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最高評価のファイブスター大賞はトヨタ「ヴォクシー/ノア」 2022年度自動車アセスメント表彰式開催
2023年5月24日 07:10
- 2023年5月23日 開催
国土交通省とNASVA(自動車事故対策機構)は5月23日、2022年度の自動車アセスメントの結果を公表し、東京都千代田区の東京国際フォーラムで表彰式を開催した。
1995年度から続けられている自動車アセスメントでは、一般購入者が自分では確認することが難しいクルマの安全性能について、一定条件下でテストを実施。テスト結果を公表することにより、ユーザーが安全なクルマを選びやすい環境を作ることに加え、自動車メーカーがより安全性の高いクルマを開発するよう促すことを目的としている。
2019年度までは「衝突安全性能」と「予防安全性能」をそれぞれ別に評価していたが、2020年度から安全性能について総合的に評価を行ない、より分かりやすい「自動車安全性能」という形式で情報提供している。
最新基準となる「自動車安全性能2022」では、予防安全性能の評価試験に「衝突被害軽減ブレーキ 対自転車性能試験」の項目を追加。予防安全性能(91点満点)、衝突安全性能(100点満点)、事故自動緊急通報装置(8点満点)の3分野で評価を行ない、満点は199点となる。
総合評価は★(63.89点未満)から★★★★★(158.23点以上)の5段階で、最高評価の★★★★★を獲得するためには予防安全性能と衝突安全性能の両方で最高評価となるAランクを取得し、事故自動緊急通報装置を備えていることが求められる。
2022年度は13モデル中7モデルが最高評価「ファイブスター賞」獲得
2022年度は乗用車7モデル、軽自動車6モデルの計13モデルで評価を実施。このうちトヨタ自動車「ヴォクシー/ノア」、トヨタ「カローラ クロス」、トヨタ「シエンタ」、スバル/トヨタ「ソルテラ/bz4X」、日産自動車「サクラ」、本田技研工業「ステップワゴン」、三菱自動車工業「eK クロス EV」の計7モデルが最高評価の★★★★★(ファイブスター)を獲得したモデルに贈られる「ファイブスター賞」を受賞した。
3モデルの受賞となったトヨタでは、代表してヴォクシー/ノアの開発を担当したトヨタ自動車 CVZ ZH1 チーフエンジニア 兼 トヨタ車体 領域長 黒柳輝治氏が表彰状と記念メダルを受け取り、「引き続き“お客さまの幸せの量産”のために自動車事故のない世の中を目指して取り組んでまいります」と受賞の喜びを語った。
ソルテラ/bZ4Xの受賞者としては、SUBARU 技術本部 技術開発部 主査 藤原誠二氏が登壇。表彰状と記念メダルを受け取り、「このクルマは当社初となるバッテリEVとしてゼロベースで開発してきました。スバルではEVであったとしてもお客さまの安全を第一に考え、こだわりを持ってクルマの開発をしてきました。その結果が、本日は目に見える形としてファイブスター賞の受賞につながり、お客さまの安心につなげることができたかと、あらためて開発陣ともどもうれしく感じでおります」と受賞の喜びを語った。
サクラの受賞者としては、サクラの商品企画を担当した日産自動車 商品企画本部 商品企画部 チーフ プロダクトスペシャリスト 角智彰氏が登壇して表彰状と記念メダルを受け取り、「日産 サクラは“軽の概念を変える軽”というコンセプトで開発しました。お客さまからは高い安全性、“360°セーフティ”に代表される充実した安全装備、EVならではの動力性能と静粛性、経済性などを高く評価いただき、昨年度は日本におけるEVの販売台数でナンバーワンを獲得いたしました。2022年5月の発売以降、お客さまからいただいた受注はすでに4万5000台を超えております。日産自動車は、安全はブランドの信頼性を表わす大事な要素であると考え、今後出てくる日産車も最新技術を採用し、最高レベルの安全性を確保するべく開発していく所存です」と受賞の喜びを語った。
ステップワゴンの開発責任者であり、受賞者として登壇した本田技研工業 四輪事業本部 四輪開発センター ICE完成車開発統括部 車両開発三部 エキスパートエンジニア 蟻坂篤史氏は、表彰状と記念メダルを受け取り「このステップワゴンは1996年に初代モデルがデビューして、それから“FFミニバン”の先駆者の1台として、長いあいだにたくさんのファミリー、そしてお客さまとともに生活を歩んできたクルマです。衝突安全性能は各社さまでも同様の考えだと思いますが、クルマを見ただけでは絶対に分からない性能です。しかしながらお客さまの命に関わる、安全に関わる絶対に手を抜いてはいけない部分だと考えています。だからこそ、すべてのメーカーごとに自分たちが持っている技術、アイデアを投入してクルマを作り上げていると思います。そのなかで今回、ファイブスター賞を受賞させていただいたことは光栄の至りであります」と受賞の喜びを語った。
eK クロス EVの受賞者として、このクルマの商品企画を担当した三菱自動車工業 商品戦略本部 チーフ プロダクトスペシャリスト 藤井康輔氏が登壇。表彰状と記念メダルを受け取り、「当社は2009年に初の量産型EVである『i-MiEV』を市場投入してから数多くの苦労を重ね、経験を積んできました。同じ軽EVであるeK クロス EVは、同じくEVの開発・販売に早い時期から取り組んでいた日産自動車さまと共同開発してきたクルマです。両者の安全に対するこだわり、そして強みを高い次元で融合できたことがこの結果につながったと思っています。今後も衝突事故の防止、そして被害の軽減に強いこだわりを持ちながら、安心・安全で快適なクルマ造りを行なっていきたいと思います」と受賞の喜びを語った。
199点中186.44点獲得のヴォクシー/ノアがファイブスター大賞
このほか、ファイブスター賞の対象内で評価年度の最高得点となったモデルに贈られる「ファイブスター大賞」はヴォクシー/ノアが受賞。ヴォクシー/はノア予防安全性能で91.00/91点(100%)、衝突安全性能で87.44/100点(87%)、事故自動緊急通報装置で8/8点(100%)と評価され、合計で186.44/199点(93%)を獲得している。
発表後に実施された「ファイブスター大賞 受賞車技術プレゼンテーション」では、ヴォクシー/ノアの開発担当者である黒柳氏が「自動車事故ゼロ社会に向けてトヨタが進めている安全・安心の取り組み」について講演を行なった。
黒柳氏ははじめに、受賞車両であるヴォクシー/ノアについて解説。新型ヴォクシー/ノアの開発コンセプトは家族の楽しい時間を演出する「Easy&Energy Mover」であり、「乗って快適」「使って便利」「乗って安心」「誇りを持てるスタイル」という4点をポイントに設定して開発に取り組んだと言う。
トヨタでは「統合安全コンセプト」を掲げて安全・安心に向けた取り組みを推進。駐車場から予防安全、衝突安全、事故後の救助まで各シーンで支援を行なって安全性を高めている。
具体策としては、まず「運転のしやすさ」を追求。新型ヴォクシー/ノアでも「TNGAプラットフォーム」の採用で誰が座っても運転しやすいシートポジションを備え、操作しやすいコントロール性能を実現している。また、フロントにあるAピラーをスリム化して視界を広げ、対向車、歩行者などを確認しやすくしており、「家族が増えたことで初めてミニバンを運転するようになった人でも、乗った瞬間から運転しやすいと感じてもらえることは安全運転にとって大切な要素になると考えています」と説明した。
ADAS(先進安全運転システム)を利用する予防安全性能では、単眼カメラとミリ派レーダーを活用する最新の「Toyota Safety Sense」を新型ヴォクシー/ノアで採用。「交差点衝突回避支援」「フロントクロストラフィックアラート」では自転車に加えてクルマ、バイクなどとの出会い頭事故に対応。さらに「プロアクティブドライビングアシスト」では車両が周辺状況のリスクを先読み。緩やかな減速や操舵といった支援を行なって運転をサポート。「私自身もこのシステムの作動によって潜在的なリスクに気付かされ、安心して運転できると感じています」とアピールした。
これに加えてトヨタではクルマのコネクティッド化に取り組んでおり、これを利用した「ソフトウェアアップデート」も採用。新たに開発した機能を配信することで、クルマを購入したあとでもOTA(Over-the-Air)で最新の予防安全システムにアップデートできるようにしているという。
万が一の事故発生に対応する衝突安全性能では、高張力鋼板の採用拡大、高効率なエネルギー吸収と荷重分散構造といったボディ構造により、衝突時の安全性と軽量化、フロントピラーのスリム化などの要素を両立。これまでに培ってきた技術により、プラットフォームをミニバン専用に進化させてトップレベルの安全性能を実現している。
歩行者保護の面では、頭部や脚部に対する衝撃を緩和する「歩行者障害軽減ボディ」を採用。ボディの各部に衝撃吸収構造を備えたものになっている。
このほか、コネクティッド化は事故自動緊急通報装置にも利用されており、「ヘルプネット」は事故発生時に自動通報を実施。オペレーターの対応からドクターヘリの早期出動判断などを行なう「D-Call Net」など、事故の被害状況に合わせた対応が可能になっている。
最後に黒柳氏は、今回のファイブスター大賞受賞を励みとして今後も安全なクルマ造りを進め、引き続き交通事故死傷者ゼロの実現に向けて取り組んでいくとしつつ、このためには安全性を高めたクルマはもちろんのこと、ドライバーや歩行者の安全意識向上、事故が起きにくい道路環境の整備も重要だと強調。クルマ、人、交通環境の三位一体になった取り組みが不可欠だと締めくくった。
「より安全な自動車の普及に努めていく」と国土交通省 野津次長
表彰式の冒頭であいさつした国土交通省 自動車局 次長 野津真生氏は、日本国内では交通事故の発生件数が近年減少傾向となっているが、2022年には交通事故で2610人が死亡していると説明。
これは依然として多くの人が被害に遭っている状況に変わりはないと述べ、こうした状況を踏まえて策定された「第11次交通安全基本計画」では、「世界一安全な道路交通の実現」を目標に掲げ、2025年までに年間で発生する交通事故による死亡者数を2000人以下にするといった目標を目指し、国交省でも目標達成に向けて車両の安全性確保といった対策を進めているという。
国交省としては、今後も事故の発生状況や先進安全技術の開発動向などを踏まえ、自動車アセスメントを充実させていくことなどによって先進安全技術の開発や普及を促進して、より安全な自動車の普及に努めていくと意気込みを述べた。