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ルネサス、Armを採用した第5世代R-Carのコンセプトを布施武司統括部長が解説
2023年11月9日 11:09
- 2023年11月8日 開催
Armベースの車載用SoCとマイコンを投入する、ルネサスの次世代ロードマップ
ルネサス エレクトロニクスは11月7日、次世代ロードマップを発表し、Armベースとなった車載用SoC(System on Chip)とマイコンからなる第5世代R-Carファミリ製品について、2024年以降順次、新製品を投入していくことを明らかにした。
11月8日には、同社ハイパフォーマンスコンピューティング・マーケティングデジタル統括部 統括部長の布施武司氏が登壇する説明会が開催され、第5世代となるR-Carのコンセプトについて説明がされた。
第5世代R-Carファミリでは、汎用性の高いArmベースのプラットフォームとなり、32ビットの車載用マイコンと、64ビットのSoCをそろえた。
自動車業界の市場環境としては、アーキテクチャの簡素化、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル:ソフトウェア定義車両)の実現、ハーネス/車両の軽量化、燃費/電力消費改善への対応といったトレンドがあり、ハイパフォーマンスなSoCとマイコンまでをカバーする第5世代R-Carファミリにより、完全なスケーラビリティと高いフレキシビリティを提供し、異なる製品や世代にまたがるソフトウェア資産の再利用が可能になるとしている。
SDV向けに設計した第5世代R-Car SoCはチップレット技術など採用
第5世代R-CarのSoCにおいては、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)向けに設計され、チップレットアーキテクチャを取り入れることにより、ユースケースごとのさまざまな要件に合わせてカスタマイズできる柔軟なプラットフォームを構築できるという。
将来性では最先端のプロセス技術による設計、効率性ではEVの電力要件に応える設計、システムの最適化ではプロセッシング製品とアナログ&パワー製品を最適に組み合わせたソリューション提供を取り入れた。
AI領域では、高効率AIソリューション、将来の拡張機能への対応。クラウド環境によるシフトレフトの実現、OTA対応ソリューションのサポート。モジュール性を備えたオープンコンピューティングプラットフォーム、マイコンからSoCまでのソフトウェアの再利用性による柔軟性を持つという。
Armコアベースの車載用マイコンは「クロスオーバーマイコン」「次世代車載制御用マイコン」の2製品投入
第5世代R-Carファミリとして、車載用マイコンでは、新たにArmコアベースの「クロスオーバーマイコン」と「次世代車載制御用マイコン」の2製品を投入する。
1つ目の「クロスオーバーマイコン」は、ハイエンドなSoCとマイコンの間の性能差を補完する位置付けとなる製品で、次世代E/Eアーキテクチャのドメイン/ゾーンコントロール(ECU)に必要な性能を備える。
2つ目の「次世代車載制御用マイコン」は、車載制御用マイコンをフルカバーする32ビット車両制御用マイコンを投入、急成長するEV、Zone/DCUにも対応するという。
第5世代R-Carのコンセプトについて、布施氏は「ADASといったAIの進化が早いところに、効率のよいAIと開発環境を合わせて、第4世代からさらに磨きをかけ、性能、フィレキシビリティが上がったAIの環境、AIそのものを提供していくということと、従来から申し上げているクラウド、シフトレフト、それからソフトウェアファースト。SDVという意味のソフトウェアファーストと、バーチャル環境を含めて先行開発ができるという意味のソフトウェアファーストを実現してまいります」と述べるとともに、「オープン制を強調してやっていきます。ソフトの開発環境もハイエンドのSoCから、エントリークラスのマイコンまで、今回、Armのアーキテクチャで統一していますけれど、そこをスケーラブルにやるとともに、極力オープンな環境を提供するオープンソース、オープンな環境でやっていく戦略です」と話した。
また、車載用マイコンの展開について、布施氏は「従来のRH850とか、RL78とかもやめるわけではないので、当然、開発を継続します。なので、SDVとか、特にマイコンの領域で裾野を広げるとか、いろんな意味でArmを投入するとご理解いただければ」と話した。
ルネサスでは、このロードマップに沿って、2024年以降順次、新製品をリリースしていく予定。今後、第5世代のR-Car プラットフォームに向けても仮想ソフトウェア開発環境を準備し、2024年1Qより、順次提供していく。