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NASVA、「夜間対歩行者被害軽減ブレーキ」デモ試験初公開。「カローラ スポーツ」で実施

「フォレスター」で「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」のデモも披露

2018年11月29日 開催

初公開されたデモ試験の様子

 国土交通省とNASVA(自動車事故対策機構)は、クルマの安全性能評価などを公表することで、新車を購入するユーザーが安全性の高いクルマを選びやすい環境を整備するとともに、自動車メーカーに対して安全な製品の開発を促している。

 このために、安全な自動車の普及促進を図る「JNCAP(自動車アセスメント)」を実施しているが、2018年度は評価の項目に「対歩行者被害軽減ブレーキ(夜間照明あり)」と「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」などの安全性能評価を新たに追加した。

 この評価について、11月29日に2018年度前期の評価結果を発表。それに合わせて日本自動車研究所 城里テストセンターにて「平成30年度前期発表会」と「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」及び「対歩行者被害軽減ブレーキ(夜間照明あり)」の公開デモンストレーションが行なわれた。

国土交通省 自動車局技術政策課長 江坂行弘氏

 当日は主催者代表の国土交通省 自動車局技術政策課長 江坂行弘氏による挨拶から始まった。

 江坂氏は「日本の交通事故件数は近年減少傾向にあります。今年も上半期においては減少傾向が続いています。しかしながら、依然として厳しい状況にあることは変わりありません。政府では平成32年までに交通事故による死者数を2500人以下にするという目標を掲げています。また、高齢者による事故対策では昨年から安全運転サポートカー(サポカー)の普及啓発に努めています」。

「この取り組みでは、被害軽減ブレーキの新車乗用車への装着率を2020年までに9割以上にするという目標が設定されています。国土交通省としてもこの目標達成に向けて、歩行者事故や高齢運転者の事故などの事故防止に役立つ先進安全技術の開発、普及を最優先で取り組んでいます。その中でこの自動車アセスメントは中核的な役割を担っているところで、日本のクルマ社会に広く浸透してきていると考えておりますが、今後も自動車の安全性能を公表することで、自動車ユーザーの方々が安全なクルマを選びやすい環境を整えていけるようしっかり取り組んでいきます」と語った。

自動車事故対策機構(NASVA)理事長 濱隆司氏

 続いてNASVAの理事長 濱隆司氏が挨拶に立ち、NASVAの仕事について紹介を行なった。

 濱氏によるとNASVAの仕事には3つの柱があり、1つはクルマのユーザーを自動車事故から守るという観点から行なっている自動車アセスメント業務。そして次は自動車事故被害者の援護業務だ。

 交通事故の件数は減少しているが、実は交通事故で重度の障害を負う人は統計を取り始めてからほぼ変わりなく、毎年1800人前後という。NASVAではこの重度の障害を負った人の治療看護を行なう専門の施設を設置、運営をしている。また、在宅の被害者、その家族を対象とした介護料の支給も行なっている。

 もう1つは安全指導業務。これは自動車事故を防ぐという観点から行なっていて、事業用自動車の運転者を対象とした適性診断業務、運行管理者を対象とした指導講習、さらに運送事業者の経営者を対象に運輸安全マネージメント講習がある。これらの業務は北海道から沖縄までの50か所にあるNASVA拠点を通じて行なっているという。

自動車事故対策機構(NASVA)の業務について説明するスライド
2018年度から追加された新たな評価項目。ここには書いていないが、EV(電気自動車)やハイブリッドカーの感電保護性能などもあり、評価項目は全部で15あるとのこと

 さて、ここからは2018年度前期の自動車アセスメント評価の結果報告となる。まずは概要から紹介していこう。

 2018年度前期分では予防安全性能評価で10車種、衝突安全性能評価で4車種の評価結果を公表する。とくに注目の点は、予防安全性能評価の10車種すべてに、車両のみならず歩行者にも対応する被害軽減ブレーキが搭載されていることで、うち6車種には2018年度から評価試験が開始された夜間でも被害軽減ブレーキが機能する仕様となっていること。そしてこれに該当する車種は全車、評価において最高ランクを獲得している点にも注目したい。

 ちなみに、ペダル踏み間違い時加速抑制装置の評価についてはNASVAが世界で初めて行なったとのことで、夜間の被害軽減ブレーキの評価試験も日本では初の実施となっている。

2018年度から新たに加わったペダル踏み間違い時加速抑制装置性能
ペダル踏み間違い時加速抑制装置性能ついて説明するスライド。1つ目はペダル踏み間違い時加速抑制装置性能(前進)。試験方法は停車状態からアクセルを全開にする。そしてぶつからないか、もしくはぶつかっても減速していたかを評価する
同じくペダル踏み間違い時加速抑制装置性能だが、こちらは後退時。評価方法は前進の時と同じだ
2018年度から追加された評価項目の2つ目は夜間歩行者衝突被害軽減制動制御装置性能
夜間歩行者衝突被害軽減制動制御装置性能の評価は2パターン。1つは歩行者が出てくる方向に対して遮蔽物がない状態。道路には街灯があるが、実際に見ると暗い印象。試験時の速度は60km/h
もう1つはライトを付けた対向車が影になって歩行者の渡り始めが確認できない状態。道路の明るさは同じ。速度は60km/h
2018年度から追加された評価項目の3つ目は高機能前照灯性能。いわゆるオートハイビームの性能を評価するもの。試験は行なわず書類による評価となる
2018年度から衝突安全性能評価の指標において配点が変更されている。従来は208点満点だったが100点に変更。そのため各項目の配点が減っている
また、項目が増えた予防安全性能評価の標示も変わった。従来は79点満点だったところが126点満点になった。これにより、評価の標示も従来は「ASV++」が最高だったが、獲得点数86点越えのクルマには「ASV+++」が与えられるようになった
衝突安全性能評価の結果表。三菱自動車工業「エクリプス クロス」、トヨタ自動車「カムリ」/ダイハツ工業「アルティス」、スズキ「クロスビー」、本田技研工業「オデッセイ」がファイブスターとなった
予防安全性能評価の結果。スズキ「ソリオ」「ソリオ バンディット」、三菱自動車「デリカD:2」「デリカD:2 カスタム」、スバル「フォレスター」、トヨタ「カローラ スポーツ」、ホンダ「N-VAN +STYLE FUN・Honda SENSING」「N-VAN L・Honda SENSING」、マツダ「アテンザ」、三菱自動車「eKスペース カスタム」「eKスペース」、日産自動車「デイズ ルークス ハイウェイスター」「デイズ ルークス」が最高評価の「ASV+++」となった

 今回の自動車アセスメント評価結果発表会では、ペダル踏み間違い時加速抑制装置と対歩行者被害軽減ブレーキ(夜間街灯あり)のデモンストレーションも行なわれたので、その模様も紹介しよう。

 最初はペダル踏み間違い時加速抑制装置のデモから。試験棟内にはテスト車のスバル「フォレスター」とターゲットが置かれている。このターゲットに向かって試験車は前と後ろそれぞれで近距離からアクセルを全開にする。そして自動ブレーキが作動して衝突しないことを実証した。

 デモンストレーションの様子と最後に行なわれた試乗については写真にて紹介する、また、各車の試験時の映像はJNCAPのWebサイトで公開されているので、興味のある方はそちらも見ていただきたい。

発表会後に行なわれたデモンストレーション。こちらはペダル踏み間違い時加速抑制装置。使用するのはスバル フォレスター
ターゲットはビニールシートにクルマの車体を印刷したものだが、窓の中のシートなども描かれていてそれなりにリアル
デモの様子。前進、後退ともにぶつかることなくクリアした。この機能が高評価なら、アクセルとブレーキの踏み間違え事故は高い確率で防げそうだ
試験車の装備。ドライバーは乗車するが、人間が運転するのはクルマの位置を決めたりする時だけで、試験開始になるとPCに入っている試験プログラムに沿って「アクセルロボット」がペダルを操作。ドライバーは何も操作しない
ジョイスティックはPC操作用。奥のモニターはフロントに取り付けたカメラの映像確認用
シートにフレームを付けてしっかりとベースを作った後にアクセルロボットを固定する。試験用のステアリングロボットもあるが、この試験では使用しない
ペダル側の作りはこうなっている。試験スタートと同時に全開になるまで一気に素早く踏み込む
速度や車両の位置を正確に記録するため、計5個のGPSアンテナを装備する
ブレーキの性能評価なので、4輪のブレーキにはテスト用の温度域が設定されている。本来のテストではブレーキの温度を65℃~100℃に上げて行なう
テストコースに移動して、対歩行者被害軽減ブレーキ(夜間街灯あり)デモンストレーションを実施。写真のようにヘッドライトを点灯した対向車がいる状態で40km/hで進行。対向車の影から歩いてくるダミーと衝突せずに止まれるかをチェックする。試験車はトヨタ カローラ スポーツ
道路の明るさは15ルクス程度とアナウンスされた。デジタルカメラでもISOを32000ほどに上げないと動くものは撮れない明るさ
対向車を過ぎたあたりからブレーキが掛かっている。そして歩行者の前で停車しているのでダミーは歩き続ける。このブレーキはクルマのシステムによるもの
試験車の装備。計測の正確さはもちろんのこと、繰り返し行なうテストなので高い再現性も必要。そこでステアリングロボットも装備され、走行ラインはGPSを使って毎回正確に同じ位置を走るようになっている。また、決められた速度で走るためのアクセル操作はアクセルロボットが行なう。加速度やヨーレートなども計測している
リアシートにはGPSの機器や記録用の機材が積まれていた
ラゲッジスペースにはロボットの動作用の装置やバッテリーが積まれている。重量は機材とドライバー含めて200kg以内に収める決まりだ
このテストもブレーキ温度設定がある。こちらも温度設定は65℃~100℃。ここから外れた場合は合わせてからテストを行なう。試験車は新車なので、テストの前にはタイヤの慣らし走行を行なっていて、ブレーキも200回くらい効かせてあたりを付ける。空気圧は車両ごとにメーカーが設定している指定空気圧に合わせる
デモンストレーションの後は同乗での体験走行も行なわれたので、用意されていたホンダのN-VANに乗車した
試乗は人が運転する方法で速度は35km/hほど。ドライバーを含めて4名乗車と車重は重くなっていたが、ダミーに当たることなく停車した
試乗車は他にも用意されており、こちらはスズキ ソリオ
スバル フォレスター
トヨタ カローラ スポーツ
マツダ アテンザ
三菱自動車 eKスペース カスタム