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ホンダ NSX-GT、SUPER GT第2戦 富士優勝 佐伯LPLに優勝の要因と鈴鹿への展望を聞く
2020年8月17日 11:18
SUPER GT 第2戦富士が8月8日~9日、富士スピードウェイで開催された。第2戦を制したのは予選2位からスタートした17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組、BS)。同じ富士スピードウェイで行なわれた開幕戦では、トヨタのGRスープラが1位~5位までを独占し、ホンダ NSX-GT勢は最上位でも6位に入るのが精一杯だったのと比べると、今回は予選で8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)がポールポジションを獲得し、決勝では17号車が優勝するなど、第2戦については一番速いマシンというポジションが揺るがなかったのは大きな違いと言える。
ホンダ NSX-GTの開発をリードする本田技術研究所 HRD Sakura LPL チーフエンジニア 佐伯昌浩氏に決勝後に勝利の要因をうかがった。
前にクルマがいない状態では速く走れるが、前にクルマがいると課題が見えてきたNSX-GTの特性
──決勝レースを振り返っての感想を。
佐伯氏:まずはじめに、このSUPER GTのLPL(ラージ・プロジェクト・リーダー)として想いを述べておきたい。このFRでのNSX-GTで参戦という形は社内でもいろいろな想いがある中でこうした形での参戦を認めてもらった。それだけに早く優勝したいという使命感があり、今は1つ勝てて安堵の気持ちでいっぱいだ。FRのNSXで行こうと決めてから、短期間でエンジン、車体を仕上げる必要があり、まさか2戦目で勝てるとは思っていなかった。我々HDR Sakuraだけでなく、一緒に参戦していただいているチームの力を含めてみんなが力を合わせた結果だと考えている。
──開幕戦の予選では上位に来ていたが、決勝では順位を下げる結果になった。そのときと今回の違いは?
佐伯氏:第1戦ではレースペースに課題があった。今日の結果でそれが潰せたのかと言うと、正直まだ分からない。これからデータを検証してセッティングの方向性などを検討していきたい。
──優勝した17号車の2人は前戦のセッティングでも速く走れていたという話をしていたが?
佐伯氏:前回17号車は途中で止まってしまってリタイアしてしまったので、その後どうなったかは分からない。しかし、確かにブリヂストンを履くNSX-GTとして最も速かったので、あのまま走り続けているところを見たかったという思いはある。
──車両のセッティングについて満足できる出来になったのか?
佐伯氏:特に100号車と8号車に関しては前回のセットアップでは難しいと考えて、選んでいるタイヤも替えてきており、そこも含めて公式練習ではテストしていた。
第1戦で課題となっていたGRスープラと比較してストレートに課題があることは今回も変わっていない。そのため、集団になったときに抜け出せなくなるというのが今回のレースを通して分かった課題だ。単独走行だと速いのだが、100号車のように混戦の中に入ってしまうとなかなか抜けないという状況が生じている。
それに対して、レース序盤に8号車と17号車が逃げを打てたのは正直ちょっとびっくりしている。前にクルマのいない条件で走るとそこまでのタイムが出るということが分かったのが今回の収穫だ。
ドライバーもエンジニアも含めて満足したクルマになったのかと言えば、そこまでではないと思っている。そこについてはまだまだ課題が沢山ある。
──今回の富士2連戦で車両への理解度は高まったのか?
佐伯氏:今回のレースで得たデータを持ち帰っていろいろデータを精査しようと思っている。5台とも完走したことはポジティブだが、まだまだ詰めていくところは見つかってきている。その意味では開発にはありがたいレースだった。
──2戦目で結果を出せた、鈴鹿への作り込みは?
佐伯氏:鈴鹿の方はスピードが富士スピードウェイほどではない。開幕前に鈴鹿でテストした結果を元に、コーナー主体というほどではないがタイムが出せるクルマを目指していこうかと思っている。ただ、新車の初年度なので、全車が同じ条件で走ってみないと、勢力図は分からない。
第3戦鈴鹿ではハンデウェイトが軽いNSX-GT vs. GRスープラか?
開幕戦のホンダ NSX-GTは、予選こそブリヂストンタイヤを履いた車両が前に並んだものの、決勝レースではいずれもトヨタ勢に置いて行かれるという展開のレースになった。
第2戦ではポールからスタートした8号車 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺組、BS)、そして予選2位からスタートした17号車 KEIHIN NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット組、BS)は、後ろのトヨタ勢をぐんぐん引き離してトップを独走。そしてタイヤ交換後に8号車のスピンに乗じてトップに立った17号車がそのまま独走で優勝した。
それに対し、予選7位になった100号車 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐組、BS)はなかなか前をオーバーテイクすることができず、前にクルマがあまりいない状態で走っている時にはいい感じで走れるが、前にクルマがいる状態だとやや厳しいというNSX-GTの特徴を垣間見せた。実は優勝した17号車の塚越広大選手も優勝者会見で、「単独で走っていると速く走れるのが、周回遅れのGT300などが出てくるとやや苦戦する」と説明しており、ドライバーもその点は課題だと感じているようだ。
今週末開催される第3戦鈴鹿では富士ほどは長いストレートがなく、GRスープラ勢のストレートが速いというアドバンテージが1つ減ることになる。また、今回優勝した17号車と、GRスープラ勢(特にトムスと連続3位の14号車)はポイントが増えているため、ハンデウェイトが増している。これらのランキング上位の車両はポイント獲得を目指して戦うレースになる。
その意味ではまだハンデがあまり重くない100号車と8号車がホンダ勢としては優勝を狙っていくことになるだろう。ライバルになるのはトヨタ勢でやはりポイントがあまり取れていない38号車、39号車あたりになるだろう。
鈴鹿での第3戦は8月22日(土)に予選、翌23日(日)に決勝が行なわれる。引き続き無観客での開催となるため、レースはJ-SPORTでの中継などで楽しむことができる。ホンダ vs. トヨタの熱いレースが展開されることが予想されるし、そろそろ日産の逆襲にも期待したいところだ。