CES 2018

【CES 2018】ルネサス、自動運転時代の車載コンピューティング・プラットフォームとして「R-Car H3」搭載車をデモ

優れたエッジコンピューティングとしてR-Car H3を訴求

ルネサス エレクトロニクスの「R-Car H3」搭載車。こちらはキャデラックベースのADASデモ車。センサーフュージョンのデモを行なう

 ルネサス エレクトロニクスは米国ネバダ州ラスベガスにおいて開催された「CES 2018」において、自動運転車、ADAS(先進運転支援システム:Advanced Driver Assistance System)搭載車などの試乗会を実施した。

 いずれも同社のSoC(System on a Chip)である「R-Car H3」を搭載しており、その性能を訴求していたほか、ブースにおいてR-Car H3のさまざまなソリューションを展示。自動運転時代の車載コンピューティング・プラットフォームとしてのR-Car H3活用法を示していた。

ADASデモ車のリアまわり。多数のソフトウェア・ハードウェア会社のロゴが刻まれている。これらの知見を活かせるのがR-Car H3のメリット
ADASデモ車には試乗し、実際にラスベガスの市街地を走ってもらった
試乗時は珍しく雨。LiDARも汚れており、将来的にはワイパーやウォッシャーなどのクリーニングソリューションも必要になってくるだろう。とくに日本では必須の機能なのかなと思う
ADASデモ車でラスベガス市内を走行中の際の認識画面。LiDARとレーダーからの情報をフュージョン(融合)。赤い点(線に見えるが点の集合)がLiDARで、上部の■の表示がレーダー。R-Car H3上でQNXを走らせ、そこにデバイスとしてセンサーを接続し、ソフトウェア開発を容易にしている

 自動運転時代においては、ディープラーニングの活用が欠かせなくなっている。R-Car H3は、ディープラーニングの実行機能持っており、同社がこれまで車載半導体を作ってきた実績と、低消費電力などが特徴となっている。その詳細については関連記事(価格5~8万円の車載ソフトウェア開発キット「R-Car スタータキット」2種類を発売「CES 2017」で展示した自動運転デモ車を日本で初めてデモ走行)をご覧いただきたいが、R-Car H3では10W切る低消費電力を実現し、自動運転開発用に便利なR-Car H3を2基搭載したHADソリューションキットでは12.5Wという値を説明。ルネサスの自動運転車では、このHADソリューションキットを2基搭載し(つまり、R-Car H3×4)、25Wの低消費電力で実行でき、多数決システムを構築できているという。

こちらは、「CES 2017」や日本でも自動運転デモ走行を行なったリンカーン。「CES 2018」においてもデモ走行を実施
自動運転デモ車であるリンカーンのトランク。グレーのボックスがR-Car H3を2基搭載するHADソリューションキット。よく見ると、別途R-Car H3の評価ボードが搭載されており、なんらかのアップデートがあったのかもしれない。こちらは未試乗のため、詳細分からず

 ディープラーニング環境の話で整理しておきたいのは、学習段階と、その学習結果を実行する推論段階があるということ。これは両方のソリューションを持っているNVIDIAを見ると分かりやすいが、学習段階にはTesla V100のハイスペック環境を、実行・推論段階にはDRIVE Xavier(エグゼビア)を提案している。R-Car H3は実行・推論段階のプラットフォームになり、端末側、つまりエッジコンピューティングの代表製品となっている。

 PCに詳しい方なら、サーバー市場と、クライアント(とくにノートPC)市場と考えればよく、ノートPCにおいては電池で動作するため消費電力と性能のバランスが大切で、これはEV(電気自動車)にも通じる構造だろう。

 この圧倒的な数の出荷が見込める車載用の自動運転実行環境の正解はまだ分かっておらず、どの程度の性能が必要なのか、どの程度の消費電力が必要なのか、自動車メーカーは開発を通じて見極めようとしている。その要求に応えるため、半導体メーカーは消費電力や性能、開発のしやすさを競っているわけだ。

 ルネサス エレクトロニクスのR-Car H3はCES 2018において、すでに自動運転車を実現していることと、R-Car H3のソリューションを多数デモすることによって開発が容易であることを示していた。

R-Car H3とAWS(Amazon Web Services Cloud)を使った、コネクテッドカーのデモ
こちらがメインとなる後続車のスクリーン表示。R-Car H3のグラフィックス能力が高いことが分かる
先行車が事故を検知
事故発生地点情報がAWSに送られ情報共有
事故発生地点が分かるため、ルート変更が速やかに行なえる
こちらは、R-Car H3の上でXenを実行。仮想環境を作り出して複数のOSを動作させている
マップ画面
車両モニタ画面
実行環境の説明
R-Car H3を使ったコックピット提案。ピックアップトラックをベースにしており、各所に液晶モニタが配置されている
メーターパネルは全面液晶。パーソナライズされ、壁紙が自分があらかじめ決めたものになる
今後は全面液晶が標準になり、メーターパネルのデザイン力が問われる時代になるだろう
センターコンソール。デジタルミラーやナビ設定画面。R-Car H3のパワフルな能力が分かる

編集部:谷川 潔