年同期比(268万3000台)で6.8%減の250万1000台となった。全体需要が増加した日本でも販売台数が減少となり、28万5000台から1.3%減の28万1000台。登録車の販売台数は減少したが、3月から販売を開始した新型軽自動車「デイズ」は好調をキープしており、軽自動車だけを見ると20%増になっているという。

 中国市場は全体需要が大きく落ち込む中、「キャシュカイ」「エクストレイル」「シルフィ」といった主力モデルが販売を牽引して販売台数は前年同期比0.3%減の71万8000台を維持。米国では販売モデルの車齢が高まっていること、販売正常化に向けた取り組みを進めていることなどから販売台数は減少傾向となっており、前年同期比4.3%減の67万9000台。欧州でも環境規制の強化、販売モデルの高車齢化などの影響で、販売台数は前年同期比19.7%減の26万5000台となっている。

2019年度 上期のグローバル販売台数
主要市場の2019年度 上期販売台数
2019年度 上期の財務実績
2019年度 上期の営業利益増減要因

 マー氏は「当社は事業構造改革によって収益力のリカバリーを着実に進めている」としつつ、2019年度 上期の内容を受け、2019年度の通期見通しをそれぞれ下方修正。この理由については、営業利益が当初の通期見通しである2300億円に対して上期実績で316億円に止まったこと、為替が期初に想定レートとした110円から円高傾向で推移していること、グローバルで経済環境が不透明となっており、全体需要の低迷傾向が今後も続くと予測されることなどを挙げている。

 これにより、日産の2019年度通期見通しは、販売台数524万台(期初見通し比300万台減)、売上高10兆6000億円(同7000億円減)、営業利益1500億円(同800億円減)、当期純利益1100億円(同600億円減)となっている。また、期初見通しを受けた2019年度の1株当たりの配当金を40円と設定していたが、同日に開催した取締役会での決議により、上期の中間配当で10円とし、年間配当は次期CEOなどによる新たな経営陣が策定する中期計画と合わせて議論を行ない発表するとの考えを示した。

2019年度の通期見通しを下方修正
2019年度見通しの営業利益増減要因
質疑応答で記者からの質問に答えるマー氏

 後半に行なわれた質疑応答で、記者からインセンティブを改善していると説明されたが、トヨタ自動車などの水準と比べて依然として高い数字になっている理由について問われ、マー氏は「資料のチャートでも示しているように、ここまでわれわれは一貫して北米における販売クオリティの改善に取り組んでおり、実際に1台あたりのインセンティブは下がってきている。これは月次でアジャストしているのではなく四半期ごとに調整しており、販売店の目にも見える形で進めて安定性を高め、方向性は正しく進んでいると考えている。また、今後は新しい『ヴァーサ』『セントラ』に続き、さらに新車が投入され、インセンティブの引き下げトレンドは今後も続いていくとだろうと思っている」と回答。

 また、10月に消費税が10%に増税されたことが日産の事業展開にどのように影響しているかについて質問されたが、マー氏は10月の全体需要が減少していることなどを説明しつつ、10月には台風などの大きな自然災害も発生しており、これ以外でも雨天続きなどが営業面に影響していることから、事業に対する影響は現在調査を進めているところだと答えている。

2019年度第2四半期決算発表記者会見(38分52秒)