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パナソニックのカーナビ「ストラーダ」新製品にいち早く触れてきた 10V型有機ELディスプレイの薄さ&黒の黒さに驚き
“焼き付き”対策も聞いてきた
2020年9月3日 13:01
- 2020年9月2日 実施
パナソニック オートモーティブ社は9月2日、カーナビステーション「Strada(ストラーダ)」の新製品を発表した。同日、都内会場において報道向けの内覧会が開催されたので、その模様をレポートしよう。
パナソニックのカーナビブランドとしてストラーダがデビューしたのは2003年。ホーム向けAV機器を得意とする同社らしく、ワイドVGA解像度(800×480ピクセル)やフルセグ地デジチューナー、Blu-rayディスクなどにいち早く対応してきた。2016年からはフローティング機構を採用した大画面モデル「Fシリーズ」を投入。それまで、専用フィッティングなどを必要としたため一部車種に限定されてきた大画面ナビを幅広い車種に装着可能とした。これにより新車への装着はもちろん、従来はそれほど大きなマーケットではなかった「既販車におけるナビの買い替え需要」をも取り込み、シェアを拡大してきた。
こうした背景を元に誕生したのが2020年モデル。ラインアップはフラグシップとなるFシリーズが「CN-F1X10BLD」「CN-F1X10LD」「CN-F1D9VD」の3モデル。スタンダードモデルがカー用品店向けとなる「CN-RA07D」「CN-RA07WD」、特定販路向けとなる「CN-RE07D」「CN-RE07D」の4モデルとなっている。製品の詳細(フローティングモデル/スタンダードモデル)や発表会の模様は掲載済みの別記事をチェックしてほしい。
2020年モデルの最大のトピックとなるのが、Fシリーズの上位モデルとなるCN-F1X10BLD、CN-F1X10LDに10V型HD(1280×720ピクセル)有機ELディスプレイが採用されたこと。有機ELディスプレイはすでにTVやスマートフォン、携帯ゲーム機などに採用されているけれど、国内市販向けAV一体型カーナビとしては初めてのこと。これによる一番のメリットは高いコントラストが得られること。一般的な液晶ディスプレイではバックライトを必要とする構造上、微細な光漏れを防ぐことが難しく「黒」を黒として表現することができない。だが、有機ELディスプレイは素子自体が発光するため、「光らせない」ことにより、黒をより正確に表現することが可能なのだ。同時に「AGAR低反射フィルム」「エアレス構造」を採用することで映り込みを低減。「ストラーダ史上最高画質を実現」しているという。
実際にクルマに装着された状態で映像を見てみると、まずはディスプレイ部の薄さに驚く。従来モデルは厚みがある半面、丸みを帯びたボディがちょっと可愛らしいイメージだったけれど、新型はスッキリとシャープな印象。ディスプレイまわりの余白を抑えた狭額縁仕上げも相まって、高級感も高まっているように感じられる。一方、映像に関しても、その効果は一目瞭然。特に最上位機種となるCN-F1X10BLDでのBlu-rayビデオ再生は圧巻で、周囲に溶け込むようなナイトシーンはもちろん、逆光で光が差し込むようなシーンなどでも、破綻のない美しい映像を再生。10V型の大画面と相まってクルマの中とは思えない没入感を得ることができた。カーナビがカーナビたるナビ画面ではその効果は薄れてしまうものの、高コントラスト故のクッキリとした表示は唯一無二の仕上がり。液晶ディスプレイより視野角が広く、斜め方向からでもハッキリ見えるのもメリットだ。ただ、文字や写真ではなかなかその実力を伝えることが難しいため、ここはぜひカー用品店などでチェックしてほしい。
と、メリットばかり書いてきたけれども、ガジェットに詳しい人からは「焼き付きはどうなの?」と突っ込みが入るハズだ。これについてはちょっとマニアックで本題からは逸れてしまうけれど、重要な部分なので少し詳しく書いておきたい。
さて、焼き付きは有機ELディスプレイの大きな懸念材料で、同じ映像(色や輝度)をずっと表示し続けていると別の映像になってもそれが残ってしまう現象のこと。ずっと地図を表示し続けるカーナビの場合、避けては通れないものだけに「ダメだったら液晶に戻すぐらいの覚悟」で開発をしてきたという。
これまで有機ELディスプレイがカーナビに採用されてこなかったのは、車載向けの製品(特に温度面での対応)がなかったことに加え、これ(焼き付き)があったことが大きい。今回はストラーダ用に専用パネルを開発することで、そうした部分を解消してきたそうだ。実際の対策としては「パネル側」「セット全体」の両面から行なわれており、前者では表示する画素を微少にズラす「ウォブリング」、予測して輝度を補正する「ストレスプロファイル」などを、後者では熱がパネルに伝わりづらい設計としたほか、背景や雲をアニメーションで動かしたり、ボタンなど常時表示する部分には透過処理を行ったりといった、細かな対策を積み重ねたとのこと。短い内覧時間では焼き付きの有無までチェックすることはできなかったものの、「最終的には車載向けの品質基準をクリアできた」とのことなので、安心して有機ELディスプレイならではのメリットを楽しむことができるハズだ。
Fシリーズならではのフローティング機構は健在だ。基本的に2019年モデルから構造は変わっておらず、ディスプレイ部分をスイング(左右各15度)や上下スライド、角度調整(-20度~60度)、さらに装着時には奥行き調整も可能となっている。ディスプレイ部分が薄くなったことでそこを持って動かすのは若干不安を覚えるものの、実際には十分な強度が確保されているようで、スイングや上下スライドはとてもスムーズに行なえる。また、パネル部分が約300g軽量化されたことで、揺れに対しても強くなっているという。こうした便利な構造を持ちつつ、なんと430車種に装着することが可能。大画面を手軽に楽しめるのは大きなメリットだ。
ナビゲーションはハードウェア面では従来モデルを継承しており、ソフトウェア面でのブラッシュアップがメイン。中でも大きいのは市街地図収録エリアが、従来の1295都市から1741都市へとアップされ、日本全国の市街地を100%カバーしたこと。ナビゲーション利用時に目的地付近を詳細に見ることができるのはやはり便利で、いろいろなところに出かけることが多い人にとっては間違いなく歓迎できる要素だ。そのほかにも、方面案内看板のピクト表示追加や交差点拡大図での残距離表示の拡大など、ハデさはないものの実用的なリファインが行なわれている。
今回は時間や会場の制約もあって試すことができなかったけれど、AV面では回路設計を見直したほか新チョークコイルを採用するなど、ハードウェア面での音質改善が図られている。また、CN-F1X10BLD、CN-F1X10LDにはHDMI入力が用意され、スマホや「Amazon Fire TV Stick」を接続して動画配信を楽しむ、なんてことも可能になった。
拡張性も2020年モデルの特長だ。新たにCN-F1X10BLD、CN-F1X10LD向けとして用意されたのは、ナビ連携前後2カメラドライブレコーダー「CA-DR03HTD」と、高画質リアビューカメラ「CY-RC500HD」の2つ。
CA-DR03HTDは前方だけでなくあおり運転などにも対応可能な後方カメラもセットした2カメラタイプ。カメラ部分はフルHD&HDR(ハイダイナミックレンジ)記録、水平画角117度で明るいF1.4レンズ採用と従来モデルから格段にアップ。ナビ画面にもHD画質で鮮明に表示することが可能となっている。ナビ連動タイプならではの使い勝手のよさに加え、ハッキリとした映像を前後同時に記録できるのは実用的。リアルタイムの映像を画面上に表示することもでき、多人数乗車時にリアビューミラーとして使う、なんてことも可能だ。
CY-RC500HDはHD対応のいわゆるバックカメラ。上で紹介した「ドラレコがあれば不要では」なんて思うかもしれないけれど、こちらはなんと画角が約180度。人間の目では一度に見ることができない範囲を映し出すことで、死角から近づいてくるクルマや歩行者などがチェック可能となっている。こちらもHD&HDR対応となっており、見やすい映像を実現している。
時間的な制約があったためざっくりとしたレポートになってしまったけれど、注目の有機ELディスプレイは文句ナシに必見の美しさ。関係者からは採用には「勇気」が必要だったなんてコメントを聞くことができたが、その見返りは十二分。ぜひ実機でチェックしてほしい。