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ZF、次世代電動車向け駆動システム「eドライブ」 さらなる小型・軽量・高効率を実現

2022年11月21日(現地時間) 発表

ZFが次世代電動車向けの駆動システム「eドライブ」を発表した

 独ZFは11月21日、乗用車および小型商用車の次世代電動車モデル向けの駆動システム「eドライブ」を発表した。

 新型eドライブは、モジュラー(一体型)コンセプトを採用したことで、コンポーネントとシステムの両方に数多くの革新的技術を導入し、「高効率」「高出力」「短時間充電」を実現させ、優れた出力密度とエネルギー効率を両立。ZFは自動車メーカーの全モデル電動化への流れを加速させることで、新たなスタンダード製品になるとしている。

新型eドライブ

 現在市場に出回っているモーターよりも出力密度を向上できたのは、新たな冷却コンセプトと新しい巻線技術で、運転中にもっとも熱が発生する銅製ロッドの周囲に直接オイルを流すことができるようにしたことがポイント。これにより高効率の冷却が可能となっただけでなく、同じ重量と設置スペースで性能を大幅に向上できたという。また、電気モーターの連続出力もピーク出力の最大85%まで向上できたほか、レアメタルの使用を大幅に削減。新たに開発した「編み込み式巻線技術」でも、“ヘアピン”巻線をさらに発展させて合計で10%の設置スペース削減を実現。巻線ヘッドだけでも、従来の方法に比べて約50%縮小でき、原材料も約10%削減するなど、よりサスティナビリティにモーターを製造することが可能となる。

eモーター用の新しい編組巻線を備えたステータ(固定子)

 ZFはノイズや振動を増やさずに、高効率で重量および設置スペースを減らせる新しいギアボックスのノウハウを、次世代のeドライブに応用させ、また燃料電池を用いたeドライブでは、高電圧コンバータ(DC-DCコンバータ)が中心的な役割を担っていて、燃料電池の低い出力電圧と高負荷時の強い電圧降下を補い、乗用車および商用車向けに開発した「ZFパワーエレクトロニクス・プラットフォーム」の新しい高電圧コンバータは、最高で99.6%の高効率を達成しているという。

 これら新世代の「eドライブ」は、2025年以降に市場へ投入される予定で、個々の部品の量産は、これよりも早い時期に開始される見込み。

新型の高電圧コンバータ

 eドライブテクノロジの開発責任者であるオトマール・シェラー博士は、「洗練された内部構成により、この非常にコンパクトな設計が実現し、システムや部品をわずかな労力で適合させることが可能です。また、構造的に剛性が非常に高い設計となっており、優れた静粛性を実現することができます。『ディスクリート・パッケージ・テクノロジ』によって、パワーエレクトロニクスは、高度な部品の標準化とフレキシブルな適応の両立をとることができます。個別の製品要求特性の実現は、チップレベルで行なわれます。ディスクリート構造のZFインバータは、個々のパワー半導体スイッチで構成されています。このモジュール化により、複雑なパワーモジュールを使用した場合よりも優れたスケーラビリティを実現します。さらに、ZFの『ディスクリート・パッケージ・テクノロジ』では、従来のパワーモジュールに比べ部品点数の削減に成功しました。パワーエレクトロニクスに対する当社の新しいアプローチにより、さまざまな市場の要望に、より早く、より的確に応えることができます」と述べている。

一体型ディファレンシャルギヤ

 電動パワートレーンシステム プロダクトライン責任者のマルクス・シュヴァーベ氏は、「私たちは標準仕様であっても、効率、性能、コストというお客さまの主な要望を満たす3つの基本システムに重点を置いています。これをベースに、あらゆるセグメントの電気自動車において、それぞれのお客さまの要望をより最適に実現することができるのです」と述べている。

 また、ZFの取締役会のメンバーで、ZFグループ電動モビリティ責任者のシュテファン・フォン・シュックマン氏は、「高電圧ビジネスにおける当社の高い受注額が、乗用車と商用車の両分野においてメーカーが当社の製品に大きな関心を寄せていることを証明しています。次世代のeドライブによって、当社は将来に向けて持続可能で効率的なモビリティを開発するという戦略を一貫して続けています」とコメントしている。

【お詫びと訂正】記事初出時「ステータ」を「スターター」と誤って表記しておりました。お詫びして訂正させていただきます。