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豊田中央研究所、世界最高効率10.5%を実現した人工光合成について説明

人工光合成の仕組み

ギ酸(HCOOH)に着目した豊田中研

 豊田中央研究所は10月7日、同社が現在取り組んでいる人工光合成に関する説明会を開催した。人工光合成は、植物などで行なわれている光合成を人工的に行なうもの。太陽光エネルギーを使ってCO2が溶けた液体を分解、酸素と水素、そしてなんらかの物質を取り出すことになる。

 豊田中研では、ギ酸(HCOOH)に着目。二酸化炭素(CO2)と水素分子(H2)からシンプルに構成されていることから、水素キャリア(運び手)として優れているという。太陽エネルギーを使って、二酸化炭素を取り込むことでカーボンニュートラル社会に貢献し、カーボンニュートラル燃料など合成燃料の製造などに欠かせない水素を取り出すこともできる。

人工光合成セルの構造

 豊田中研では、このギ酸を作り出す人工光合成システム「MORLIE」を研究開発しており、ギ酸は沸点が水より高い101℃であることから、圧縮水素や沸点がマイナス253℃の液体水素よりも取り扱いが容易だという。

 2011年の発表では太陽光変換効率が0.04%だったが、2015年には人工の葉で植物超えの4.6%を達成。2021年には世界最大級の1m角人工光合成セルで世界最高の太陽光変換効率10.5%を実現したと発表している。

 豊田中央研究所 エマージング研究部門 グリーン燃料研究領域 リーディングリサーチャー 濱口豪氏は、この太陽光変換効率10.5%という値は実用化には十分な効率と説明。現在は、実用化に向けて耐久性の向上など実用化開発研究を行なっているという。

1m角の人工光合成装置で採用されている電極
光合成中。外から光を当てることで、酸素が生成されている
1m角の人工光合成装置

 太陽光によって生成されたギ酸は液体として水溶液中に出てくるのだが、この水溶液とギ酸の分離方法については現時点で明かすことができないと説明。実用化のめども2030年代としており、安定してギ酸を生産するとともに、ギ酸をどう使っていくのか、水素をどう使っていくのかが、ポイントになってくる。

 濱口氏はギ酸を直接使う取り組みとして、ジェイテクトが研究開発している、ギ酸から電気を直接取り出せるギ酸形燃料電池「J-DFAFC(JTEKT-Direct Formic Acid Fuel Cell)」についても触れた。