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F1、2022年規定の車両を初公開 今よりも接近したレースが期待できるとロス・ブラウン氏

F1が公開した2022年規定のプロトタイプ車両

F1 2022年規定車両を初公開

 F1世界選手権を運営するFormula One Group(以下、両者あわせてF1)は7月15日(現地時間)、FIA(Federation Internationale de l'Automobile、国際自動車連盟)と共同で開発してきたF1の2022年レギュレーションに基づいたプロトタイプカーを公開した。

 F1 モータースポーツ・マネージング・ダイレクター ロス・ブラウン氏は、「パンデミックの影響で導入が1年遅れたが、ようやく2022年規定の車両の公開にこぎ着けた。この2022年規定の車両では、車両と車両がより近づいてレースをすることができ、ドライバーにとっても、ファンにとってもエキサイティングなレースが期待できる」と述べ、新しい空力規定やコストキャップ(経費に上限を設け、チーム間の格差をなくすルール)導入により、これまでよりも接近したレースが期待でき、オーバーテイクも増えるだろうと強調した。

FIAのトッド会長、F1のドメニカリCEOは、より接近戦になりオーバーテイクが可能になると強調

FIA ジャン・トッド会長

 会見の冒頭では、F1のスポーツ面を統括するFIAのジャン・トッド会長、そしてF1 CEOのステファノ・ドメリカリ氏というF1のツートップがあいさつした。

 FIAのトッド会長は、「この2022年のレギュレーションの大幅な変更により、F1の新しいチャプター(章)が始まる。F1の魅力はドライバーとマシンが限界の中で競い合うところにあるが、新レギュレーションではドライバーがトラック上でより近くで競い合うことができるように設計されている。すでに導入されているコストキャップと合わせて、すべてのチームとドライバーが優勝を狙う機会が増えると考えており、みなさんと一緒に来年を楽しみにしている」と述べ、FIAとしてよりも多くのチームが優勝を目指すことが可能になり、サーキットでの追い抜きなどが増えることに期待感を表明した。

F1 CEO ステファノ・ドメニカリ氏

 F1 CEOのドメニカリ氏は、「この2022年規定のマシンで、われわれのヒーローであるドライバーたちがよりマシンを接近させてレースを行なう条件が整う。コース上での緊張感は高まるだろうし、多くのオーバーテイクが可能になると思う。私も、ファンのみなさんとその瞬間を共有できることを今から楽しみにしている」と述べ、トッド会長と同様に2022年が今よりも接近戦になることを強調した。

ウィングをシンプルにして、ストレートなフロアを採用。グランドエフェクトを高め、追い越しが容易なマシンに

アンベイルの瞬間

 会見ではビデオで、2022年規定のF1マシンがアンベイルされ、現在のマシンとはフロントウィングやリアウィングなどの形状がかなり違っていることが確認できた。

 フロントウィングでは翼端板がかなり大きくなっており、フロントタイヤに当たる風の制御がかなり変わってきそうだ。リアウィングも同様で、翼端板がかなり立体的な3Dデザインになっており、こちらもリアタイヤからの空気の流れを効率よく処理できそうに見える。

F1の2022年規定車両

 なお今回公開されたのは特定のチームの車両ではなく、FIAの研究チームがプロトタイプとして作成したもので、あくまでコンセプトが正しいかどうかを確認するための車両として作られたものだ。

 タイヤにはピレリが供給する新しい18インチホイールのタイヤが採用されている。トレッド長はフロントが305mm、リアが405mmであるのは現行の13インチタイヤと変わらないが、直径は現行の660mmから720mmとやや大きくなっている。この18インチタイヤはすでにいくつかのチームによりテストされており、オーストリアGPではアルファタウリ・ホンダの角田裕毅選手もテストを担当してデータ収集などを行なっていたものだ。

ホイールは18インチに変更され、タイヤの直径も大きくなっている
新しい規定のフロントウィング
こちらはリアウィング

 F1 モータースポーツ・マネージング・ダイレクター ロス・ブラウン氏は、「このマシンは2022年規定を具現化したものだ。空力に関する規定を見直し、18インチタイヤを導入することで、ドライバーがホイールとホイールを近づけて接近戦を行なうことができることを目指している。そのため、フロントウィングのデザインをシンプルにして、フロアはよりストレートなデザインとすることでグランドエフェクトを高めている。来年はそうした車両規定だけでなく、レースウィークエンドに持ち込める新しいパーツの数を制限する。さらにはコスト削減のために部品の簡素化や標準化も進めていく」と新規定の狙いを説明した。

2022年型プロトタイプを前に説明するロス・ブラウン氏(右)とニコラス・トバンジス氏(左)

 FIAでこの2022年規定のプロトタイプ設計を担当したFIA シングルシーター テクニカル・ダイレクター ニコラス・トバンジス氏は、「F1の長い歴史の中でも今回の新規定は最も大きな変化の1つと言ってよいだろう。FIAはF1と協力して、それがコース上でどんなインパクトがあるのかを研究してきた。この規定とコストキャップ制の導入により、F1にポジティブな影響を与えるだろう」と述べ、レギュレーション変更により競争が激しく、チーム間の格差が縮まり、より多くのチームが優勝を目指してレースできるようになるだろうという期待感を表明した。

F1イギリスGPの会場であるシルバーストーン・サーキットのコース上におかれる2022年プロトタイプ
F1イギリスGPに出場するF1ドライバーと記念撮影