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BlackBerry QNX、自動車をリモートで安全に管理できる機能。CES 2020やオートモティブワールドで公開

衝突警告機能を搭載する電動バイクの展示も

CES 2020:1月7日~1月10日(現地時間)開催

第12回 オートモーティブ ワールド:1月15日~1月17日 開催

CES 2020でのBlackBerry QNXブース

 QNXブランドで自動車向け基本ソフトウェアなどのソフトウェアソリューションを提供するカナダのBlackBerry Limited(以下BlackBerry QNX)は、1月7日~1月10日(現地時間)に米国ネバダ州ラスベガス市で開催された「CES 2020」、1月15日~1月17日に東京ビックサイト(東京都江東区)で開催された「第12回 オートモーティブ ワールド」に出展し、同社の最新ソリューションを展示した。

 この中で、BlackBerry QNXは同社が2019年に買収を完了したCylanceのソリューションを組み込んだ新しい自動車向けのソフトウェアソリューションを展示したほか、同社のソフトウェアにより障害物検知機能などが実装されているDamon Motorcycleが開発した電動バイク「Hypersport Pro」を展示した。

自動車をリモートから安全に管理する基盤となるBlackBerry CylanceをQNX Hypervisorに統合

CES 2020でデモに利用されたレンジローバー

 CES 2020およびオートモーティブ ワールドの会場において、BlackBerry QNXは同社が以前から提供しているISO26262 ASIL-Dの機能安全認証を取得しているハイパーバイザーとなる「BlackBerry QNX Hypervisor」をベースとしたソフトウェアソリューションの拡張版を展示した。

BlackBerry QNXが展示したシステムの概念図。QNX Hypervisor上に車両の機能を実現するOSとAndroidのようなプログラマブルなOSが並列して動いているが、Cylanceのセキュリティ機能やOTAなどを組み合わせることでセキュアな環境を実現している
RANGE ROVERに搭載されている車載情報システム。Android OSベースでBlackBerry QNX Hypervisor上で動作している
オートモーティブ ワールドでの展示の説明

 ハイパーバイザーとは、ハードウェアとOS(基本ソフトウェア)の間にあって、複数のOSを1つのハードウェア上で動作させるためのソフトウェア。データセンターに置かれるクラウドサーバーでも一般的に使われており、信頼性が重視される自動車では、落ちてはいけないメータークラスターなどを動かすOSと、プログラマブルな車載情報システムを動作させるOSを別のメモリ空間で動かすことで、例えば車載情報システムのOSがウィルスにやられてしまっても、メータークラスターなどクルマを動かす基本的な部分に影響を及ぼさないようにすることが可能になる。

Cylanceのセキュリティ機能

 今回BlackBerry QNXが展示したのは、そうしたBlackBerry QNX HypervisorにBlackBerryが買収したCylance(現在はBlackBerry Cylance)のマシンラーニング技術を適用した、自動車をリモートで管理するソリューションだ。Cylanceは「Cylance PROTECT」や「Cylance OPTICS」などの法人向けのPC用セキュリティソフトウェアベンダとして知られていたが、AIを利用して脅威を検出する技術などが注目されて2018年にBlackBerryが買収することを発表。2019年に買収を完了し、現在はBlackBerryの子会社になっている。

バイナリスキャンが走っているところ
管理センサー側でコントロールしているリストに応じて悪意のあるアプリの導入をブロックしているところ
車両のコンポーネント(例えばバッテリー)の故障予測もマシンラーニングを利用してできるようにする。それにより、ディーラーへ点検に出すようにと警告を出すことができる

 Cylanceのソフトウェアはすでに明らかになっている脅威を検出できるほか、マシンラーニングを利用して潜在的な脅威を検出できる。例えば、法人向けの脅威検出ソリューションであるCylance PROTECTを利用すると、車載情報システムに組み込まれたアプリケーションがマルウェアに感染していないかなどをチェック(バイナリスキャン)でき、感染していることを確認できたアプリケーションソフトウェアを車両オペレーションセンター(Vehicle Operations Center:VOC)からリモートで削除することができる。

Cylance PERSONAで子供が親のキーを持ち出してクルマに乗ったところを検出しているシーン。ハンドルを動かす癖などからドライバーが誰なのかを判別している。DMS(ドライバー・モニタリング・システム)の実装は、現在自動車メーカーにとっては大きなテーマになっている
VOC側でクルマをどのうように処理するかを決める画面。もちろん実際にサービスとして実現する時にはオーナーのスマートフォンなどから操作できるようにする
Cylance PERSONAの仕組み

「Cylance PERSONA」の機能を利用すると、マシンラーニングの機能を利用して人間の行動様式をチェックし、運転の癖などからそれが認証されたドライバーであるのかなどを検知することができる。

 例えば、子供が親のクルマの鍵を勝手に持ち出して運転した場合、子供が運転していることを検知して親のスマートフォンに通知して、自動車を自動で停止させるなどの処置を行なうことができる。あるいは、そもそも自動車が盗難されてしまった場合にも、自動でクルマを停車させて正当なオーナーが駆けつけるまで再起動できないようにするなどの処置をリモートで行なうことができる。

 このように、スマートフォンやPCなどで最近実装されているMDM(Mobile Device Management)のようなリモートでデバイスをコントロールすることができる機能を自動車に実装したようなもので、自動車の管理をより効率よく、安全に行なうことができるようになる。

前方障害警報システムを搭載している電動バイク「Hypersport Pro」を展示

Damon Motorcycleが開発したHypersport Pro

 BlackBerry QNXはCES 2020のブースにおいて、Damon Motorcycleが開発した電動バイク「Hypersport Pro」を展示した。Hypersport Proは21kWhのバッテリーとモーターにより駆動される電動バイクで、バッテリーだけで約200マイル(約320km)の航続距離を実現している。特徴的なのは、前方障害警報システムの「CoPilot」と走行中でも乗車ポジションを変更できる「Shift」を搭載していることだ。

Hypersport Pro

 CoPilotは、バイクの前方に用意されているカメラを利用して前方の障害物などを画像認識で検知するシステム。例えば、前方で渋滞が発生してクルマが停車している場合などにシステムがそれを認識し、バイクのハンドルが振動してライダーにそのことを通知する。仮によそ見をしていてもハンドルが震えるので、ライダーがそれに気がつくことができるようになるので、安全性がより向上する。

前面カメラ
VR HMDを利用した体験コーナー。前方にクルマが見えてくると、ライダーに前方に障害物があることをハンドルを振動させて通知する

 Shiftは走行する場所に応じてライダーの乗車ポジションを自動で変更する機能で、やはり前方カメラが走行シーンを認識して自動で乗車ポジションを変更する。

Shiftではこの部分が上下に動き、ライダーの乗車ポジションを道に合わせて自動で変えていく

 こうしたCoPilotやShiftの機能がBlackBerry QNXのソフトウェアにより実現されているということで、CES 2020のBlackBerry QNXにHypersport Proが展示されたほか、VR HMDを利用して仮想空間でその走行体験ができるデモが行なわれた。