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NASVA、2016年度自動車アセスメント結果発表会。スバル「インプレッサ」「XV」が過去最高の199.7点で特別賞受賞

「第3者評価で最高評価をいただき、我々の開発は間違っていなかった」

2017年5月29日 実施

3年ぶりに「衝突安全性能評価大賞」が選出された2016年度の自動車アセスメント結果発表会

 国土交通省とNASVA(自動車事故対策機構)は5月29日、平成28年度(2016年度)の自動車アセスメントの結果を公表。最高評価となる5つ星を獲得した車種に与えられる「衝突安全性能評価 ファイブスター賞」の表彰式を、東京都千代田区の東京国際フォーラムで実施した。

 自動車アセスメントは、ユーザーがクルマを購入するときにより安全なクルマを選択する指針になり、自動車メーカーがモデルチェンジの際に安全性能を向上させるといった、安全なクルマが普及するサイクルを作成することを目的として1995年度から実施。衝突試験などによる乗員保護性能、車両にテスト用のダミーをぶつけたときの加害性などによる歩行者保護性能、シートベルトの着用警報装置など、自動車の総合的な安全性能を評価している。現在の「安全性能総合評価」は、衝突安全が100点、歩行者保護が100点、シートベルトリマインダーが8点を合計した208点が満点となる。

 2016年度は軽自動車2車種、乗用車7車種の計9車種で評価が行なわれ、日産自動車「セレナ(スズキ ランディ)」、本田技研工業「フリード」、トヨタ自動車「アルファード/ヴェルファイア」「プリウス/プリウス PHV」、ダイハツ工業「ブーン(サイドカーテンエアバッグ付き)[トヨタ パッソ(サイドカーテンエアバッグ付き)]」、スバル「インプレッサ/XV」の6車種が最高評価のファイブスター賞を獲得。

 最高得点はインプレッサ/XVの199.7点でこれまでの最高得点の189.7点を10点上まわり、3年ぶりに「衝突安全性能評価大賞」を受賞した。また、インプレッサ/XVは歩行者への衝突時に歩行者を保護する「歩行者保護エアバッグ」を自動車アセスメントにおいて初めて搭載し評価を受けたことから、インプレッサ/XVは「特筆すべき安全装置を初めて備えた車種」として「衝突安全性能評価特別賞」も受賞した。

「セレナ」
セレナ(ランディ)の開発に携わった日産自動車株式会社 日本戦略企画本部 日本商品企画部 リージョナル プロダクト マネージャー 遠藤智実氏は「セレナは家族の幸せと家族の生活を豊かにするということで開発してきました。予防安全にも力を入れて、ファイブスターという賞もいただいて非常に嬉しい反面、開発に携わる者としての責任、責務も感じています。皆さまからの声をいただいて、より世の中のためになるクルマを開発してまいる所存です」とコメント
「フリード」
フリードの開発に携わった株式会社本田技術研究所 四輪R&Dセンター LPL室 主任研究員 田辺正氏は「フリードはホンダらしいユニークな発想の元、コンパクトミニバンというカテゴリーを市場に根付かせたクルマだと思っています。2代目フリードはより多くのお客さまに、移動の喜びと豊かな暮らしの喜びを提供するために開発してまいりました。ホンダはこれからも喜びを提供する商品造りと、事故ゼロのモビリティ社会の実現を目指して邁進する所存でございます」とコメント
「ヴェルファイア」
アルファード/ヴェルファイアの開発に携わったトヨタ自動車株式会社CV Company CV製品企画 ZH 主査 吉岡憲一氏は「大切な命を乗せるクルマですので、製造メーカーとしてしっかりこのクルマの性能を世界基準に引き上げて、さらなるいいクルマづくりに邁進してきたいと思っています」とコメント
「パッソ」
ブーン(パッソ)の開発に携わったダイハツ工業株式会社 DNGAユニット 車両開発本部 製品企画部 チーフエンジニア 松本隆之氏は「小さなクルマを造っておりますが、今回ファイブスター賞をいただけたことを大変嬉しく思っております。今後もよりたくさんのお客さまに安心してお乗りいただけるクルマを提供できるように進めてまいります」とコメント
「プリウス PHV」
プリウス/プリウス PHVの開発に携わったトヨタ自動車株式会社 Mid-size Vehicle Company MS製品企画 ZF主査 金子將一氏は「プリウスおよびプリウス PHVは環境車として広く日本で走っているわけではございますが、環境のみならず安全性能についても開発陣全員が高い目標を掲げて開発をしてまいりました。今後は国土交通省さまが掲げる交通死亡者数2500名以下を目指して、自動車を製造する者の1人として技術開発に邁進してまいります」とコメント
「XV」
インプレッサ/XVの開発に携わった株式会社スバル 商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 井上正彦氏は「トップレベルの安全性というのが自社評価のみならず、第3者評価で最高評価をいただいたということで、我々の開発が間違ってなかったんだと、うまく行っているんだということを、みんなで分かち合いたいと思います。これを糧に、よりいっそう安全なクルマの開発に邁進していきたいと思います」とコメント
衝突安全性能評価大賞を受賞した株式会社スバルの井上氏は「再び井上です。皆さま、大賞ありがとうございます」と登場。「インプレッサからスバルグローバルプラットフォームという13年ぶりにプラットフォームを刷新して開発し、搭載してきたことでこの賞に繋がったかと思います。今回は200点を超えることを狙っていて届かなかったですが、過去最高得点ということでこの賞をいただきました。開発はまだ終わったわけじゃないです。引き続きどんどん進化していかなければいけません。交通死亡事故ゼロの社会に向けてこれからも着実に課題をクリアして、お客さまに笑顔を届けられるようにスバルの安心と愉しさを届けていきたいと思います」とコメント
歩行者保護エアバッグの開発に携わった株式会社スバル 第一技術本部 車両研究実験第2部 部長 古川寿也氏は「創設以来初の特別賞をいただきましてありがとうございます。自動車アセスメントにおいて、歩行者保護エアバッグを試験できちっと評価していただき、性能改善効果を数字で示していただいたことは、いざというときにお客さまが不幸な事態に至らないようにするというだけではなく、日頃からクルマを運転するときに安心感を持っていただけるということだと思っています。歩行者エアバッグをせっかくつけたので、人の命を救うことに貢献していただきたいのですが、歩行者保護エアバッグが開くような事態そのものがない方が好ましいので、お客さまがなるべく歩行者保護エアバッグを見ずに済ませられればいいなぁというふうに願っています」とコメント
自動車事故対策機構 理事長の濱隆司氏(写真左)より特別賞の大型メダルを手渡された株式会社スバルの井上氏(写真右)
自動車事故対策機構 理事長の濱氏(写真左)より、ファイブスター賞の大型メダルを手渡された株式会社スバルの古川氏(写真右)

「予防安全装置に頼れば安全運転ができるというものではない」

 表彰式ではファイブスター賞と衝突安全性能評価大賞、特別賞の受賞車両の発表と表彰状やトロフィーなどの授与のほか、国土交通省とNASVAの担当者から自動車アセスメントの概要や社会的意義などについて解説が行なわれた。

国土交通省 自動車局 次長 島雅之氏

 はじめに登壇した国土交通省 自動車局 次長の島雅之氏は日本国内における交通事故の現状について触れ、「平成28年(2016年)は死者が3904名、負傷者は61万7931名で、昭和24年以来の3000人台になったものの、事故死者数の約35%を歩行者が占めていて、まだ削減できる取り組むべき分野が残っていると考えている。自動車アセスメントにおいては平成28年度から予防安全技術の評価対象に対歩行者の被害軽減ブレーキを追加するとともに、夜間における対歩行者の被害軽減ブレーキ評価を平成30年度に導入すべく検討を進めるなど、歩行者事故の防止に役立つ技術を搭載した自動車のいっそうの普及に取り組んで行きたいと考えている」と述べたほか、高齢運転者による交通事故対策の一環として安全運転サポート車の普及促進を図るため「ペダル踏み間違い時加速抑制装置の評価を平成30年度から自動車アセスメントに導入する」と話した。

独立行政法人自動車事故対策機構 理事長 濱隆司氏

 続いて登壇した自動車事故対策機構 理事長の濱隆司氏は、NASVAの事業である自動車事故により重度の障害を負った方に対する「被害者援護」や事業用自動車の使用者に対する「安全指導」などについて話したのち、「自動車アセスメントはクルマそのものが、クルマに乗っている人、あるいは歩行者をどれだけ事故から守れるかということを評価するもの。NASVAでは多くの方々にこの自動車アセスメントを活用してより安全なクルマを選んでいただきたいと考えている。今後において、各自動車メーカーの努力により、衝突安全性能においてさらに高い評価を受けるクルマが開発されることを期待している」と述べ、「事故そのものは運転する人が防ぐということが基本であるということ。将来的に本格的な自動運転の時代が来れば話が変わるかもしれないが、今回評価を行なった歩行者対応の被害軽減ブレーキなどの予防安全装置は、万が一運転する人が気づかないで歩行者と衝突しそうになった場合などに自動的に危険を察知してブレーキをかけて事故を防ぐ、もしくは被害を軽減するといったもので、この装置に頼れば安全運転ができるというものではない」と注意喚起を行なった。

 最後に、衝突安全性能評価大賞を受賞したスバルの井上氏が、インプレッサ/XVに搭載した安全技術についてプレゼンテーションを行なった。こちらは弊誌のスバル、衝突安全性能評価で過去最高点の新型「XV」64km/hオフセット衝突試験を公開でより詳しく紹介しているので、そちらを参照いただきたい。

技術プレゼンテーションを行なう株式会社スバルの井上氏
プレゼンテーションではスバルの安全への取り組みについてを紹介。スバルでは「モノを造る会社から笑顔を作る会社へ」ということで全従業員でクルマを通した笑顔作りに取り組んでいる
地上広場ではインプレッサの歩行者保護エアバッグの展開デモンストレーションを実施。エアバッグの展開には大きな音が伴うため、東京駅が近いことから特別にガスボンベを使用してエアバッグの展開デモンストレーションを行なった。通常はおよそ70ミリ秒で展開するが、今回は約2秒ほどかけてエアバッグが開く様子をじっくりと見ることができた
オフセット衝突試験に利用されたインプレッサ
側面衝突試験に利用されたプリウス
フルフラップ衝突試験に利用されたヴェルファイア
フルフラップ衝突試験に利用されたセレナ
オフセット衝突試験に利用されたフリード
側面衝突試験に利用されたパッソ
会場にはISO FIXタイプのチャイルドシートも製品展示された。こちらはタカタの「takata04-i fix」
アップリカ・チルドレンズプロダクツの「グレコ・G-FIX」
コンビの「クルムーヴ/クルムーヴ スマート ISO FIX」