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アルプスアルパイン、NTTデータ、ゼンリン、渋滞緩和や地域保全などドラレコ映像を活用した新サービスの共同開発

2023年1月11日 発表

左からアルプスアルパイン株式会社 執行役員 インフォテイメント&サウンド事業担当兼アルパインブランド担当 渡辺好勝氏、株式会社NTTデータ 社会基盤ソリューション事業本部 統括部長 礒尚樹氏、株式会社ゼンリン 常務執行役員 事業統括本部長 藤沢秀幸氏

実店舗「アルパインスタイル」でユーザーの声を直接ヒアリング

 アルプスアルパイン、NTTデータ、ゼンリンの3社は1月11日、モビリティデータを活用し、全国の交通課題をはじめ、地域・社会課題の解決に向けた協業に関する記者発表会を行なった。

 最初に登壇したアルプスアルパイン 執行役員の渡辺好勝氏は、「自動車業界を取り巻く環境は大きな変革の中にあるが、ウィズコロナによって自分たちの生活にも変化が訪れている。また、ユーザーのカーライフスタイルにも変化が訪れている。そこでアルパインスタイルというリテール事業を通じて、直接お客さまの声に耳をかたむけ、マーケティングに徹し、そしてそこから顕在・潜在ニーズをとらえた新たなチャレンジを実行しています。この新しいチャレンジを広め、私たちが考える顧客価値を届けてまいります」とあいさつ。

アルプスアルパイン株式会社 執行役員 インフォテイメント&サウンド事業担当兼アルパインブランド担当 渡辺好勝氏

 続いてアルパインニューズ 代表取締役 酒井龍哉氏は、もともとカーナゲーションを販売していたアルパインが、なぜアルパインスタイルを作ってリテール事業に進出したかについて、「アルパインブランドはもっともっとお客さまに近づいて、お客さまの意見を聞いて、カーライフを徹底的に研究することで、新製品や新サービスを提供していきたいという考えからスタートした」と説明。

 そして2019年にアルパインスタイルの1号店となる「横浜246」をオープンさせ、現在6店舗まで拡大。ここで発表する内容についても、すべて実際にアルパインスタイルでヒアリングした声がもとで、その声に対して「何とか対応しよう。お客さまの困りごとにソリューションを提案しよう」と動いた結果だという。

アルパインニューズ株式会社 代表取締役 酒井龍哉氏

 また、最近はコロナの影響や部品欠品などで、新車で3年待つ事例もあると紹介。加えて急激な円安によって中古車も値上がりして、ユーザーから「クルマが買いにくくなった」「クルマが買えない」といった声が寄せられているといい、酒井氏は「昔クルマを買う時はもっとワクワクしていたし、ドキドキしながらカタログを眺めて自分のこれからのカーライフを描いていたけれど、最近はそれが少ないので、単純にカッコイイから欲しいと思えるようなクルマをわれわれが提供しよう!という想いから新たに2台のカスタマイズカーを製作しました」と、開発までの経緯を語った。

「ハイエース」ベースの新型カスタマイズカー「カリカ(Carica)」
「ライズ」ベースの新型カスタマイズカー「ハバナ(Havana)」

ユーザーの「渋滞の先頭が見たい」を解決するために3社が協業

 さらに酒井氏は、アルパインスタイルで多く聞こえてくるユーザーの声の1つに「渋滞問題」が挙げられると紹介。もちろん現状のナビでも“この場所は渋滞している”という情報は素早く反映しているが、ユーザーが求めているのはクルマが集中して混んでいるのか? 事故が起きているのか? 重くて遅いトラックがいるのか? など、「渋滞の先頭が見たい」といった素朴な疑問だという。

ユーザーから寄せられる声の1つに「渋滞の先頭が見たい」というのが多かったという

 渋滞の先頭が見られれば、あとどのくらいで解消するのかも分かるし、もし1時間以上待っても無駄そうだと分かれば、先に食事をしたり予定外の施設に立ち寄るといった“別の行動”を促すことが可能になり、「いつもは2時間で帰れる道なのに、今日は渋滞にはまって4時間もかかったなんていう無駄な時間を費やす必要がなくなる」と酒井氏は語る。さらに、この別の行動に移すことを大勢が行なえば、結果的にさらなる渋滞を引き起こす要因も減るし、さらにはCO2排出削減にもつながるとしている。

協業にいたった背景

 しかし、アルプスアルパインだけではこの課題を素早く解決することは難しいことから、内閣府が進めているSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)第2期自動運転(システムとサービスの拡張)にて、交通環境情報の活用を通じて交通事故低減や交通渋滞の削減といった社会課題の解決や新たなサービスや価値を官民連携で創出するためのポータルサイト「MD communet」を運営しているNTTデータに相談したところ、高精度・高鮮度な地図情報を開発し、次世代モビリティ時代の社会基盤となる新たな位置情報サービスの提供に取り組むゼンリンも加わり、3社が保有する情報や技術を生かすことで、交通課題や社会課題を解決できる新たなサービスの創出につながると考え、今回の協業にいたったという。

オンデマンド型ドラレコ映像配信プラットフォームとは

株式会社NTTデータ 社会基盤ソリューション事業本部 統括部長 礒尚樹氏

 3社連携の事業に関しては、NTTデータ 社会基盤ソリューション事業本部の礒統括部長が説明。礒氏は「人や自動車が動くことによって得られるモビリティデータを、自分たちや社会に活用できないかという共通の思いで今回の活動を開始した」とあいさつ。また、例えば大雨や大雪といった自然災害の情報をいち早く入手したり、交通を整流することで渋滞を緩和・解消させ、結果エネルギー消費効率を高めることで、CO2排出削減やカーボンニュートラル実現への貢献できるなど、「交通課題から社会課題まで幅広い利用価値が想定される」と礒氏は語る。

 SIPのもと運営しているMD communetについては、「すでに60社近くが参画していて、データを持っている企業とデータを使いたい企業が、お互いの強みを生かして新たなサービスを生み出す活動を行なっている」と紹介。具体例としては、気象データも取り込んだ物流における最適ルートの提案や、旅行者が密を避けながら観光地を巡る最適ルートの提案などがあるという。

モビリティデータにおける期待
SIPのMD communetについて
各社の役割

 今回集まった3社は、「まずは身近な困りごとの解決からはじめよう」とプロジェクト構想を立ち上げ、他人のクルマに装着されているドラレコが撮影した映像・画像やGPSデータで大勢が渋滞を回避できれば、そこには見えなくても人と人との助け合いが生まれているし、渋滞が緩和されればその地域もスムーズな交通環境を得られるなど、「たった1つのデータから大きなメリットを生み出せると期待していて、いろいろなサービスを検討している」と礒氏はいう。

オンデマンド型ドラレコ映像配信プラットフォームを構築

 まずはフェイズ1として、レンタカーにドライブレコーダーを装着し、Webサイト上で各車両から得られた画像や映像をレンタカー利用客へ提供するプラットフォームを構築。そのプラットフォームにおける有用性を検証するため、観光客数や地理的条件などを考慮した結果、沖縄県をフィールドに設定して4月から実証実験を行なう予定という。さらにフェイズ2以降では、道路やトンネル内のひび割れの早期発見など地域の環境保全や、事件や事故といった防犯、物流サービスへの活用を全国レベルで展開していくとしている。

 また、アルパインニューズの酒井氏によると、最終的には1000台程度を目途にドライブレコーダーを装着してデータの取得を目指すとともに、先述した新型カスタマイズカー「カリカ」「ハバナ」も沖縄でレンタカーとして使用してもらい、モビリティデータの取得と同時にカスタマイズカーとしての訴求も図っていくという。

今後の構想

 ゼンリン 常務執行役員 事業統括本部長の藤沢秀幸氏は今回の協業について、「地図の使い方はどんどん変わっていて、スマホ時代になっていつでもどこでも地図を見られるようになった。もともと地図は調査員が実際に歩いて情報をまとめていたが、もうそれだけでは足りない時代になっていて、“今何が起きているのか”を地図上に反映した地図の下敷きのようなものを構築している。今回の協業もそういったサービスの1つで、いろいろな人のデータを個人情報には触れないようにフィルタリングしながら、みんなで活用するというスタイルも、新しい地図の使い方の1つとして世の役に立つと思い参画しました」と協業への想いを述べた。

株式会社ゼンリン 常務執行役員 事業統括本部長 藤沢秀幸氏

 今後3社は、実証実験で収集した画像や映像を含む各種データを、各社の保有する情報や技術と組み合わせることで、観光や地域保全、防犯、物流など、幅広い分野における新たなサービスの創出を目指すとともに、沖縄のみならず、エリア拡大することでより多くの人や企業に利用してもらうことで、日本各地の交通や地域社会課題解決に貢献していきたいとしている。