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出光興産、「お客さまの未来を支える」新SSブランド「アポロステーション」発表会
新施策の「統合アプリ」を2021年度中に展開
2020年11月25日 13:26
- 2020年11月24日 開催
出光興産は11月24日、同日に発表した新SS(サービスステーション)ブランド「apollostation(アポロステーション)」で導入する予定のVI(ビジュアルアイデンティティ)などに関する記者発表会を開催した。
2019年4月に出光興産と昭和シェル石油が経営統合を行なったことを受け、出光興産ではこれまで2社が展開してきたSSブランドを2021年4月からアポロステーションに移行。また、同じくそれぞれのSSブランドで発行してきたカードについても同じく2021年4月から相互乗り入れを可能にしていくことなどをすでに発表している。
公開された新VIでは、既報の「出光興産、新SSブランド『apollostation』に新VI導入 新ユニフォームや新ローリーなど公開」でも紹介しているように、SSの外観やスタッフが着用するユニフォーム、タンクローリーの塗装、各種カーケア商品の新デザイン、「出光カードまいどプラス」の後継カードとなクレジットカード「apollostation card」の券面デザインなどが公開されており、発表会の会場内で実物や模型、パネルなどを展示した。
移動を“面で支える”ことでさまざまなチャンスが生まれる
発表会では、最初に出光興産 上席執行役員 販売統括 森下健一氏が登壇。アポロステーションのコンセプトとビジョンについて説明した。
森下氏は経営統合から2年となる2021年4月から、全国に約6400か所あるSSをアポロステーションに生まれ変わらせていくにあたり、コンセプトを「お客さまの未来を支える拠点」と位置付け、アポロステーションという器を通じて実現していきたい、器であるアポロステーションにこれから自分たちの魂をどんどん注ぎ込んでいこうと考えていると語った。
また、「お客さまの移動に“うれしい”を生み出す未来型のステーションを作っていきたい」と意気込みを述べ、そのために、ユーザーに加えて出光系の販売店、昭和シェル系の特約店で働いているスタッフなどに直接インタビューを行ない、過去にとらわれることなくできる限り刷新していく方針を固めたという。一方で残していくべきレガシーについては継承していき、未来型でありながら過去の歴史、積み重ねてきたことを残していくというブランドコンセプトを目指していると説明した。
具体的に刷新していく点としては、SSの名称をアポロステーションに変更し、ユーザーの移動体験全体を面で支え、そこに喜びなどの付加価値を提供していく未来型のSSを目指していく。また、デザインではアポロステーションが持つ“尽きることのないエネルギー”を流れる光の束として表現する「プリズムライン」を採用。レッドからイエローにグラデーションで変化することにより、モビリティやコミュニティの未来をしっかりと照らし、生活者、消費者に活力を与えていくという意味を持たせているという。
継承していくレガシーとしては、自ら輝き、周囲を明るく照らす太陽神「アポロ」をモチーフとした「アポロアイコン」により、SSに足を運ぶユーザーも輝かせることができると紹介。また、経営統合した2社は長い歴史を持っており、出光興産が果たしてきた社会貢献や果敢な挑戦、昭和シェル石油がもつ先進性や多様性といったよいところをしっかりと残してブランドに反映させていきたいと語っている。
ユーザーの移動を面で支えるという販売施策の具体策としては、「テクノロジーの進化」「モビリティーの変化」「環境意識の高まり」「生活様式の変化」という4つの要素を取り上げ、日本人の生活様式を大きく変化させている要因となっており、この4要素をしっかりフォローしていかなければ来店客を逃してしまうと解説。コロナ禍の影響によって実店舗に足を運ぶ人が減り、インターネットを利用して購買を行なう人が増加して、その中での得意客が増えていると指摘。ユーザーが実際に移動する前にさまざまな欲求を満たそうとしており、SSでも対応できる体制を整えることが大切で、これによって移動を面で捉えることにつながっていくとした。
最後に森下氏は、これまでクルマならクルマ、燃料なら燃料と独立して考えられてきた要素を、これからは移動を核とした面として体験全体で捉え、全体としてサポートすることでさまざまなチャンスが生まれてくると指摘。アポロステーションでは移動を面で支えながら、競合他社と一線を画す差別化の戦略を採用し、未来志向を持った本当の意味でのサービスステーションになっていくことを強く願っていますと語ってプレゼンテーションを締めくくった。
新施策の「統合アプリ」を2021年度中に展開
続いて出光興産 リテールマーケティング部長 大石朗氏から、アポロステーションの各種デザイン、展開方針などについての解説が行なわれた。
大石氏は同日発表した新VIを採用するアポロステーションの各種デザインについて説明し、SS施設やユニフォーム、タンクローリー、カード、オイル類などに統一されたVIによるデザインを採用することで、新たに誕生するアポロステーションの認知度向上を図っていくと説明。
また、全国に約6400か所あるSSのデザイン切り替えスケジュールでは、出光系と昭和シェル系で差が出ないよう、同じ時間軸の中で切り替えていく方針であると語り、2021年4月からスタートして、年間2000か所をめどに工事を進め、2023年にはすべての系列SSをアポロステーションに切り替える予定としている。この中で大石氏は、社会がコロナ禍にあることで資材調達や施工会社などが不透明になることに配慮しつつ、SS1か所ずつていねいに切り替え工事を進めていきたいとした。
現在は個別に展開しているカードやキーホルダー型決済ツール「EasyPay(イージーペイ)」「DrivePay(ドライブペイ)」などについても、2021年4月から相互乗り入れを開始。ユーザーの利便性が飛躍的に向上するとアピールし、相互乗り入れスタート時にはSS店頭に告知ツールなどを用意するという。
アポロステーションのスタート後は、切り替えが完了する2023年まで出光、昭和シェル、アポロステーションと3つのブランドが併存することになるが、アポロステーションと出光系SSでは新VIを採用したカードや商品などを展開。昭和シェル系SSではロイヤル・ダッチ・シェルとのライセンス契約の兼ね合いもあり、シェルの「ペクテン」マークが入った従来品を継続使用。これにはハイオクガソリンの「Shell V-Power」、エンジンオイルの「Shell HELIX」、クレジットカードの「Shell Starlex CARD」が含まれる。ここから最終的に、アポロステーションへの一本化が進められていくという。
このほか、アポロステーションの誕生に合わせ、リテール戦略でも新たな施策の導入に向けて計画を進めており、大きな目玉としてスマートフォン向けの「統合アプリ」を2021年度中に展開予定だと紹介。すでに両ブランドで「Shell Pass」「PIT in plus」といったデジタルサービスを行なっているが、新しいアプリではそれぞれの機能を単純に集約するだけではなく、他業種や新業態、新店舗との連携、利用者の相互送客などを実現する機能を搭載するという。
この新アプリの活用により、全国に約6400か所ある同社SSに足を運ぶ3000万人/月の顧客データを一元管理。デジタルプラットフォームを構築してOne to Oneマーケティングを強化し、ユーザーニーズに寄り添ったサービスを提供できるよう取り組んでいくと説明した。
これらの施策について大石氏は、「これまでSSというと、給油やカーケアなどによってモビリティ社会をサポートする位置付けでしたが、今後は暮らしと移動を支えるライフパートナーとしてリテール事業領域を拡大し、他元売りとの差別化を図れる戦略を進めていきたいと考えております」と語った。
後半の質疑応答ではEV(電気自動車)に対する取り組みについて質問され、大石氏が回答。EVはリテール事業領域の拡大施策やMaaS対応に向けてさまざまな実証実験に取り組んでおり、各地域にあるSSのネットワークによって顧客のモビリティや生活を支えるサービスを展開していきたいとの考えを述べ、具体的な内容については今後の発表を待ってほしいとした。
また、出光興産では8月に新しい複合型EV充電サービスモデル「Park&Charge」の実証店舗「Delta EV Charging Station (Yokohama)」をデルタ電子と共同でオープンさせているが、これについて森下氏に質問したところ、実証店舗の活動がスタートしたばかりということで、アポロステーションでの展開は検証内容を精査して検討していくとのこと。ただ、アポロステーションでは充電サービスを行なうことも当初から視野に入れており、SS周辺にニーズがあると判断された場合にはすばやく導入できるよう体制を整えているとの回答だった。