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スバル、新型BEV「ソルテラ」開発責任者の小野大輔氏がプレゼン「自信を持ってスバルのクルマと呼べる」

2021年11月11日 世界初公開

 スバルは11月11日、新型BEV「SOLTERRA(ソルテラ)」を世界初公開。オンライン配信されたワールドプレミアイベントには、ソルテラの開発責任者 小野大輔氏が登壇して、新型BEVソルテラを紹介。ソルテラでは、次世代のクルマらしい「先進感」を表現するとともに、スバルユーザーの期待に応える“安心と愉しさ”の提供を目指したという。

 ソルテラは、2022年年央までに日本、米国・カナダ、欧州、中国などに導入を予定する、スバルがグローバルに展開する初めてBEVとなる。その開発は、トヨタ自動車との共同開発という形で行なわれ、小野氏は「私自身を含め各部門のスバル開発者がこのプロジェクトに参画し、『仲よくケンカしよう』というスローガンのもとトヨタのメンバーとお互い妥協なく議論を重ねてきました。そうして本音で意見を交わす関係を作れたことで、スバルがやりたい事もしっかりと実現することができたのです。そうして生まれたこのソルテラ、自信を持ってスバルのクルマと呼べるものに仕上がったと自負しています」と強調した。

EVに求められる4つの期待に応える

 発表イベントに登壇した小野氏は「ここ数年、EVを取り巻く環境は大きく変化し、各社から新たな商品の投入が相次いでいます。お客さまの関心も、EVかどうかよりも、そのEVがどのような価値をもたらすかに移ってきました。そのような中でスバルが初めてグローバルに展開するEV、ソルテラはスバルが笑顔を作る会社として、未来へ歩み続けていくために重要な意義と役割を持つクルマです」とBEV開発の背景を語った。

 その中でソルテラの開発において目指したのは、ユーザーが持つ「社会、環境、未来」への期待、「日常」への期待、「非日常」への期待、「自分自身」への期待、4つの期待に応えることであったという。

 小野氏は「笑顔を未来に繋いでいきたい、そのために環境に優しいクルマに乗りたいという社会、環境、未来への期待。不自由なくこれまでと同じようにクルマを楽しみたい使えるクルマに乗りたいという日常への期待。日常から離れて新しい体験をしたいそのための機能を持つクルマに乗りたいという非日常への期待。そして思いのままに操りたい、自分を表現したいそんなクルマを所有したいという自分自身への期待。このようなお客さまの期待に応える、さらにはその期待を上まわる、そのために、EVならではの新しい価値、スバルの安心と愉しさという価値を持ち、そして日常的に不安なく使うことができる、スバルはそんなクルマを目指してソルテラを開発してきました」と話した。

スバル初の「全自動駐車支援機能」など、次世代のクルマらしい「先進感」を表現

日本仕様のソルテラのボディサイズは4690×1860×1650mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2850mm
インテリアではインパネ上部に配置したトップマウントメーターをスバルとして初採用

 今回公表されたソルテラの日本仕様の主要諸元(社内測定値)は、ボディサイズは4690×1860×1650mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2850mmで、2WD(FF)モデルと4WDモデルの2種類をラインアップ。2WD車ではフロントに最高出力150kWのモーターを、4WD車では前後に最高出力80kWのモーターを搭載してシステム全体で160kWの出力を発生。総電力量71.4kWhのリチウムイオン電池を搭載して、一充電走行距離(WLTCモード、日本国内向け基準)は2WD車が530km前後、4WD車が460km前後とアナウンスされている。

 小野氏のプレゼンテーションでは、ソルテラが提供するEVならではの新しい価値の1つとして、次世代のクルマらしい「先進感」を表現したといい、先進感を表現するエクステリアやインテリアのデザインのほか、代表的な先進的な機能としてスバル初採用となる「全自動駐車支援機能」の採用が紹介された。全自動駐車支援機能により、ステアリング、シフト、アクセル、ブレーキ操作をシステムで制御してすべて自動で駐車を行なう機能という。

 また、モーターで走るEVだから提供できる新しい価値として、小野氏は「コンパクトなモーターユニットであるeアクスルを採用したソルテラはオーバーハングが短いEVならではの特徴あるデザインを実現しています。そのeアクスルが生み出す新次元の走りは、低速から最大トルクをレスポンスよく発揮、発進時の出足のよさ、踏み増した時の力強さ、アクセル操作に対するレスポンスのよさやシームレスな加速など、EVならではの走りが楽しめます。また、ロングホイールベースにより前席、後席ともに乗員の足下空間を大幅に拡大しました」と紹介。

 そして、「ソルテラでは12.3インチの大画面を持つマルチメディアシステムを採用、Apple CarPlay Android Auto を使用する際のスマートフォン接続にはワイヤレス方式を採用しました。スマートフォンの充電に使える非接触式充電器も装備しました。スマートフォンをクルマのキーとして使えるデジタルキー機能も採用し、ドアのロックやプッシュスタートによるクルマの起動が可能になりました。また、全自動駐車支援機能では車外からスマートフォンで操作することも可能にしています。さらに、スマートフォンアプリにより窓開閉やドアの開閉、施錠、空調予約の設定を可能にするなど利便性にも配慮し、EVへの期待に先進の技術でしっかり応えていきます」とコネクティビティの強化などで先進性を表したことが紹介された。

スバルのクルマとして選んでもらうため“安心と愉しさ”にもこだわり

 そして、スバルのクルマとして選んでもらうための取り組みとして、小野氏は「スバルへの期待に応え“安心と愉しさ”を提供することも不可欠です。そのためにこだわったのは、スバルらしい『走りの愉しさ』、どんな環境でも安心を生む『AWDの制御』、トップクラスの『安全性』、そして『使い勝手のよさ』です」と4つのポイントが示された。

 まず、“走りの愉しさ”について、小野氏は「EV専用プラットフォームのe-スバルグローバルプラットフォームを新開発しました。このプラットフォームはスバルグローバルプラットフォームの知見を活かしEV用に開発したもので、バッテリを最大限搭載し、さらにバッテリ自体を骨格の一部に活用することで、従来以上の強度、剛性を実現。操縦安定性の向上に貢献し、意のままに操れるスバルの走りを実現しています。また、アクセル操作に対する出力特性をコントロールするドライブモードにはエコ、ノーマル、パワーの3つのモードを設定。これまで以上にアクセルに忠実に反応して、気持ちよく加速する、スバルらしい走りを作り込みました。そして、ステアリングのパドルで回生ブレーキの強さをコントロールして減速特性を強めたり、巡航距離を伸ばしたりと、ドライバーの意のままに操れるようにしたのもスバルがこだわったところです」と話した。

 また、AWDの制御については、「どんな路面でも安心して走るために、AWDにこだわり続けてきたスバルは、ソルテラにもその技術を惜しみなく注ぎ込みました。前後輪をそれぞれ別のモーターで駆動する新たなAWDシステムを採用し、前後駆動力配分の自由度を高めました。これにより4輪のグリップ力を最大限に使え、安心感の高い走りを実現しています。パワートレインもシンメトリカルのレイアウトにして、これまでのスバル車と同様、直進安定性の高い、安心な走りを実現しました。また、スバルがSUVモデルに採用してきた AWD制御システム『Xモード』と新たに開発した『グリップコントロール』を採用することで、悪路における走破性に磨きをかけました」と説明した。

 また、バッテリを含めた安全性についても紹介され、小野氏は「スバルが安心と愉しさを提供する上で、絶対に欠かせないのが安全性です。EVでは重要部品である電池をキャビン下に配置するため衝突時に求められる各部強度がガソリン車と異なるものになります。さらに求められる骨格強度が変わることで視界や居住性にも影響を及ぼします。このように、EV特有のボディ設計の難しさがありますが、ソルテラでは各部位の骨格形状の工夫や材料強度を最適化することでボディを軽量化しながら高い衝突安全性を実現しました。加えて、EVでは万一の事故の際、高電圧の電気部品も守ることが求められます。バッテリを剛体として活用した堅牢なボディ骨格構造に加え、衝突の際に複数の骨格に荷重が流れるように構造を組むことで、効率的にエネルギーを吸収し、乗員はもちろん各電気部品もしっかり守ります。また、適切な骨格配置と強度マネージメントにより衝突事故発生時の相手車両への加害性を軽減することにも配慮しています」と強調した。

 そして、最後の使い勝手について、小野氏は「荷室は、SUVにふさわしいスペースの確保にこだわり、ゴルフバッグは4個、大型のスーツケースは3個を積載可能です。後席を倒せばマウンテンバイクも車内に積めると、シーンに合わせて必要な物をしっかり詰めるようにしています。荷室床面の高さを低く抑えることで、積載時の利便性にも配慮しています。シフトバイワイヤーを採用することで生まれた空間を活用して、センターコンソールの収納スペースを充実させました。また、スバル車のお客さまが、違和感なくお乗りいただけるよう、各種ブザー音やウィンカーの作動音などはほかのスバル車と同じ音を採用し、スバルのお客さまの期待に応えるためにスバルらしい使い勝手のよさを詰め込みました」と説明した。

 ソルテラの車両紹介の最後に、小野氏は「EVはガソリン車に比べるとお客さまに不安を感じさせることがありました。特に多いのが航続距離やバッテリに関する不安です。ソルテラでは大容量のバッテリを搭載、日常的に使用する距離を十分カバーできる航続距離を確保しています。もちろん、DC急速充電にも対応、短時間の充電で長距離移動の際の不自由さを軽減します。また空調に関しても、ソルテラは少ない電力で素早く温まるシートヒーターやステアリングヒーターに加え、消費電力の少ないヒートポンプ方式のエアコンを採用しており、航続距離への影響を最小限にとどめました。それから、バッテリの劣化対策では電池の材料や電子制御の工夫により、10年後でも十分な電池容量を維持できるようにします。このようにEVの不自由さを解消したソルテラはお客さまに不安なく選んでいただけるEVに仕上がっています」とその仕上がりに自信を示した。