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KDDI、モータースポーツ×デジタルツインで今まで見えなかった走りや動きの可視化に挑む

2023年10月8日 実施

ウェルパイン モータースポーツのラリー車両トヨタ「GRヤリス」をスキャンした車両(左)と実車(右)

新時代のラリー観戦スタイルをデジタルツインで構築

 KDDIは10月8日、富士スピードウェイで開催された「RALLY FAN MEETING FUJISPEEDWAY」にて、リアルとバーチャルを融合させたデジタルツインを活用する実証を披露した。

 これはKDDIが2023年のフォーラムエイト・ラリージャパンに協賛することから、「何か新しい技術を提供する場にもできないか」と、ラリーの迫力をXR技術で伝える新たな観戦体験の創出を目指す取り組みの一環。

 この日イベント会場では、早朝から「フォーラムエイト・ラリージャパン2023(11月16日~19日開催)」に参加するウェルパイン モータースポーツのトヨタ「GRヤリス」を、2000万円ほどする高精細3Dスキャナーを使ってデータ化を実践。

360度スキャニング中の様子。少しずつカメラを移動してデータ化していく
タイヤは回転処理を施すため、車体から外して別でスキャンするという
天井も確実にスキャンを行なう

 イベント会場では、新井敏弘選手の乗るスバル「WRX」や、兼松由奈選手が乗るスズキ「スイフトスポーツ」などと一緒に、KDDIの高精度GNSSを2つ搭載したウェルパイン モータースポーツの「GRヤリス」も同乗走行を実施。早朝にスキャンした車両のデータがすでにデジタル化され、タブレットの画面に映し出された。

リアの左右2か所にcm単位での測位が可能な高精度GNSSを搭載することで、車両のアングルを正確に測定できるという
フォーラムエイト・ラリージャパン2023に参戦するウェルパイン モータースポーツのGRヤリス。ラリージャパンに参戦する村田康介選手が同乗走行を実施
スピンターンなどを華麗な走りを披露していた
タブレット上に表れたウェルパイン モータースポーツの「GRヤリス」。小さなステッカーまで見事に再現されているのが分かる
Googleマップ上に車両の走行データを重ね合わせたもの。車速やアングルも再現されている
【KDDI】高精細3DスキャンしたGR「ヤリス」(1分41秒)
【KDDI】実走するGRヤリスとデジタルマップ上を走るマーカー(2分9秒)

 これらの技術はドリフト競技でも有効とのことで、2台で追走する競技やチームで複数台で走行する場合、後を走るマシンは前車のタイヤスモーク(煙)でほとんど何も見えない状況になってしまうが、デジタルツインを使えば、煙のない状態をディスプレイに再現できるため、チーム作戦やドライバーが後で確認する反省材料などに活用できるとKDDIは想定しているという。

ドリフトするマシンの状況把握にも有効だという

誰もいないサービスパークにドライバーやマシンをデジタルツインで配置

 この日はKDDIのもう1つのサービスとなる「飛び出すAR」も披露。事前にスタジオで梅本まどか選手を撮影してボリュメトリックビデオを制作。会場に用意してあったQRコードを読み込むと、自動的にアプリが起動して、スマホの画面内に梅本まどか選手が登場。軽快に話しかけてくれるだけでなく、動きとポージングも再現。動きと音声があることで、よりリアルに感じられるほか、360度撮影しているため、梅本選手の後ろ側にまわりこむことも可能となっていた。

動きとともに話しかけてくれるほか、横や後側にもまわりこんで観ることもできる
事前に特別なスタジオで行なわれた梅本まどか選手のボリュメトリックビデオ撮影風景

 梅本まどか選手も、「事前にグリーンバックのスタジオで撮影したのですが、最初は“360度撮ります“という意味がイマイチ分からなくて、前だけでなく後ろからも見られるとのことで、立ち方とか気を付けました」と撮影当時を振り返っていた。

ウェルパイン モータースポーツのGRヤリスのコ・ドライバーとしてラリージャパンに参戦する梅本まどか選手

ラリーをもっと楽しく観戦できるように

 KDDIの伊藤悟氏は今回の挑戦について、「弊社のラリー参戦者から、ラリーは参戦するのは楽しいけれど、観ているとつまらないんだよね、という意見が出まして。例えば観る場所も限られるし、1度自分の前を通過すると、だいぶ待たないと同じ車両は観られない。また、サービスパークもいつでもマシンが入っているわけじゃなくて、タイミングが合わないと空っぽ状態です。そこを何かで補えないかなと、2つ企画を考えました」と経緯を説明。

RALLY FAN MEETING FUJISPEEDWAYのステージでKDDIの新たな取り組みを説明した

 続けて伊藤氏は、「1つがデジタルツインの技術を使い、実際に走っているマシンと全く同じものをバーチャル上に表現するということです。ただし、コース上のアイコンがずっと動くようなものは、すでにモータースポーツで使われていますが、今回われわれが考えたのは、ラリー車はマシンの姿勢変化が大きいので、マシンに2つセンサーを付けることで、ドリフトしたりスピンターンしたりと、その動きもちゃんと表現できるようなものを目指してデジタルツインで作りました。もう1つは、サービスパークでドライバーやコ・ドライバーがバーチャルで登場して『ごめんね。今走りに行っちゃってるから、また後で遊びに来てね』といった感じでメッセージを見て楽しんでもらうもの。マシンがない場合、そのマシンを綺麗にスキャンしたものをバーチャルで見せることで、本当はこのマシンがここにこんな感じで置いてあったんだよということを見せられればなと考えました」と新たなサービスを紹介した。

KDDI株式会社 パーソナル企画統括本部 プロダクト企画部 戦略グループ コアスタッフ 伊藤悟氏から今回の取り組みの説明が行なわれた

 こうした取り組みの将来展望として最後に伊藤氏は、「ラリーは会場によっては通信環境が脆弱な場所もあるので、新技術を使って通信環境とかもよくできればなと考えています。最近スペースXと提携しまして、衛星インターネットコンステレーションのスターリンクを活用することで、近い将来スマホが衛星と直接通信する時代がきます。ただし木々などが生い茂っている場所は衛星でも通信が難しいので、さらに改善していければと思っています。最後にKDDIが何か面白いことやっているなというのと、モータースポーツを応援しているということを知っていただければ幸いです」と締めくくった。

 これらのサービスは現在ラリージャパンに向けて日々ブラッシュアップしていて、ラリージャパンの一部のSS(スペシャルステージ)を完全スキャンして、より完成度の高いデジタルツインに仕上げる予定もあるという。ラリージャパンの会場でもサービスを提供する予定とのことなので、会場に足を運ぶ方はぜひ体感してみていただきたい。

新井敏弘選手はラリー裏話を披露して会場を盛り上げていた
会場には大勢のラリーファンが訪れていた
インプレッサのWRCも展示されていた
インプレッサ、GRヤリス、セリカ、ランエボ、フェアレディZなど幅広い車種が集まった