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アストンマーティン、初のF1用セーフティカー「ヴァンテージ」とメディカルカー「DBX」を公開

2021年3月8日(現地時間)発表

F1で使用されるセーフティカーのヴァンテージ(右)とメディカルカーのDBX(左)

 アストンマーティンは3月8日(現地時間)、初めてF1のセーフティカーに起用された「ヴァンテージ(Vantage)」と同じくメディカルカーに起用された「DBX」を公開した。

 2台はFIAが定めている規格に準拠させるため、本社のエンジニアリングチームが改良。あらゆる天候条件で性能を発揮できるように、シルバーストーンにあるアストンマーティンの施設で高速耐久性評価やサーキット走行など約1万5000kmのテスト走行を繰り返したという。

レース中はピットレーンで直ぐに発信できる状態で待機する(画像はイメージ)

セーフティカーのヴァンテージは特別仕様車

 F1マシンは低速走行が続くとタイヤの温度が下がりグリップ力が低下してしまうため、セーフティーカーもかなり高い速度域での走行性能が求められる。そこでアストンマーティン・ラゴンダ最高経営責任者(CEO)のトビアス・ムアース氏は、エンジニアリングチームに指示を出し、ヴァンテージのサーキット性能向上に取り組んだという。

 その結果、搭載されているV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンの出力は市販車より25PSアップの535PSを発生。最大トルクは市販車と同じ685Nmのままだが、トルクバンドを広げ、さらにトランスミッションを改良したことで、シフトのダイレクト感とコントロール性を向上。また、サスペンションやダンパーも改良され、アンダーボディのブレーシングも細部にわたり手直しが行なわれ構造剛性も高められている。

 さらに、フロント・スプリッターをはじめ車両全周にエアロキットを装着し、ボンネットには冷却効率を高めるためにエアダクトを配置。200km/h走行時には市販車より60kgも大きい155.6kgのダウンフォースを発生。0~60mph(約96km/h)の加速はわずか3.5秒の性能を誇る。

F1マシン AMR21

 ボディカラーは、アストンマーティンが61年ぶりに参戦するF1マシン「AMR21」と同じ2021アストンマーティン・レーシンググリーンで、フロント・スプリッターにはライム・エッセンスのピンストライプが入る。また、天井のライトバーはカーボンファイバー製の台座に取り付けられ、空気抵抗が最小限に抑えられる形状はもちろん、リアリアウイングへとエアを導くように設計されている。

 車内はレーシングシートに交換され、F1マシンと同じ6点式ベルトを装備。ダッシュボードには2つの画面が取り付けられ、ドライバーとコ・ドライバーに対してレースのライブ中継と最新のラップタイムなどの情報が映し出される。

 この悪天候やレースアクシデント発生時に出動するセーフティーカーのステアリングを握るのは、かつてレースに参戦していた経歴を持ち、F1のセーフティーカーを担当して20年以上の経験を持つFIA指定ドライバー、ベルント・マイレンダー氏。助手席にはコ・ドライバーのリチャード・ダーカー氏が搭乗する。マイレンダー氏は「世界中のフォーミュラ1ファンは私と同様、アストンマーティンがサーキットに戻ってくることを喜んでいます。このオフィシャル・セーフティーカーは美しく、高いパフォーマンスを備えたクルマであり、アストンマーティンのエキサイティングな新時代を示すものです」とコメントしている。

メディカルカーはSUVモデルのDBX

 メディカルカーDBXのステアリングを握るのは、アラン・ヴァン・デル・メルヴェ氏。セーフティーカーと同じく2021アストンマーティン・レーシンググリーンのボディカラーにライム・グリーンのアクセントが施される。搭載しているエンジンはV型8気筒4.0リッターツインターボで、最高出力550PS/最大トルク700Nmを誇り、0-100km/h加速は4.5秒。最高速度は291km/hに達する。

 大型の医療バッグ、AED(自動体外式除細動器)、消火器2台、火傷対応キットなど大量の医療器具を搭載。内装デザインは基本的に市販車と同じだが、リアシートの中央席が外されて4人乗り仕様に改造され、各シートは6点式ベルトを備えたスポーツ・バケットシートになっている。ダッシュボードにはセーフティーカーと同じく2つのモニターを装備していて、1つはレースのライブ中継、もう1つは救急搬送するドライバーの状態をモニタリングさせられる機能などが備わっている。

 アストンマーティン・ラゴンダ最高経営責任者(CEO)のトビアス・ムアース氏は「全従業員と同様に、私も60年の時を経て、アストンマーティンがモータースポーツの頂点であるフォーミュラ1に復帰したことを誇りに思っています。これはアストンマーティンの重要な新時代のスタートです。私たちが製造するもっともダイナミックなスポーツカーであり、高い評価を受けているVantageがフォーミュラ1オフィシャル・セーフティーカーに、アストンマーティン初のSUVであるDBXがフォーミュラ1オフィシャル・メディカルカーに選定されました。世界中のサーキットで、これらの車両がその役割を果たすのを目にする体験は、私たちにとって誇り高い瞬間となるでしょう」と述べている。

 今後、Vantageベースのオフィシャル・セーフティーカーは、3月12日~14日の3日間、バーレーンで行なわれるプレシーズン・テストに参加。2週間後に同じ場所で行なわれるF1開幕戦に登場。F1 バーレーン・グランプリ2021は、3月28日の16時(世界標準時、日本時間:3月29日1時)から生中継される。