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クボタ、年次イベント「GROUNDBREAKERS NEWYEAR 2023」開催 新製品も一挙紹介

2023年1月19日 開催

株式会社クボタ 代表取締役社長の北尾裕一氏

「農業経営のあらゆるプロセスでお客さまのお役に立ちたい」

 クボタは1月19日、同社の年次イベント「GROUNDBREAKERS NEWYEAR 2023」をオンラインで開催した。同イベントではクボタが2023年に発売する新製品や、農業経営者へのインタビューを通じた事例の紹介、農業に関わるさまざまなテーマによる座談会などを配信。ラジオ番組の公開生収録も行なわれた。

 10時からスタートした同イベントの最初に登場したのは、クボタの北尾裕一社長だ。

 北尾社長は「この2年間はウィズコロナへの対応、デジタル技術の急速な普及と定着、世界的なインフレなど、世界情勢は大きく変化した。農業経営者にとっても難題が降りかかる日々が続いている。私自身、刻々と情勢が変わる中で、いかにビジョンを持ち続け、新しい挑戦をして、社会に価値を届けるか、模索の毎日である。このような時期だからこそ、農業経営者が抱える課題の本質に向き合い、より多くの課題を解決していきたい」と決意を表明。

 さらに「テクノロジーの進化によって過去にない量のデータを取得し、分析し、改善策を見い出すことができるようになりつつある。これは農業分野も例外ではない。だが、農業分野ではまだデータが取られていない領域が多く、データがあっても分散しており、有効に活用できていないケースもある。クボタは『地べたをはうGAFA』として、いままで培ってきた農業機械のデータや、営農支援システムであるKSASのデータを核として、異業種と連携するオープンなアグリプラットフォームを構築し、フードバリューチェーン全体にソリューションを提供していく企業に成長したい。そのために、各企業や地域行政、大学など、多様な人たちと連携を進めている。海外スタートアップ企業の技術や知見も活かし、実現を目指す。農業経営のあらゆるプロセスでお客さまのお役に立ちたい」と述べた。

北尾社長は「異業種と連携するオープンなアグリプラットフォームを構築し、フードバリューチェーン全体にソリューションを提供していく企業に成長したい」と述べた

 加えて、「農業を未来へつないでいくためには、農業経営の計画から生産、販売のほか、事業継承や地域との関わり、安全や地球環境への配慮も大切なファクターとなっていく。さらに将来を見据えれば、持続可能な水インフラを地域でいかに構築して維持していくか、資源を循環し、サステナブルな地域を作っていくかということも考えていく必要がある。クボタは『スマートビレツジ構想』を打ち出している。これは食料、水、環境の3つを事業領域としてきたクボタだからこそできる持続可能な未来への挑戦である」と語った。

 また、GROUNDBREAKERSの開催主旨についても説明を行ない、「コロナ禍でも農業経営者と業界関係者が集い、クボタが持つソリューションを紹介するとともに、日本の農業が抱える課題をどのように解決し、未来を築いていくかをともに考え、ともに語る場を作りたいという狙いから2021年にスタートした。過去3回の開催で延べ2万人以上が参加し、『これからの農業を考えるいいきっかけになった』といった声を参加者からいただいている」などとした。

 今回のGROUNDBREAKERSでは、農業経営、生産、流通、販売領域において、さまざまな作物や地域特性を取り上げながら、「今と、未来」をキーワードに今できるソリューション提案と、未来をともに考えるソリューションを用意したという。

新製品も続々登場

クボタが発表した新製品群

 一方、2023年の新製品についても発表した。

 コンバインでは、DIONITHシリーズにクボタ初となる7条刈りのDR7130を投入することを発表した。DIONITHシリーズは大規模営農を行なっている担い手農家向けの製品で、これまでは5条刈り、6条刈りをラインアップしていた。今回の新製品はフラグシップコンバインと位置づけるもので、加速する農地集約に対応。高馬力、高能力に加えて、より多くの面積をより少ないオペレータで対応できるようにするために、作業能率、快適性、メンテナンス性を追求。スマート農業の実現を支援するという。

 従来の6条刈りと比べて、作業効率は約10%向上。最高作業速度は抑えているが、旋回回数を削減できるため、圃場1枚あたりの作業時間を短縮しているほか、刈取部の引き起し上部空間を5cm拡大。長稈作物の刈り取りにも効果的であるほか、刈取部から脱穀部への作物の搬送姿勢が安定することから、こぎ胴への負荷軽減につながるというメリットもある。さらに7条刈りでありながら、部品の取り外しを一切行なわず大型トラックに積載できるサイズで設計しており、圃場間の移動もスムーズに行なえ、作業効率を高めることができるという。

 キャビンは従来モデルに比べて左右方向に8cmずつ拡張し、圧迫感を感じにくい室内を実現。前面ガラスも下側を大きく拡張したことで刈り取り作業が確認しやすくなっている。7型カラー液晶モニターを搭載し、刈り取り作業中でもさまざまな情報を表示して操作をサポートするという。

 同社では「DR7130は、今後の日本の農業を担うプロの収穫作業をもっと効率的にしたいという思いで開発した」としている。2023年2月から発売する。

クボタ初となる7条刈りのDR7130
DR7130はトラック搬送も行なえる
DR7130の性能
7型カラー液晶モニターに情報を表示

 また、本格4条刈りのDR472では、72馬力のエンジンや湿田対応力を向上させたクローラ、高ボリュームの稲わらや乾燥した麦わらも余裕をもって処理する大径カッタ刃の採用が特徴だ。大型コンバインさながらの作業能力を実現。メンテナンスしやすいフルオープンスタイルの設計も採用した。2023年1月から発売する。

 さらに、WORLDシリーズ初のフルモデルチェンジとなるWORLD WRN575では、エンジン回転の自動調整機能などを持つ独自の楽刈りレバーを採用したほか、ソフトターンや手こぎあんしん機構など搭載。シンプルおよび低価格を実現しており、低コスト農業を支援することができる。2023年1月から発売する。

 なお、これらの3機種のコンバインの新製品は、いずれも直接通信ユニットを搭載しており、KSASと連携して自動日誌作成などが行なえる。

コンバインのDR472
コンバインのDR575
WORLDシリーズ初のフルモデルチェンジとなるWORLD WRN575

 乗用半自動野菜移植機のベジライダーでは、フルモデルチェンジを行なったKP-202を発表した。従来機の機能、性能を維持しながら操作性を改善。最大の特徴は、オペレータが進行方向に向いた姿勢で座ることができ、安心安全に作業ができる点だ。また旋回時の負担を軽減。ハンドル押し下げ荷重を12kg減としていることから、楽に旋回ができる。自動モンローを採用しているため、傾斜地や凸凹の圃場でもうねに対して植え付け部を平行に自動キープできる。また、より幅広い作付け条件での作業も可能になっており、18cm~80cmまで1cmごとの株間調整も可能だ。

フルモデルチェンジを行なったKP-202

 一方、インプルメントとして、KvernelandのバキュームシーダーであるOPTIMA R4Nを発表した。大豆やコーンなどの高速播種、精密播種を望む大規模農家向けの製品で、信頼性の高いバキュームユニットにより、高速で、高精度の点播が可能だ。播種深度も一定に保つことができ、目揃いがよく、管理作業の効率化にもつなげることができる。種子の形状や大きさ、株間にあわせて選択できる播種板を搭載。どんな種子でも確実に1か所1粒の点播ができる。

KvernelandのバキュームシーダーであるOPTIMA R4N

 また、スタブルカルチベータであるEDR3000DCでは、収穫後の残渣物の混和、降雨後の圃場の乾燥促進作業に役立つもので、低馬力のトラクタでも利用ができるほか、サブソイラーのCLG2-3は、作土の下にある田畑の硬い層を破砕し、水みちをつけて排水をよくすることができるインプルメントであり、作土に溝を作ることで作物への酸素供給を増やし、土壌環境をよくすることができるという。

 そのほか、2023年の注目商品も紹介。自動運転が可能なアグリロボは、農家の人員不足の解消に貢献。全国で130台の販売実績を持つ田植機のNW8SAは、未熟練者でも高精度の田植作業を実現。トラクタのMR1000Aは、1人のオペレータで2台のトラクタを協調運転できるため、作業効率を2倍にできるとした。

 さらに、品質管理の課題については営農支援システムのKSASが解決できるとし、2022年に画面をリニューアルしたことでPCやスマホでの操作性を向上。高齢者でも簡単に操作ができるように進化したことを強調した。

自動運転を行なうアグリロボシリーズ
リニューアルしたKSASの画面

 同社では、「クボタはロボット技術とICT技術の組み合わせによって、スマート農業を実現。トータルソリューションカンパニーとして、農業に関わる人の課題解決に貢献するさまざまな商品やサービスを提供していく」と述べた。