ニュース

ル・マン24時間100周年、8日深夜にハイパーボール ディフェンディングチャンピオンの平川亮選手に聞く

TOYOTA GAZOO Racing 7号車ドライバー 平川亮選手、2022年のル・マンウィナー

ル・マン24時間にディフェンディングチャンピオンとして挑む平川選手

 ル・マン24時間100周年のポールポジションを決めるハイパーポールが、日本時間の8日深夜(9日3時)に始まる。ハイパーポールは、前日の予選セッションで16台のうち上位8台が進出可能。予選セッションでは、フェラーリが1-2位を、TOYOTA GAZOO Racingが3-4位を獲得した。

 今回のル・マンで注目が集まっているのが、ル・マン直前の5月31日に行なわれたWEC CommitteeによるハイパーカーカテゴリのBoP(Balance of Performance)がどう影響するのかということ。

WEC Committee Balance of Performance of the Hypercar category

・重量

CADILLAC V-Series.R 1035kg → +11kg → 1046kg
FERRARI 499P 1040kg → +24kg → 1064kg
GLICKENHAUS 007 1030kg → ±0kg → 1030kg
PEUGEOT 9X8 1042kg → ±0kg → 1042kg
PORSCHE 963 1045kg → +3kg → 1048kg
TOYOTA GR010 - Hybrid 1043kg → +37kg → 1080kg
VANWALL Vandervell 1030kg → ±0kg → 1030kg

 キャデラックにはスティントあたり最大エネルギー量が+1MJ、フェラーリには+2MJ、トヨタには+4MJと、ハイブリッド用のエネルギーが用意されたものの、トヨタにとってポルシェより軽かった車重がハイパーカークラスで最も重くなるなど、重量面で厳しくなっている。

 この点の印象を、テストデーでGR010をドライブした平川亮選手に聞いてみた。平川選手は8号車 (セバスチャン・ブエミ/ブレンドン・ハートレー/平川亮)を担当し、2022年のル・マン24時間を制覇。ハイパーカークラス挑戦初年度で、ル・マンウィナーとなった。

 平川選手の印象は。予選セッション前のテストデー時のため、まだ路面ができておらず、8日深夜に行なわれるハイパーボールでの戦略とはすでに異なっているかもしれない。

 いずれにしろ、レース直前で37kgも増えてしまったのはトヨタにとって厳しい状況であり、テストデーにおいてもその影響が出ていたようだ。

 平川選手は、路面がまだできていない状況での印象と前置きしつつ、37kg増の影響について確かにあるという。「タイヤの影響が大きいかなと思います。今年はウォームアップがしやすいタイヤに変わっていて、それを今回、タイヤウォーマーに入れたりして。思ったよりもタイヤが落ちるかなという雰囲気があります。ちょっと路温が高いので、それもあるかもしれませんが。タイヤから来るフィーリングが去年と違うかな。プッシュしすぎると、タイヤがすぐギブアップするイメージがあるので。ル・マンは3スティントしますけど、去年はタイヤのマネジメントが必要なかった。(今年の)ル・マンはそこをしなければいけないような印象がありました」(平川選手)と語り、主にタイヤ面での影響が大きそうだとのこと。

 テストデー後の時点では、3スティント、もしくは4スティントになるとのことだったが、タイヤマネジメントが必要になるのは確かなようだ。

 そして、何よりも大切だと語っていたのは、ライバルよりも予選で前に行くこと。予選で前に行き、フロントローを7号車と8号車で占めることでレースを支配できる。2台がフロントローを占めれば、2台でクルマのトゥと呼ばれる空力効果を使って、より容易に高速走行ができる。

 1周1周は小さな積み重ねかもしれないが、24時間では大きな差になるかもしれない。

 今回、平川選手はディフェンディングチャンピオンとしてル・マン24時間に挑むが、2022年のときよりも視野が広がっているという。「去年のテストデーだと、このクルマで初めてル・マンを走るので、まずクルマに慣れなければいけなかった。今年は1周目から全開で走って、クルマの限界をすぐに見極められるようになっています。去年は自分のために時間を割いてもらっている部分が結構多かったのですが、(今は)自分が走ることでフィードバックを伝えてクルマをよくできる。自分としてもコースに慣れるということがないので、クルマのことをもっと考えられるし、このクルマはいろいろなシステムがあって、それをうまく使いこなさいと、いろいろな条件で速く走ることができない。考えられることが増えて、自分としてもちょっと余裕は生まれている。いろいろなル・マンのルールがあり、スローゾーンがあったり、セーフティカーのルールがあったり。そういったことを含めて、1年やったことを含めて、いろいろなことを考えられるようになりました」(平川選手)と語り、チームの一員として、マシン能力の向上に寄与できていることをよろこんでいた。

 今回の突然のBoP変更はトヨタにとって厳しい状況となっているが、ほかにも増加しているメーカーにとっても大変な状況。予選セッションであまりタイムのよくなかったポルシェやキャディラックの巻き返しもあるかもしれず、ハイパーポールでチームの実力が見えてくるだろう。

 平川選手によるとGR010 HYBRIDの信頼性は高く、そこを心配してはいないという。視野の広がった平川選手の能力もそこには加わっている。なお、チーム側から出された平川選手の予選セッション後のコメントも掲載しておく。

平川亮(8号車 ドライバー)

 良い一日でした。レースウィークが本当にスタートしたという実感があります。ル・マンではいつもコース上の混雑や様々なアクシデントに見舞われるため、クリーンラップを得るのは容易ではありません。私も練習走行時に直面しました。それ以外、クルマのセットアップも順調に進んでおり、これまでのところ、進捗状況には満足しています。まだ車両のバランス面で調整は必要ですが、この段階では普通のことです。予選は非常に接近したタイムで、見ていてエキサイティングでした。ブレンドンがいいラップをマークしてくれましたし、ハイパーポールが楽しみです。