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ツーリングカーによるレース「TCRジャパンシリーズ」2020シーズンが開幕。初戦を制したのは?

予選ができずにクジ引きでスターティンググリッドを決めるという異例の事態

2020年のTCRジャパンシリーズが開幕!

 7月25日~26日、スポーツランドSUGO(宮城県村田町)にて世界統一規格のツーリングカーによるレース「TCRジャパンシリーズ」が開幕した。2019年から始まったシリーズ選手権だが、2年目を迎えた今シーズンは他のモータースポーツ同様、新型コロナウイルス感染症の拡大により開幕が遅れ夏に突入したこの時期の開幕戦となった。当初20台以上の参加が見込まれていたというこの2020年シーズンだが、外国人ドライバーやメカニックで構成されたチームや大幅なスケジュール変更により参戦を断念したチームなどが多数いて、参加台数は9台にとどまった。

 TCRジャパンに参加するマシンは、4ドアまたは5ドアボディのFWD車に2.0リッター以下のターボエンジンという量産車でもとてもポピュラーな組み合わせ。今シーズンの参戦車両はフォルクスワーゲン「ゴルフ」やアウディ「RS 3」、ホンダ「シビック」、アルファロメオ「ジュリエッタ」と、わが国でも馴染み深いモデルに加え、スペインのクプラレオンが加わった。

No.19 フォルクスワーゲン ゴルフGTI TCR / HIROBON(バースレーシングプロジェクト【BRP】)
No.21 アウディRS3 LMS / 篠原拓朗(Audi Team Hitotsuyama)
No.25 フォルクスワーゲン ゴルフGTI TCR / 松本武士(VolkswagenRT with TEAMWAKAYAMA)
No.34 ホンダ シビックTCR / 下野璃央(Drago CORSE)
No.55 アルファロメオ ジュリエッタ RF TCR / Mototino(55MOTO with J'S RACING)
No.62 ホンダ シビックTCR / 塩谷烈州(全薬工業with TEAM G/MOTION')
No.69 アルファロメオ ジュリエッタ RF TCR / 梅本淳一(55MOTO with J'S RACING)
No.73 アルファロメオ ジュリエッタ ヴェローチェTCR / 大蔵峰樹(M-PROTOTYPING Team STILE CORSE)
No.190 クプラ レオンTCR / 一条拳吾(バースレーシングプロジェクト【BRP】)

 開幕戦の舞台は宮城県のスポーツランドSUGO。山あいに立地した高低差のあるサーキットは7月24日の専有走行こそ晴れたものの、25日~26日のレース期間は終日強い霧がコースに立ち込め、予選ができずにクジ引きでスターティンググリッドを決めるという異例の事態。ちなみに、TCRジャパンシリーズは土曜日に行なわれるサタデーシリーズと日曜日に行なわれるサンデーシリーズと2つのシリーズに別々のポイントが加算され、各々のチャンピオンが決まるというシステム。

 今回はいずれも予選ができなかったので、サタデーシリーズのグリッドをクジ引きで決め、サンデーシリーズはサタデーシリーズのレースにおける最速ラップ順にグリッドが決められるという少々複雑な流れとなった。くじ引きによって決められたグリッドは、アルファロメオ ジュリエッタ ヴェローチェTCRの大蔵峰樹選手がポールポジション。以下、ホンダ シビックTCRの塩谷烈州選手、アルファロメオ ジュリエッタ RF TCRのMototino選手、同じくアルファロメオ ジュリエッタ RF TCRの梅本淳一選手が続いた。

 そして5番グリッドにはフォルクスワーゲン ゴルフGTI TCRのHIROBON選手、6番グリッドにはTCRジャパンシリーズ初の女性ドライバー、ホンダ シビックTCRの下野璃央選手。一方、専有走行で好タイムをマークしていたフォルクスワーゲン ゴルフGTI TCRの松本武士選手は7番グリッド。続いてクプラレオンTCRの一条拳吾選手、最後尾スタートはアウディ RS 3 LMSの篠原拓朗選手だった。

濃霧のため予選の走行ができずスターティンググリッドはくじ引きで決定。右は最後尾スタートの篠原選手、その前が一条選手。でも結果は……
「晴天祈願!!」の願いも届かず濃霧が立ち込めたサーキット
スタートへ向かう各車にライトオンの指示
スターティンググリッドはご覧の通り

 サタデーシリーズのスタート時にも天候の回復はなく、濃霧の中の決勝レーススタート。決勝レースは23分経過+1ラップ。ファーストラップから後方スタートの3台が飛び出し、前方からスタートしたアルファロメオに襲いかかる。中盤は最後尾スタートの篠原選手と7番グリッドからの松本選手によるデッドヒートが続き、見応えのある展開となった。先頭2台が争っている間に3位の一条選手がグングン差を詰め、一時はトップに立つ。もう誰が優勝してもおかしくない状況。後半は篠原選手と一条選手が抜き出てたが、わずかの差でレースを制したのは篠原選手。後方からスタートした3台がトップ3というリバースグリッドのようなくじ引きの結果が、皮肉にもレースを大いに盛り上げた形だ。

各車一斉にスタート
中盤までは松本選手のゴルフと篠原選手の激しいトップ争い
一条選手のクプラが追いつき一時はトップに
終盤はアウディ VS クプラという構図
レースを制したのはアウディの篠原選手。クプラの一条選手、ゴルフの松本選手と続く。いずれも共通のプラットフォームを持つフォルクスワーゲングループのマシンだ

 なお、このレースでファステストタイムを叩き出したのは、クプラレオンTCRの一条拳吾選手。ラップタイムでグリッド順が決まるサンデーレースのポールポジションを獲得したわけだが、翌日もさらに濃い霧がやまず中止に。幻のポールに終わった。

 一見、街で見かける普通のクルマに見えながら、その生まれも育ちも生粋のレーシングカーであるTCRマシンが争うTCRジャパンシリーズは、くじ引きの妙も加わり出走台数の減少を補ってあまりある魅力的な展開で開幕戦の幕を閉じた。

TCRジャパンシリーズ第1戦 Saturdayシリーズ 決勝結果

1位:No.21 篠原拓朗(アウディRS3 LMS)Audi Team Hitotsuyama
2位:No.190 一条拳吾(クプラ レオンTCR)バースレーシングプロジェクト【BRP】
3位:No.25 松本武士(フォルクスワーゲン ゴルフGTI TCR)VolkswagenRT with TEAMWAKAYAMA
4位:No.19 HIROBON(フォルクスワーゲン ゴルフGTI TCR)バースレーシングプロジェクト【BRP】
5位:No.62 塩谷烈州(ホンダ シビックTCR)全薬工業with TEAM G/MOTION'
6位:No.34 下野璃央(ホンダ シビックTCR)Drago CORSE
7位:No.55 Mototino(アルファロメオ ジュリエッタ RF TCR)55MOTO with J'S RACING
8位:No.73 大蔵峰樹(アルファロメオ ジュリエッタ ヴェローチェTCR)M-PROTOTYPING Team STILE CORSE
9位:No.69 梅本淳一(アルファロメオ ジュリエッタ RF TCR)55MOTO with J'S RACING

日本メーカーのTCRマシン、ホンダ シビックTCRや日本初登場のクプラレオンTCR、そしてアルファロメオのレーシングカーの戦うTCRジャパンは、出走台数は少ないもののFWD車特有のコーナーリングも相まって見応えのあるレースだ

 イン側のリアタイヤを浮かせながらドッグファイトを繰り広げるFWDならではの戦いや、レースとともに歩んできたメーカーでありながら日本では戦う姿を見る機会が少ないアルファロメオのレースシーンが楽しめるのもTCRジャパンシリーズの魅力。第2戦は8月29日~30日にツインリンクもてぎにてスーパーフォーミュラと併催で開催される。