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豊田章男氏、「五輪で許されても、4輪・2輪はなぜですか?」から約1年 ラリージャパン開催について「3年間待った」と

日が落ちたSS1で、ラリー観戦をする豊田章男社長

12年ぶりに日本で開催されたWRCを観戦した豊田章男社長

 11月10日、世界的なラリー選手権であるWRCラリージャパンが岐阜県・愛知県で開幕した。本来2020年に開催するはずだったが、コロナ禍などにより延期。この秋、12年ぶりに開催されることになった。

 このラリージャパン開催について思い出されるのが、約1年前の9月18日にスーパー耐久第5戦に参戦していたモリゾウ選手こと豊田章男氏の記者会見における発言。ツナギ姿のモリゾウ選手に、国際格式のレースを開けていない現状をどのように捉えるか、自工会会長としての考えを知りたいと質問したところ、「自工会会長としてお答えします」に続き、「一言で言うと『五輪で許されても、4輪・2輪はなぜですか?』というのを、見出しにしてください」と待ち構えていたように答えてくれた。

 これは、オリンピック選手もアスリート、モータースポーツ選手もアスリート、であるのになぜオリンピックは成立できて、F1やWEC、WRCなどの世界的モータースポーツイベントはできないのかということを一言で表わしたもの。当時、この発言は話題になったので覚えている方もいるだろう。

 今回、記者がSS1の鞍ヶ池に訪れた際、近くで豊田章男氏も観戦していた。そこで、世界的モータースポーツイベントである、F1、WEC、MotoGP、そしてWRCが観戦できるようになったことをどのように捉えているか聞くことができた。

 SS1を見に訪れた豊田章男氏に、「『五輪で許されても、4輪・2輪はなぜですか?』と鈴鹿で語ったのが9月なので、あれから1年と2か月がたちました。足下では若干感染者数も増えてきていますが、社会は落ち着いており、鈴鹿ではF1、富士ではWEC、もてぎではMotoGP、そしてここ愛知・岐阜のラリージャパンでは海外の素晴らしい選手が来日して世界レベルの競技が見られています。あれから1年たちましたが、現状の感想を教えてください」と聞いたところ、豊田章男氏は少し考え、万感の思いを込めて語った。

「やっぱり待ちましたよね、3年間」。

「3年間待ちましたよね、3年間待ったと思う。それで、やっとWRCが12年ぶりにくる。かつては、スバル、スズキ、三菱が出ていたわけですが、トヨタは初めてですからね。そして地元でというのはトヨタも変わったなと。トヨタの地元で、この豊田市で、そして勝田ファミリー(勝田貴元選手、勝田範彦選手)が乗る。これを10年前、誰が想像したのかということです。誰も想像できていないと思う、これは」。

「12年前は2010年、フィンランドに行って多くの、本当に多くのトヨタのこと(WRC参戦)を記憶しているファンに会った。ファンがいたんですよ。やっぱりこういう人がいる間に戻らなければいけない。この18年間のギャップ、これはもうギリギリのところだったよね。無事に戻ってこられて、チャンピオンも獲得して。連続でだからね、2年連続で。ラトバラも代表になって」。

「ラトバラはプリンシパルだからね。ラトバラの最初の、彼のラリー人生はトヨタのクルマだったんですよ。それ以降いろいろなクルマに乗って、それでトヨタが復活するときに自分は乗りたいと。それで、初戦で2位でしょ。そして2戦目のスウェーデンで優勝した。それがドライバーファーストというか、今の原点です」。

日が落ちたSS1で、ラリー好きとして観戦

 豊田章男氏は、WRC復帰にあたって「もっといいクルマづくりに携わるトヨタ自動車の皆、我々の想いに賛同いただき一緒に戦ってくださるパートナーの皆様、そして、応援くださるファンの皆様…多くの仲間と、もっといいクルマづくりに向けた“トヨタの新たな旅”が、ついに始まります」と語っており、12年ぶりのWRC日本開催、そしてトヨタが走っている初めての地元開催を、普段よりもゆっくりと、そして万感を込めて語ってくれた。

 また、WRCが12年ぶりに日本開催になることについて、「日本の風景は、ちょっとユニークだと思うのです。(WRCを開催することで)世界中に映像が流れる。川を一つ見ても、町並み一つ見ても違う」と語り、WRC開催によって日本の風景が世界に流れることのよろこびを語った。

 SS1でTOYOTA GAZOO Racingの各選手が通るころには日が沈み、気温が下がっていた。豊田章男氏は、TOYOTA GAZOO Racingの選手だけでなく、WRCのラリー1に参加する全選手の走りを堪能。「今のコーナーの走りはよかったね」「あそこは難しいのかな」「やっぱ、世界のトップは速いよね」と、トヨタ自動車の社長でもなく、自工会の会長でもなく、ただのラリー好きであり、自身もラリーに参加するモリゾウ選手としてラリー観戦を楽しんでいた。

1台1台の走りを確認。「今のコーナーの走りはよかったね」と語りつつ、世界トップクラスの選手の参戦を楽しんでいた