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日野、小型トラックやトヨタ向けが好調で“コロナ禍前”まで回復 2022年3月期 第1四半期決算説明会

2021年7月29日 開催

日野自動車の2022年3月期 第1四半期決算内容

 日野自動車は7月29日、2022年3月期の第1四半期(2021年4月1日~6月30日)決算説明会をオンライン上で開催した。

 第1四半期の売上高は3435億4700万円、営業利益161億7300万円(前年同期比268億円増)、経常利益157億1000万円(同275億円増)、当期純利益は63億4100万円(同144億円増)となった。なお、同社は今期から「収益認識に関する会計基準」を適用して売上高の計上基準が変更されている。旧基準で算出した場合の売上高は4111億円で、前年同期(3004億円)から36.9%増となっている。

 販売台数増によって各項目で増収増益となっており、新型コロナウイルスの影響を受ける前の2019年と同水準まで回復していることに加え、2020年10月から取り組みを進めている構造改革の結果、利益率の改善が進んでいるという。オンライン説明会では日野自動車 取締役・専務役員 コーポレート本部長 中根健人氏から決算内容の説明が行なわれた。

 第1四半期のグローバル販売台数は、新型コロナウイルスの感染拡大で販売が低調だった前年同期から30%アップの3万6300台。日本市場では1万2900台(3%増)、海外市場では2万3400台(52%増)となり、海外では新型コロナウイルスの感染拡大で活動制限が実施された地域もありつつ、全体としては回復基調にあり、ほぼ全地域で販売増となってコロナ前の2019年度水準まで回復しているという。

グローバル販売台数のグラフ

 国内市場の詳細では、国内総需要が3万8600台と対前年同期比で5.6%増加。3回目の緊急事態宣言によるトラック市場への影響は限定的で、中型・大型トラックはどちらも堅調に需要が推移し、小型トラックは前年が新型コロナウイルスの影響で低調だったことから、対前年同期比で大きく伸長している。一方、バス市場は引き続き需要減が続いていると分析した。

 日野ではコロナ禍でも感染防止策を徹底して営業活動を進め、販売台数の最大化に努めてきたとのことで、主に小型トラック販売増により、対前年同期比で3.0%増の1万2900台を達成しているとしている。

国内市場では小型トラックの需要が伸びている一方、バスは需要減が続いている

 海外の主要市場については、インドネシアは天然資源価格の好調とインフラ投資計画が市場回復を牽引し、販売台数は前年同期と比較して大きく増加している。ただし、受注水準は高い状態になっているが、新型コロナウイルスの感染が急拡大したことによる需要動向の変化、活動制限に伴う減産の影響については今後とも注意していく必要があると述べている。

 米国は工場の生産停止による影響で販売台数が大きく減少する結果になっているが、当初の見通しどおり、10月からは生産・供給を再開する予定で、まずは2022モデルを予定どおり納入してユーザーやディーラーの信頼回復に努めたいとした。タイでは公共事業の回復に伴い、運輸、建設、輸出などの事業で需要が増加。販売台数は2019年と同水準まで回復しており、今後もしっかりと需要増を取り込んで販売増につなげたいとしている。

日野の海外主要市場であるインドネシア、米国、タイの販売台数

 また、トヨタ自動車向け事業では、車両の納入台数が対前年同期比で114.6%増と大幅増の3万6000台を実現。タイと米国で行なっているユニット納入数も両国で大幅増となり、全体で対前年同期比161.9%増の19万7000ユニットの結果で、車両、ユニットともに2019年水準まで回復を果たしている。

トヨタ向けでは車両、ユニットともに大幅増で、2019年水準を回復している

 対前年同期比で268億円増となった営業利益の変動要因としては、販売面の回復が179億円の増加と大きく貢献。内訳としては国内販売が9億円、海外販売が91億円、トヨタ向けが60億円、その他が19億円となっている。これに加え、国内外でトータルサポートによる収益もしっかりと確保して「稼ぐ力」を高めているとアピールしている。

 環境面の変化としては、為替変動で32億円の増加がありつつ、市況対応の20億円減でトータル12億円増、原価改善では資材費の合理化、工場における原価改善などで40億円増、原価変動他では働き方改革などを含めた固定費の効率化によってコスト低減を進めて48億円増としている。その一方、先進技術やCASEなどの開発費として11億円を減収計上し、将来に向けた投資もしっかりと進めていると説明。所在地別セグメントでは全セグメントが増収増益。日本は輸出されるトヨタ車の出荷増によって増収増益となっている。

営業利益の変動では、販売面の影響と原価改善、原価変動他が大きく貢献している
所在地別の売上高と営業利益
売上高をと営業利益の推移を示すグラフ

 このほかに説明会では、2020年10月から進めている構造改革の進捗について、製品やトータルサポートの競争力強化といった面を中心に解説が行なわれた。

 製品では、これまで2.0t以上をラインアップしてきた小型トラック「デュトロ」に8月から積載量1.5tクラスを新設。バリエーションの拡大によってユーザーの幅広いニーズに応えられるようにする。大型トラックの「プロフィア」には、2022年春から車線維持システムの「LKA」、ドライバー異常時対応システムの「EDSS」の搭載モデルを設定する。

 また、車両の電動化についても積極的に取り組み、小型EV(電気自動車)バス「ポンチョ Z EV」を2022年春、小型EVトラック「デュトロ Z EV」を2022年初夏に市場投入。ラストマイルにおける人流、物流のカーボンニュートラルに貢献し、デュトロ Z EVでは現場での使い勝手を追究して、電動化に止まらない価値を提供していくという。

 トータルサポート収益の向上を目指す取り組みでは、7月1日に首都圏3販売会社を統合した新会社「南関東日野自動車」を設立。首都圏の広域に広がるユーザーへのサポート体制を充実させるほか、3社統合による管理業務の効率化でリソースを有効活用していく。このほか、販売会社の拠点新設。拠点更新も継続して進め、整備性と生産性を高めてテクニカルサポートも充実させていくとアピールした。

 最後に中根氏は、「この第1四半期は構造改革を着実に進め、計画を上まわるスピードで実行できたこと、また、海外市場での需要回復によって前年度比で大幅な増益を達成いたしました。結果として、コロナ禍前の2019年度対比でも増益となり、利益率も改善しております。一方で、市場回復によって販売は増加傾向となっているものの、一部地域で感染の急拡大による影響なども含め、慎重に見極めていく必要があります。2021年度も引き続き、大変厳しい経営環境にありますが、将来に向けた投資も実施しつつ、構造改革をいっそう進めて着実に成果を出していきたいと思います」と総括した。

構造改革の進捗では、足下の競争力強化の施策として、競争力を磨いた商品の提供、トータルサポート収益向上などの取り組みを進めていることを紹介

 オンライン説明会に参加した記者との質疑応答では、販売を大きく伸ばしたトヨタ向けの納入に関する具体的な内容として、車種では日野自動車・羽村工場で生産している「ランドクルーザー プラド」が非常に好調に推移していると説明。また、ユニットではタイの工場で生産しているトヨタのIMV(多目的車)プロジェクト向けのユニット生産が非常に好調で、増産要求も出ている状態となっており、しっかり応えていきたいとした。

 また、世界的な半導体不足の影響がどれだけ出ているのかという質問に対しては、現状では日野の工場において影響は出ていないと回答。しかし、サプライチェーンから供給に懸念があると情報が出た場合には、該当する部品についてしっかりと数量を確保し、できない場合でも代替品の採用などで早期に手を打って生産に影響しないよう努める必要があるとして「非常に厳しい状況にある」との見方を示した。このほか、ハーネスの供給不足の影響でタイにあるトヨタの工場が稼働停止になるケースがあり、これは日野としても影響を受けている面があると補足している。