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CASE時代を見据えたメガサプライヤーの戦略とは? デンソー、ボッシュ、コンチネンタルが取り組みを説明

「第12回 オートモーティブ ワールド」特別講演

2020年1月15日~17日 開催

講演を行なうボッシュ株式会社 代表取締役社長 クラウス・メーダー氏

 1月15日~1月17日の3日間にわたり、東京ビッグサイト(東京都江東区有明)において「第12回 オートモーティブ ワールド」が開催されている。オートモーティブ ワールドはCASE(Connected、Autonomous、Shared、Electricの頭文字を取った造語)に代表されるような、未来の自動車を構成するIT、電動化、通信などのソリューションが展示されている展示会となっている。

 1月15日の午後には「メガサプライヤーのCASE戦略」と名付けられた特別講演が行なわれ、デンソー 経営役員 技術開発センター担当 加藤良文氏、ボッシュ 代表取締役社長 クラウス・メーダー氏、コンチネンタル・オートモーティブ 代表取締役社長 バート・ヴォーフラム氏による、CASEへの取り組み戦略などが語られた。

あらゆる人にメリットがある、安全安心な交通社会を実現するというビジョンを持つデンソー

株式会社デンソー 経営役員 技術開発センター担当 加藤良文氏

 メガサプライヤーとは、グローバルな規模で自動車部品の製造、供給を行なっているティアワンの部品メーカーのことを意味しており、日本のデンソーやアイシン、ドイツのボッシュ、ZF、コンチネンタル、フランスのヴァレオ、米国のデルファイなどがそれに分類されている。

 現在自動車業界は100年に1度の大変革と呼ばれる時期を迎えており、電動化や自動運転、そしてMaaS(Mobility as a Service)と呼ばれる自動車などのモビリティをサービスとして提供する仕組みなど、従来のような乗用車を販売していればビジネスが成り立っている時期は終わりを迎えつつある。そのため、自動車メーカーが持っていないIT技術や、電動化に必要なバッテリーやモーターの技術などを提供することができるメガサプライヤーの存在が大きく注目されるようになってきているのだ。

 デンソー 経営役員 技術開発センター担当の加藤氏は「デンソーは2030年に向けた経営ビジョンの中で、あらゆるステークホルダーに安全安心なモビリティを提供していくとしており、それに向けてエネルギー、コネクテッド、セーフティ、HMIといった4つの領域に注力している」と述べ、それぞれの分野でさまざまな取り組みをしていると述べた。

 その中でもADAS(先進運転支援システム)に関しては「デンソーは昔からADASに取り組んでおり、すでに1000万台以上のシステムを出荷している。現在はレベル4の自動運転を見据えた開発を行なっている」と述べ、同社が2020年7月以降に羽田に設置する自動運転の研究開発部門などに関する説明を行なった。

 また、MaaSに関しても積極的に取り組んでいると説明し、MaaS Globalのようなスタートアップ企業との提携や、ソフトウェアをクラウドネイティブにして、車両のソフトウェアに関してもKubernetesのようなクラウドで一般的に使われている手法を利用して開発できるようにする取り組みを行なっていることや、トヨタ自動車の半導体部門を吸収してスタートする新しい半導体開発会社「MIRISE Technologies(ミライズ テクノロジーズ)」を4月に立ち上げることなどを説明した。

2020年に早くもカーボンニュートラルを実現する企業となるボッシュ

ボッシュ株式会社、代表取締役社長 クラウス・メーダー氏

 ボッシュ 代表取締役社長のメーダー氏は、ドイツのメガサプライヤーであるボッシュのCASE戦略について説明。メーダー氏は同社の戦略を「PACE」(ペース)という4文字で表現した。PACEとは「Personalized(個人特化)」「Automated(自動化)」「Connected(常時接続)」「Electrified(電動化)」という4つの用語の頭文字を取ったもので、現在ボッシュが力を入れて取り組んでいる4つの領域となる。

 例えばAutomatedに関してメーダー氏は「現在は数百のECUが自動車に搭載されているが、将来的にもっと強力な1つのコンピュータが搭載され、それにより自動車が制御されるようになる」と述べ、自動車に搭載されていくコンピュータチップの処理能力は今後も上がっていくと説明した。その上で、将来的には自動車も常時インターネットに接続され、自動車からアップロードされるデータがクラウドで処理されていくようになるだろうと述べた。

 また、Connected(常時接続)の応用例では、完全フルキーレスについて説明。物理キーを完全になくし、スマートフォンのようなデバイスをキーにしてクルマをロック/アンロックしたり、エンジンをかけたりする仕組みなどを検討していると説明した。

 Electrified(電動化)に関しては「今後も内燃機関はすぐになくならない。このため、46Vのマイルドハイブリッドなどの取り組みが重要になる」と説明し、いきなりすべてEV(電気自動車)になるのは難しいので、まずはマイルドハイブリッドやハイブリッドなどの内燃機関+モーターの組み合わせが重要だとした。

 最後にメーダー氏は「ボッシュは完全なカーボンニュートラルを2020年に実現する見通しだ」と発表したことを明らかにし、メガサプライヤーとしてサステナビリティに配慮して事業を行なっていることを強調した。

自動運転は2030年でも大多数がレベル2で、半数以上はレベル2+になるとコンチネンタル

コンチネンタル・オートモーティブ株式会社 代表取締役社長 バート・ヴォーフラム氏

 コンチネンタル・オートモーティブ 代表取締役社長のヴォーフラム氏は、日本の交通事故死者が近年減り続けていることについて触れ、今後もこのトレンドを維持するために、より進んだADASなどの導入が重要だとアピールした。同社はLiDARのソリューションに力を入れており、ショートレンジからロングレンジまで幅広い製品ラインアップを用意していることなどを説明した。

 そして、今後の自動運転のトレンドについても触れ、2020年~2030年には、レベル2が大多数となり、レベル3やレベル4などは依然として少数派に留まるとしたが「レベル2の中にはレベル2+が含まれており、そこにはほとんど自動運転と言ってもいい機能が入ることになる。そしてレベル2の半数はレベル2+になる」と述べ、レベル2+に対応していくことが自動車産業としては重要だと説明した。