CES 2018

【CES 2018】自動車向け“セキュアOS”をアピールするBlackBerry/QNX

ハイパーバイザーを使ってQNX OS内でAndroidアプリが起動するデモなど実施

2018年1月9日~12日(現地時間)開催

LVCC(ラスベガスコンベンションセンター)のノースホールに設置されたBlackBerryのブース

 ソフトウェアベンダのBlackBerryは、1月9日~12日(現地時間)に米国ネバダ州ラスベガスで開催された世界最大のテクノロジーイベント「CES 2018」にブースを出展した。

 BlackBerryは2010年に買収したQNXの資産を発展させ、組み込み向けの「セキュアOS」として機器メーカーなどに提供しているソフトウェアベンダ。近年は自動車向けのOSとしての側面を強めており、ISO 26262 ASIL-Dの機能安全に対応。メータークラスターやIVI(In-Vehicle Infotainment、車載情報システム)向けのOSとして活用され始めている。

 今回のCESでは、新たに中国のBaidu(バイドゥ、中国のソフトウェアベンダ、中国版Googleのような企業)とコネクテッドカーや自動運転技術の開発で提携することが発表されたほか、同社ブースでQNXのハイパーバイザーを利用して、1つのSoC上で複数のOSを相互に影響を及ぼさない形で実行するデモを行なった。

Baiduとの提携を発表。QNXのハイパーバイザーを利用したデモも実施

デモに利用された「レンジローバー」

 ソフトウェアベンダのBlackBerryは、2010年に取得したQNXの資産を利用して、主に組み込み向けのOSを提供している。QNXの特徴はセキュアであることで、ISO 26262 ASIL-Dの機能安全にも対応するなど、自動車向けのOSとしても採用が進んでいる。

 今回のCES 2018で、BlackBerryは中国のBaiduとの提携を発表した。Baiduは中国におけるGoogleのような存在のソフトウェアベンダで、元々はGoogleと同じように検索からスタートして、現在では中国のインターネット業界の巨大企業となっている。Baiduは自動運転の研究を近年続けており、オープンなプラットフォームとして自動車メーカーなどに公開していく計画を持っている。今回の提携では、Baiduが開発している自動運転プラットフォーム「Apollo」および、コネクテッドカー向けのプラットフォーム「CarLife」向けのOSとしてQNXの採用が決まった。

 BlackBerryのブースでは、そうしたQNX OSの一部として提供されるハイパーバイザーのデモが行なわれた。ハイパーバイザーというのは、OSとハードウェアの間に入って、OSとハードウェアのやりとりを調整するソフトウェアレイヤーのことで、現在データセンターに格納されているPCサーバーなどでは一般的に利用されている手法だ。ハイパーバイザーを利用すると、1つのハードウェア(自動車の場合はSoC)上で複数のOSを走らせることが可能になり、かつ、仮に1つのOSが落ちても他のOSには影響を及ぼさないので、メーターとIVIを1つのSoCで実現しても、それぞれを安全に活用できるというメリットがある。

メータークラスターやIVIに入っているQNX、AndroidといったOSが全て1つのAtomプロセッサ(Apollo Lake)上で動いている
QNX OSの機能として、音楽再生やマイクによる後席との会話、Webブラウザーなどさまざまな機能が用意されている
QNXで実現されているデジタルメーター
スマートフォンからのリモート機能として、ドアミラーの開閉やエンジンスタートなどが利用できる

 今回のデモでは、IntelのAtomプロセッサ(開発コードネーム:Apollo Lake)上でハイパーバイザーを動かし、その上でメーター用のQNX、IVI用のQNXやAndroidを動作させている。IVI用のQNXからAndroidが呼び出せるようになっており、QNX OSの中でAndroidアプリが起動するような形で利用されていた。このAndroidはスマートフォンなどに利用しているAndroidと同じものということで、アプリを追加することもできるとのこと。もちろん、実際にそういったコンシューマ向けのAndroidの機能を実装するかはメーカーの選択次第となるが、今回はあくまでもデモということで「そういうこともできる」という形でデモが行なわれた。

ハイパーバイザー上で動いているAndroid。Google Playストア経由でアプリも追加できるようになっている。どのように実装するかは自動車メーカー次第だが、そうした実装も可能であると示している。Google MapsやChromeブラウザなどが動いていた

 すでに述べたように、今回のデモはIntelのAtomプロセッサ上で行なわれていたが、サポートプラットフォームは広がっており、今回のCESではルネサスエレクトロニクスがQNXを利用した自動運転のデモを行なっていた(別記事の「ルネサス、自動運転時代の車載コンピューティング・プラットフォームとして『R-Car H3』搭載車をデモ」参照)ほか、QNXブースではQualcommのSnapdragonとQNXのハイパーバイザーを利用してメータークラスターとIVIを同時に走らせるデモが行なわれていた。

ルネサスの自動運転のデモ走行にQNXが採用されている
QualcommのSnapdragonを利用したハイパーバイザーのデモ

笠原一輝