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コスモの脱炭素施策説明会 すでに7000台の受注を獲得したというリース向け商用EV「ASF 2.0」とはどんなクルマなのか?

2023年10月4日 実施

コスモが導入する商用EV「ASF 2.0」

脱炭素に向けて実施するさまざまな取り組みの1つである商用EV

 コスモエネルギーホールディングスの子会社で、石油製品販売やカーリースなどを取り扱うコスモ石油マーケティングは10月4日、「コスモの脱炭素施策」に関する説明会を実施。同時に5月に取り扱いを発表したリース向け商用EV(電気自動車)「ASF 2.0」のお披露目と試乗会を行なった。

 コスモ石油マーケティングの次世代事業部長である大高敬世氏は、「脱炭素の取り組みは、どちらかというと決められたスクエアの中で限られたピースを埋めていくという単純な作業ではなく、奥行きも横も縦も長さも分からない、無制限の中で終わりのない挑戦を続けている感じで、まだ発展途上ではありますが、コスモのやってること、やろうとしていることに興味と期待を持っていただきたい」とあいさつ。

コスモ石油マーケティング 次世代事業部長 大高敬世氏

 コスモエネルギーグループは、2018年の第6次連結中期経営計画より“オイル(石油)を大事にしながら、新しいことに踏み出すぞ”という思いを込め、「Oil&New」というスローガンを提唱。そして2023年~2025年に向けた第7次連結中期経営計画では、さらに「~Next Stage~」というキーワードを追加。これまで仕込んできたさまざまなものを、これからの3年間をかけて実装してくことを目標に掲げている。

コスモエネルギーグループの価値創造モデル

 コスモ石油マーケティングの取締役常務執行役員の岡田正氏によると、「2030年に向けてコスモは、未来を変えるエネルギー、そして社会を支えるエネルギー、これを供給し続けたいという思いがとても強いです。これはグリーン電力かもしれないし、さまざまな違うエネルギーかもしれないです。また、新しいモビリティサービスを提供するといった使命も帯びていると強く感じています。クリーンなエネルギー製品サービスの提供をもっとお客さまに便利な形で提供するということに対して真摯に向き合い、その結果エネルギー安定供給、脱炭素社会に貢献できると思いますし、われわれ自身が変革できることにもつながるんじゃないかなと思っています」と企業としての方向性を紹介した。

コスモ石油マーケティングの取締役常務執行役員の岡田正氏
コスモのグリーン電力サプライチェーン

 また、コスモは2010年から「Myカーリース」というサービスを展開していて、これまでに10万台以上の実績があるが、85%は一般ユーザーで商用は15%程度だったという。しかしEVに関しては、一般ユーザーよりも早急に脱炭素への取り組みに着手したい国や省庁、自治体、企業のほうがニーズがあると判断し、商用EV「ASF 2.0」の取り扱いを決定。同時にコスモは発電といった電力事業にもすでに進出しているので、ガソリンスタンドというユーザーとつながるSS(サービスステーション)店舗から法人とのつながりも創出し、EV販売を伸ばすことで脱炭素や省エネといった仕組みを完成させたいとしている。

コスモが目指す脱炭素モデル
コスモのモビリティサービスとEV

 さらに商用EVのリースについて岡田氏は、「充電器の設置や補助金の申請、任意保険の登録だけでなく、日々の整備についても、すべてコスモがワンストップで提供できる環境を目指す」といい、全国に840店舗あるSSの中から、各都道府県に1~3店舗、計80店舗ほどをEV整備の可能な店舗にするという。

 リース金額については、EV向け補助金を前提とした実用的なパッケージ「ゼロカボプラン」を設定。黒ナンバー(商用軽自動車)であれば、1か月に1000~1200kmの使用で2.5~2.8万円。黄ナンバーの場合は3.3~3.6万円くらいを見込むとしている。

ワンストップでサービスを提供する「ゼロカボプラン」の概要

すでに7000台の受注を獲得した商用EV「ASF 2.0」とは

 ASF 2.0は、2020年にAnd・Smart・Futureの頭文字を組み合わせて起業したベンチャー企業ASFが企画・開発・製造(工場は中国)したEVで、ドライバーにとっての使いやすさと安全性、環境への配慮を徹底的に追求した商用専用モデル。30kWhのリン酸鉄リチウムバッテリを搭載し、航続距離は209㎞。

 荷室は1690×1343×1230mm(室長×室幅×室高)で、荷室床面地上高も660mmと、荷物の整理がしやすく、大きくて重たい荷物の出し入れもスムーズな作業環境を実現。また、夜間の作業でも荷室を明るく照らす大型LED照明を完備するほか、最小回転半径も4.4mと取りまわしのよさも特徴としている。

 走行面に関しても、自走事故防止システム、誤発進警報機能(前方・後方)、車線逸脱警報機能、衝突被害軽減ブレーキ(前方・後方)、前方車両発進通知機能、坂道発進サポート機能など、先進運転支援システムも多数装備する。

ASF 2.0の乗車定員は2名
ボディサイズは3395×1475×1950mm(全長×全幅×全高)
車両重量は1130kg
ホイールベースは2430mm
最大積載量は350kg
充電ポートはフロントグリルの中央に配置されている

 説明会の前に試乗を済ませたというモータージャーナリストの五味康隆氏は、「コスモさんのMyカーリースは昔からいいサービスだと注目していましたが、今回の商用EVもすでに佐川急便さんが7000台納入を決定したと聞いていますので、かなりインパクトがありますよ」とコメント。

モータージャーナリストの五味康隆氏がゲストとして登壇した

 また、「本当にドライバーのためにいろいろと考えて作り込まれているのがいいですね。実際に乗ってみたところ、静かなのは当然ですが、エンジンからの振動がないのがうれしい。ドライバーは1日中乗っている訳ですから、振動がないだけでもかなり体への負担は軽減されます。また、ギヤもないので走りがスムーズ。荷崩れとかも起きにくいと思います。それと重いバッテリを床下に収めているので、背が高い割に走りが安定しているのもEV全般の特徴の1つといえるでしょう。最小回転半径4.4mもいいですね。実際にすごく小回りがききますし、じわじわくるよさがある1台。きっと配達業務に携わっている方が乗ったら、相当よろこぶと思います」とASF 2.0の感想を述べた。

1人乗りを前提としたクルマなので、運手席の座面幅を少し広くして快適性を高めている
荷室の右側下には台車入れを備え、ドライバーが降りたら直ぐに出せるように配慮してある
片手でスッと簡単に引き出せる
荷室の左側下には引き出しが設けられていて、充電ケーブルなどを格納しておける
荷室は完全なフルフラット。ルーフには長くて明るいLEDを4本搭載し、夜間でも作業がしやすい
バックカメラも完備。荷物が満載でもモニターで後方を確認できる
リアバンパーに横長のランプを備え、停車中も周囲からの視認性が高い
水平基調で広い視界を確保
ラストワンマイル向けなのでオートクルーズなどは搭載していない
安全機能は完備していて、それぞれON/OFFできる
センターディスプレイも大きくて見やすい。バッテリ残量もチェックできる
スマートフォンの画面をミラーリンクできる
トールルーフを生かして頭上にも収納を設定
助手席側にも収納を完備する
ルームランプも高照度のLEDを2つ完備
助手席の前には小物を置ける凹みがある、グローブボックスも完備
12VソケットとUSBポート(Type-A)を備える
運転席と助手席の間には100Vコンセントを完備

ASF 2.0に試乗してみた

 説明会と合わせて試乗会も行なわれ、約2kmほどの一般道を走行する機会を得られた。走り出しは若干モーターの回転音が気になるものの、時速30km/hくらいになれば気にならないレベルまで収まった。恐らくラジオなどを聞いていれば、まったく気にならないレベルだと思われる。加速もとてもスムーズで、試乗道路の制限速度50km/hまでもガソリン車とそん色ない。また、ガソリン車との最大の違いは、やはり信号待ちで振動がまったくないことだと感じた。もちろん今はアイドリングストップもあるけれど、そもそもエンジンが止まった、かかった、という事象もないのが大きい。

 ASFの山下淳CTO(最高技術責任者)によると、「7000人以上の宅配ドライバーにアンケートを行ない、実際にどういうものや機能が欲しいかを聞いてから作った仕様というのが最大の特徴です。今後日本の自動車メーカーからも似たスペックの商用EVが出てくるとは聞いていますが、現状販売している中では航続距離と安全性に関して優位性があると自負していますので、今のうちにきちんとシェアを獲得していきたいと思います」と述べている。

ASF株式会社 CTO 山下淳氏