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TOYOTA GAZOO Racing、豊田社長がサプライズ登場した2017年モータースポーツ活動計画発表会

マキネン監督、ラトバラ選手らと「We hate loose,let's win together」とWRC勝利を誓う

2017年2月2日 開催

デモ走行後に記念撮影に応じるトヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田章男氏(左奥)、トヨタ自動車株式会社 専務役員 兼 TOYOTA GAZOO Racing Factory Technical Director 嵯峨宏英氏(左手前)、TOYOTA GAZOO Racing WRT ドライバー ヤリ-マティ・ラトバラ選手(右奥)、TOYOTA GAZOO Racing WRT チーム代表 トミ・マキネン氏(右手前)

 TOYOTA GAZOO Racing(トヨタ自動車)は2月2日、東京 お台場にあるメガウェブで「TOYOTA GAZOO Racing(TGR)」として取り組んでいるモータースポーツ活動の2017年体制に関する発表会を開催した。

 この発表会には、FIA 世界ラリー選手権(WRC)に参戦するTOYOTA GAZOO Racing WRTのチーム代表を務めるトミ・マキネン氏、およびエースドライバーとなるヤリ-マティ・ラトバラ選手も来場し、すでに開催されたシーズン開幕戦で2位入賞と幸先のよいスタートを切ったことなどを報告した。その後のトークセッションには、サプライズゲストとして、トヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田章男氏も登場して大いに盛り上がるセッションとなった。また、発表会終了後にはラトバラ選手による「ヤリスWRC」のデモ走行も行なわれた。

 FIA 世界 耐久選手権(WEC)は2016年と同じ2台体制だが、小林可夢偉選手が乗る6号車では昨年までレギュラードライバーだったステファン・サラザン選手がル・マン24時間レースのみで出走する3台目のマシンのクルーになり、新たなレギュラードライバーとして2014~2016年の3年連続WTCCチャンピオンであるホセ・マリア・ロペス選手が加入した。

 SUPER GTも昨年どおりの6チーム体制。ドライバー陣はややシャッフルされ、36号車 au TOM'S LC500で参戦するLEXUS TEAM au TOM'Sに中嶋一貴選手が復帰する。スーパーフォーミュラは基本的に2016年と同じチーム構成だが、昨シーズンまでチーム・ルマンで走っていた小林可夢偉選手がKCMGに移籍し、チーム・インパルは関口雄飛選手とヤン・マーデンボロー選手という若手2人の組み合わせになっている。

“トヨタは負け嫌い”ル・マン24時間で雪辱を果たし、WRCでも勝ちを狙う

トヨタ自動車株式会社 専務役員 兼 TOYOTA GAZOO Racing Factory Technical Director 嵯峨宏英氏

 発表会ではトヨタ自動車 専務役員 兼 TOYOTA GAZOO Racing Factory Technical Directorの嵯峨宏英氏が、TGRの2017年活動概要に関して説明した。

 嵯峨氏は「弊社の創業者である豊田喜一郎の言葉として、モータースポーツは人を鍛え、クルマを鍛えるということがあり、TGRの活動はそうした人を鍛える、クルマを鍛えるということが2つのぶれない軸になっている。これからもそれを軸に、よりよい自動車を作り上げていくことは変わらない」と述べ、トヨタのモータースポーツ活動が常に変わらない軸をもって活動していることを強調した。

TGRのフィロソフィー

 また、嵯峨氏は2016年のTGRの活動を振り返り「昨年はSUPER GT、スーパーフォーミュラを含む国内の4つのカテゴリーでチャンピオンを取れたほか、米国のNASCARでもマニファクチャラーズチャンピオンを獲得した。すべてはファンのみなさまや関係者の応援のおかげで感謝したい」と述べ、SUPER GTやスーパーフォーミュラのタイトルなどを獲得した昨年はよい年だったとした。

2016年は多くのカテゴリーでチャンピオンを獲得

 一方で「その半面、悔しさから多くを学んだ年でもあった。ニュルブルクリンク24時間では『RC』の駆動系がスタートから3時間で壊れてしまい、夜を徹しての作業も実らずリタイヤになってしまった。また、ル・マン24時間レースでは残り3分でストップすることになった。その瞬間はなぜ勝たしてくれないのだと思ったが、あとで考えればル・マンで勝つにはまだなにかが足りないのだと気がついた」と述べ、ル・マン24時間の残り3分でトップからのリタイヤになった結果などを挙げ、まだ改善の余地があるとした。

ニュルブルクリンク24時間ではRCがリタイヤに終わる
ル・マン24時間レースでは残り3分からのリタイヤという衝撃的な結果
レース以外のTGRの活動も増えているという

 最後に嵯峨氏は「リタイヤしたあと、ACOやライバルメーカー、ファンから非常に温かい言葉をかけてもらった。レースでは勝てなかったが、本当にル・マンの一員になれた気がした。だが、我々は負け嫌い。今年はル・マン24時間で雪辱を果たしたいし、WRCでも勝ちを狙っていきたい」と述べ、昨年のル・マン24時間レースの残り3分に置いてきた勝利を今年こそ取りにいき、久々の参戦となるWRCでも勝ちを狙っていくのだと力強く語った。

モンテカルロラリーでの2位は望外の結果とマキネン氏とラトバラ選手

WRCトークショー

 続いて、今年から参戦を再開したWRCのTOYOTA GAZOO Racing WRTのチーム監督であるトミ・マキネン氏、同チームのエースドライバーであるヤリ-マティ・ラトバラ選手の2人が壇上に呼ばれ、WRCに関するトークショーが行なわれた。トヨタのWRC復帰戦となった開幕戦のモンテカルロラリーでラトバラ選手は2位に入っており、今年からの参戦復帰としてはかなり上々な滑り出しを見せており、今後の活躍に大きな期待が集まっている。今回のトークショーでは、司会の女性、トヨタ自動車のWRC担当 北澤重久氏、マキネン氏、ラトバラ選手という4人でのトークショー形式となった。

 マキネン氏は「モンテカルロラリーではいいスタートが切れた。非常に難しいコンディションだったが、ドライバー、チームが非常によく頑張ってくれて2位になることができた。私は『常に責任を持つこと』『風通しよく物事に取り組むこと』、さらに『信頼』の3つが重要だとチームのメンバーに話している。開幕戦ではそれができて、1つのチームとして取り組むことができた」と語り、ラトバラ選手は「昨年の末にチームの一員になることが決まって、非常にラッキーだと思っていた。決して簡単ではなく、難しい状況だったが、チーム全体が頑張ってくれてラリーを楽しむことができた」とコメントし、それぞれ開幕戦を振り返った。

TOYOTA GAZOO Racing WRT チーム代表 トミ・マキネン氏
TOYOTA GAZOO Racing WRT ドライバー ヤリ-マティ・ラトバラ選手
モンテカルロラリーでのサービスパークの様子

 トヨタの北澤氏によれば「マキネンさんと相談して、サービスパークにVIPゲストだけでなく、一般のファンも近づけるような場所を作った」とのことで、マキネン氏は「ファンが思い出を持って帰ってもらえるようなサービスパークを構築していきたい」との思いを語り、ラトバラ選手も「マキネン氏がドライバーだったとき、自分もファンの1人だったし、彼はヒーローだった。同じようにたくさんの人にWRCのファンになってほしい」と述べるなど、ファンが楽しめるようなサービスパーク(WRCでマシンをメンテナンスするガレージのこと)を作ってWRCファンの拡大を目指しているのことを説明した。

 また、北澤氏は現地で「モリゾウ」こと、トヨタ自動車 代表取締役社長の豊田章男氏と交わしたLINEでのやりとりを紹介し、現場に足を運べなかった豊田氏のためにさまざまな情報を報告していたという裏話などを紹介した。

現地スタッフと豊田社長のやりとり

 ラトバラ選手は自身がまだフォルクスワーゲンのドライバーだったころに、豊田社長とホテルのロビーで立ち話をしたエピソードを披露した。ラトバラ選手によれば「3年前、豊田さんにラリーフィンランドで会ったんだ。ホテルのロビーに日本人の集団がいて、そのなかの1人が豊田さんだった。それで、僕が好きなラリーカーが『ST165』や『ST205』などの『セリカ』なんだって話しをしたんだよ」とのことで、ラリーの話で盛り上がったそうだ。

ラトバラ選手が初めてドライブしたWRカーは、実は1999年型のカローラWRCだという
まだフォルクスワーゲンに所属していたころに、豊田社長と交流していたという貴重なショット

「We hate loose, let's win together」とWRCでの勝利を誓う

豊田社長からWRCスタッフに送られた激励動画。日本時間の深夜ということで、豊田社長も完全にくつろぎモードだ

 その後、北澤氏が「豊田社長に最近会いましたか?」と聞くと、ラトバラ選手は「残念ながら会えてないけど、開幕戦のときにビデオメッセージをもらった」と述べ、会場のスクリーンでそのビデオ(就寝前なのかかなりラフな服装で、メガネをかけていない豊田社長という珍しい動画)が流された。ところが、そのビデオの終了に合わせて豊田氏本人が登場。マキネン氏とラトバラ選手も知らされていなかったようで、サプライズゲストとなる豊田氏が登場に2人ともかなりビックリしていた様子だった。

ラトバラ選手とマキネン選手には秘密にされていた豊田社長のサプライズ登場

 豊田氏が「トヨタは聞く耳を持っていますか?」とラトバラ選手に問いかけると、ラトバラ選手は「開幕戦は非常にいいスタートを切れたと思っている。チーム代表のマキネン氏、豊田さんを含めたトヨタの関係者といいコミュニケーションができている」と答えた。

トヨタ自動車 代表取締役社長 豊田章男氏
続いて豊田氏(左)、ラトバラ選手(中央)、マキネン氏(右)の3人でトークショー
ラトバラ選手とマキネン氏に“モリゾウシール”がプレゼントされた

 また、豊田氏が「私も評価ドライバーの1人としてクルマと道と語っているけど、どんな会話を道としているのか?」という質問を投げかけると、ラトバラ選手は「運転することは好きだから、いろいろな障害物が出てきてもスムーズにコントロールすることを心掛けている」と述べ、マキネン氏は「重要なことはクルマを愛していること。だからこそクルマを走らせることができる」と述べた。その後、豊田社長から2人に“モリゾウステッカー”がプレゼントされた。

 最後にマキネン氏は「非常にいいスタートを切れた。ハードワークを続けてより強力にならないといけない」と語り、ラトバラ選手は「素晴らしいとしか言いようがないスタートが切れた。でも、WRCが簡単なシリーズではないことは理解している。引き続きハードワークをこなして、負けるのは嫌いなので、今年の末には最強になりたい」とそれぞれ抱負を述べると、豊田氏が「We hate loose, let's win together」(私たちは負け嫌い、一緒に勝とう)と2人に英語で話し、そのセリフを3人で唱和して勝利を誓った。

We hate loose, let's win togetherと唱和

ついにル・マン24時間に3台目を投入。雪辱を果たすためドライバーラインアップも強化

発表会で登壇したトヨタの役員とドライバー

 このほかに発表会では、WRC、WEC、各種国内レースなどの参戦体制に関しての発表された。WRCは発表会のトークショーにも参加したヤリ-マティ・ラトバラ選手と、ユホ・ハンニネン選手の2台体制で参戦する。

車両車番ドライバー/コ・ドライバー
ヤリスWRC10ヤリ-マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ
11ユホ・ハンニネン/カイ・リンドストローム
開幕戦では見事2位に入っている
WRC参戦車両のヤリスWRC。エンジンは380馬力以上の最高出力を発生する1.6リッター直噴ターボ「GI4A」。タイヤはミシュランを採用

 WECは2016年と同じく2台体制でシーズンを戦い、ル・マン24時間レースだけは3台体制になることが明らかにされた。昨年までトヨタは、ライバルチームがル・マンだけ3台体制だったときも2台体制としてきたが、2012年に復帰してから初めて3台体制でル・マンに臨むことになる。これにより、仮にレギュラー2台に問題が発生しても、3台目が勝つということ(実際に2015年優勝のポルシェはこのパターン)もあり得るので、トヨタがより本気でル・マンに取り組んでいることを示していると言えるだろう。

車両ドライバー
TS050 HYBRIDセバスチャン・ブエミ/アンソニー・デビッドソン/中嶋一貴
マイク・コンウェイ/小林可夢偉/ホセ・マリア・ロペス
ステファン・サラザン/TBD/TBD
ル・マン24時間レースに3台目のマシンが投入されることが発表され、ドライバーとしてホセ・マリア・ロペス選手が加入
WECに参戦する中嶋一貴選手(左)と小林可夢偉選手(右)
トヨタ TS-050 HYBRID

 なお、3台目のドライバーとしては、2016年に6号車のレギュラーだったステファン・サラザン選手だけが発表されており、残り2名は未発表だった。サラザン選手が抜ける6号車(今年の車番はまだ未定)のレギュラードライバーには、2014年~2016年のWTCCチャンピオンであるホセ・マリア・ロペス選手が加入することが明らかにされている。そのほかのクルーは昨シーズンと同じだ。

SUPER GTとスーパーフォーミュラにも継続参戦

 SUPER GT GT500に関しては昨シーズン同様に6台が参戦するが、車両は新型の「LEXUS LC500」が投入される。TOM'Sを除く5チームは昨年と同じドライバーによるラインアップとなるが、TOM'Sに関しては大きな変更が加えられている。36号車 au TOM'Sは中嶋一貴選手/ジェームス・ロシター選手、37号車 KeePer TOM'Sは平川亮選手/ニック・キャシディ選手の組み合わせとなっている。

チーム名車両名No.ドライバータイヤ
レクサス チーム サードDENSO KOBELCO SARD LC5001ヘイキ・コバライネン/平手晃平BS
レクサス チームルマン ワコーズWAKO'S 4CR LC5006大嶋和也/アンドレア・カルダレッリBS
レクサス チームウェッズスポーツ バンドウWedsSport ADVAN LC50019関口雄飛/国本雄資YH
レクサス チーム エーユー トムスau TOM'S LC50036中嶋一貴/ジェームス・ロシターBS
レクサス チーム キーパー トムスKeePer TOM'S LC50037平川亮/ニック・キャシディBS
レクサス チーム ゼント セルモZENT CERUMO LC50038立川祐路/石浦宏明BS
SUPER GT GT500のドライバー陣
ニューマシンとなるLEXUS LC500

 SUPER GT GT300に関しては、aprが「プリウス」を走らせるほか、すでに発表されているどおりLM corsaが「LEXUS RC F GT3」を2台走らせる。51号車はドライバーが中山雄一選手/坪井翔選手でタイヤはブリヂストン、60号車は飯田章選手/吉本大樹選手でタイヤは横浜ゴムとなる。

チーム名車両名No.ドライバータイヤ
エー・ピー・アールTOYOTA PRIUS apr GT30永井宏明/佐々木孝太YH
TOYOTA PRIUS apr GT31嵯峨宏紀/久保凜太郎BS
エルエム コルサJMS P.MU LM corsa RC F GT351中山雄一/坪井翔BS
SYNTIUM LM corsa RC F GT360飯田章/吉本大樹YH
LEXUS RC F GT3

 スーパーフォーミュラでは6チーム11台がトヨタエンジンを利用する。大きな変更としては2016年までチーム・ルマンで走っていた小林可夢偉選手がKCMGに移籍し、チーム・インパルに新人となるヤン・マーデンボロー選手が加入することだ。関口雄飛選手は引き続きチーム・インパルで走るが、2011年のフォーミュラ・ニッポン王者のジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ選手の名前は今のところリストにはなく、ホンダ系のチームのから参戦する可能性は低いと考えると、オリベイラ選手は今年はスーパーフォーミュラに参戦しない可能性が高そうだ。

チーム名No.ドライバー
ピーエムユー/セルモ・インギング1国本雄資
2石浦宏明
コンドー レーシング3ニック・キャシディ
4山下健太
スノコ チーム ルマン7TBD
8大嶋和也
ケーシーエムジー18小林可夢偉
イトウチュウ エネクス チーム インパル19関口雄飛
20ヤン・マーデンボロー
バンテリン チーム トムス36アンドレ・ロッテラー
37中嶋一貴
スーパーフォーミュラに参戦するドライバー
SF14
ニュルブルクリンク24時間レースにはLEXUS RCの1台体制で参戦
全日本ラリー選手権にもTGRとして参戦
参戦車両のTGR Vitz CVT
ほかにも参加型モータースポーツを展開する

発表会終了後にラトバラ選手とモリゾウ選手によるデモ走行を披露

 発表会の終了後には、ラトバラ選手がWRC参戦車両のヤリスWRCでデモ走行を披露した。ヤリスWRCをドライブするのはもちろんラトバラ選手だが、コ・ドライバーの席に座るのはモリゾウ選手こと豊田氏。2人が乗るヤリスWRCは関係者の前を何度もドリフトしながら駆け抜け、最終的にTGRゲートの前に停車。その後に集まった記者による記念撮影が行なわれた。

ラトバラ選手がスタンバイするヤリスWRCに“モリゾウ選手”もヘルメットを被って乗車
ラトバラ選手が迫力あるドリフト走行を披露
最後はゲートの下で停止
記念撮影がスタート

 予定ではこれで終わりだったのだが、突然予定になったイベントが追加された。それはモリゾウ選手による「86」のデモドライブ。なぜかパッセンジャーズシートにはニュルブルクリンク24時間レースのドライバーとして発表された井口卓人選手の姿が。車内で井口選手がなにをしていたのかは不明だが、井口選手を隣に乗せたモリゾウ選手は関係者が見守るなか、狭いエリアで見事なドリフト走行やドーナツターンを決めてイベントを締めくくった。

モリゾウ選手(豊田社長)がレーシングドライバーの井口選手を助手席に座らせてスタート。普通の自動車メーカーならどう考えても逆という光景だ
モリゾウ選手が見事なドリフトやドーナツターンを披露