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富士スピードウェイで行なわれた「2019年 スーパーフォーミュラ 第2回公式合同テスト」レポート

TCRジャパンシリーズの公式テストも開催

2019年3月26日~27日 開催

3月26日~27日、富士スピードウェイにて行なわれたスーパーフォーミュラの公式合同テスト

 3月26日~27日、富士スピードウェイ(静岡県小山町)にて全日本スーパーフォーミュラ選手権の公式合同テストが行なわれた。テストは3月上旬に行なわれた鈴鹿サーキットに続く2回目のもので、今シーズンを戦う11チーム20台全てが開幕戦に向け新型マシン「SF19」のテストを精力的に行なった。なお2日間に渡るテストの模様は一般来場者に公開され、レースウィークさながらのピットウォークや報道陣によるドライバーの記者会見の公開などもあり、スーパーフォーミュラの魅力を間近で感じられる2日間となった。また、同日にはTCRジャパンシリーズの公式テストも行なわれ、こちらも合わせて楽しめた。

ドライバー記者会見など普段見られないシーンも一般に公開された公式合同テスト
記者会見では時にトークショーのような掛け合いになってしまうシーンも見られた

新型シャシーSF19の開幕戦に向けた最終テスト

開幕前の最終テストを行なう新型マシン「SF19」

 スーパーフォーミュラ選手権は、今シーズンよりダラーラ・オートモービル(イタリア)による新型シャシーSF19にホンダ/M-TEC製、もしくはトヨタ/TRD製の2リッターターボエンジンの組み合わせで行なわれる。石浦宏明選手(JMS P.MU/CERUMO・INGING)は初日午前中のセッション終了後に行なわれた記者会見で「富士でのテストでもまだセットアップが決まらずニュータイヤを履いてのタイムアタックはできなかった」と語り、新型シャシーのセットアップに苦労している様子をうかがわせた。一方で、今シーズンよりDOCOMO TEAM DANDELION RACINGに移籍した2018年のチャンピオン山本尚貴選手は予想以上の滑り出しとその好調さを口にした。両者とも、シーズン中にはない気温、路温のテストでは分からない事が多く、開幕以降はどんどん勢力図は変化していくであろうと口を揃えた。

 SF19についてコーナリングが速くフィジカル的には非常にきついが乗っていて楽しいと語ったのは、2018年欧州にてFIA-F2優勝も経験した牧野任祐選手(TCS NAKAJIMA RACING)。牧野選手と一緒に記者会見に望んだ平川亮選手(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)は、SF19のドライビングポジションについて普通に座るとハンドルが近すぎてまだ理想のポジションがとれないと指摘。こちらは牧野選手も同じようで、2人ともに開幕戦まで1か月を切った現状でも納得のいくシートはまだできていないと語った。

Car No.1 2018年のシリーズチャンピオン山本尚貴(DOCOMO TEAM DANDELION RACING / HONDA)
Car No.5 福住仁嶺(DOCOMO TEAM DANDELION RACING /HONDA)
Car No.3 山下健太(KONDO RACING / TOYOTA)
Car No.4 国本雄資(KONDO RACING / TOYOTA)
Car No.7 アーテム・マルケロフ(ロシア)(TEAM LEMANS / TOYOTA)
Car No.8 大嶋和也(TEAM LEMANS / TOYOTA)
Car No.15 ダニエル・ティクトゥム(イギリス)(TEAM MUGEN / HONDA)
Car No.16 野尻智紀(TEAM MUGEN / HONDA)
Car No.17 トリスタン・シャルパンティエ(フランス)(REAL RACING / HONDA)
Car No.18 小林可夢偉(Tcarrozzeria Team KCMG / TOYOTA)
Car No.19 関口雄飛(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL / TOYOTA)
Car No.20 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL / TOYOTA)
Car No.36 中嶋一貴(IVANTELIN TEAM TOM’S / TOYOTA)
Car No.37 ニック・キャシディ(ニュージーランド)(IVANTELIN TEAM TOM’S / TOYOTA)
Car No.38 石浦宏明(JMS P.MU/CERUMO・INGING / TOYOTA)
Car No.39 坪井翔(JMS P.MU/CERUMO・INGING / TOYOTA)
Car No.50 ルーカス・アウアー(オーストリア)(B-Max Racing with motopark / HONDA)
Car No.51 ハリソン・ニューウェイ(イギリス)(B-Max Racing with motopark / HONDA)
Car No.64 アレックス・バロウ(スペイン)(TCS NAKAJIMA RACING / HONDA)
Car No.65 牧野任祐(TCS NAKAJIMA RACING / HONDA)
ダラーラ・オートモービル(イタリア)による新型シャシーSF19
様々な角度から見るSF19のフォルム

新採用されたオーバーテイクシステム

 2019年はオーバーテイクシステムが大幅に変更された。2018年まではレース中20秒間5回の使用が認められていたのに対し、2019年はトータル100秒をドライバーが任意のタイミングで使用できるようになった。しかし、一度使うと次の使用までに100秒もの間隔が必要となるので使うタイミングや駆け引きは一層複雑で、今まで以上に頭脳戦となると山本尚貴選手は予想しているようだ。

 テストでは午前中のセッションのみオーバーテイクシステムの使用が認められたが、必要な時間ボタンを押し続けなければならない現状のシステムはコーナリングやシフト操作の時にドライバーの負担が非常に大きいとの声もあった。そのようなマシンの仕様に関しては、チーム毎のセットアップとは別にテスト終了後各チームからの聞き取りを行ない、これから決定されるようだ。

レース中合計100秒使えるオーバーテイクシステムだが、残り使用可能時間が20秒を切るとコクピット上部のランプが赤くなる

 終日ドライコンディションで行なわれた公式合同テストの総合結果はホンダエンジンの山本尚貴選手がオーバーテイクシステムを使って初日に出した1分21秒742が2日間を通じてトップ。以下、山下健太選手、平川亮選手、小林可夢偉選手とトヨタエンジンのマシンの3人が続いた。

緊張感漂うピットの風景
開幕戦を控え各チームともに各部のセッティングに余念のない2日間であった

TCRジャパンシリーズの公式合同テストも同時に公開

 全日本スーパーフォーミュラ選手権の公式合同テストと同日に、富士スピードウェイでは今シーズンより開催されるTCRジャパンシリーズの公式合同テストも行なわれた。TCRマシンは2リッター以下のターボエンジンの4ドアまたは5ドアFWD車をベースに作られたマシンによるレース。専用シャシーが使用されるスーパーフォーミュラとは違い、こちらはホンダ「シビック」やアウディ「RS3」など市販車をベースとしている。

 テストは2日間ともに1時間ずつのセッションにとどまったが、その他今シーズンに向けてのエントラント説明会や参加マシンとドライバーの写真撮影も行なわれた。また初日にはメディア向けセッションが行なわれ、ジャーナリストの試乗も行なわれた。CarWatchでは橋本洋平氏がTCRマシンを試乗したので、その模様は別記事にて紹介する。

コース上での写真撮影も行なわれたTCRジャパンシリーズの公式合同テスト
話題のTCR車両による新しいカテゴリーのレース「TCRジャパンシリーズ」
5月の開幕戦に向けてテスト走行を行なうTCR車両
スーパーフォーミュラ、TCRジャパンシリーズ、ともにタイヤはヨコハマのワンメイクとなる

 2日間に渡る合同公式テストは、2019年から使用される最新のシャシーSF19のテストを行なうスーパーフォーミュラ、新しいシリーズとしてスタートするTCRジャパンシリーズ、ともに新しいマシンによるテストとなった。全日本スーパーフォミュラ選手権の開幕戦「2019 NGKスパークプラグ鈴鹿2&4レース」は鈴鹿サーキットにて4月20日~21日に開催。TCRジャパンシリーズの開幕戦は5月18日~19日にオートポリス(大分県)にてスーパーフォーミュラの第2戦と併催という形で開催され、以降すべてのレースがスーパーフォーミュラと併催となる。

 刷新されたシャシーでさらにコーナリングスピードが増し、新しいオーバーテイクシステムの採用により頭脳戦の様相を呈しているスーパーフォーミュラ。そして、身近な市販車ベースでありながらレーシングカーとしての素性も高く世界で盛り上がりを見せるTCRマシンによるシリーズ戦、ファンにとってはどちらも魅力的なシリーズになりそうだ。