ニュース

豊田章男会長、水素の普及について「花とミツバチ」論などを語る 「共感がない限り、インフラとかは進まない」

トヨタ自動車株式会社 代表取締役会長 豊田章男氏

トヨタ自動車 豊田章男会長、スーパー耐久の場で水素やモビリティショー、ラリージャパンについて語る

 11月11日~12日に富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久最終戦富士4時間レースにおいて、トヨタ自動車 代表取締役会長 豊田章男氏が、新聞、テレビ、自動車メディア、モータージャーナリストらの現場取材を行なっている取材陣の囲み質問に答えた。

 豊田章男会長は、CO2回収など水素カローラでの取り組み、ジャパンモビリティショー、ラリージャパンなどについて、幅広く現在の考え方を述べた。

豊田会長がモリゾウ選手として参戦、公開開発を行なっているGR液体水素カローラ

──オーストラリアでいよいよ水素エンジンの実走が始まります。2021年から水素エンジンの取り組みをこのスーパー耐久の場で始められ、いよいよ公道で走り出します。3年というスピード感や(トヨタ自動車)会長として公道で走り出すことに対してどのように感じられていますか。

豊田章男会長:僕はね、3年前の水素社会の実現というとね、いろいろ各地で実証実験をやってきたけど、実際にどう持っていくかという話が多かったような気がします。こんなところで実証実験をやるけど、実証は実験のためで、実装に持っていくときには壊すとかね。そうすると継続性がないような、水素社会の実現みたいな感じじゃなかったと思うんですよね。

 それがここ(サーキット)で、水素のエンジンで走らせるというね、商品も分かりやすい、いろいろな人も見ることができる。かつレースの場だということで、アジャイルに開発が、みなさんも見る中で進んでいくじゃないですか。最初に水素社会実現のために関わろうとしていた8社(2021年5月)から、今50社に近い会社がやっている。

 今日(予選日)、イベント広場を見て水素でこういうものを(と、水素で焼いたクロワッサンを見せる)作ったり、ホンダさんも水素のプラグインを展示している。「何でモビリティショーで出さずに、こちらで出したんですか?」と、それに対しては答えはくれなかったけど、やはり水素社会に多くの人がS耐で参加してくれている。

 だからきっと水素社会の仲間を増やしやすいという意味合いがあったのかなと。商品を見えるような形にしたことによって、いろいろな方が参加しやすくなったと。それは自動車業界に限らずいろいろな方が参加し、実際に使う人の目に触れている。今まで実証から実装と言っていたときは、やはりBtoBのレベルの話だと思うのです。今まさしく、この水素社会の実現で見えてるのは、BtoCの世界だと思うのです。それがゆえにいろいろ開発のスピードも速いし、面白いねとか、認知も上がってきている。

 3年前の「水素社会実現のために実装を増やそう」と言っていたときに比べると、水素社会の認知度というのは上がったんじゃないしょうかね。

 モータースポーツの世界では、今回アメリカのNASCARの人たちが水素エンジンの活用を見たいと来られている。こういうのを見てもモータースポーツで水素エンジン、モータースポーツの場合は五感で感じることからいくと、音はね、重要な要素の一つなんだろうなと。

 話は戻りますけど、オーストラリアでクルマが1台走り始めた。どこかのプラントの水素を実証・実走にしたというものではなく、クルマを走らせているというものは、多分分かりやすいと思うんですよね。

 そういう活動が今動き始めたということで、これは非常に私は楽しみ。

 カーボンニュートラルというと、自動車業界では3~4年前、特に日本は「BEV(バッテリ電気自動車)が遅れている」という発言にすぐなるんですよ。なるんですけど、今年のG7でも日本政府は、世界に先駆けてマルチパスウェイというものを言い出し、各国も、特にヨーロッパとかはいろいろなところでちょっと言い方が変わってきたじゃなでいすか。

 いまだに周回遅れと言っている人もいますけど、やはりみなさん現実を見て、世の中の動きも変わってきたのだから、取材をしておられる方も分かると思うのです、この変化が。取材をして「今こういうことが起こっているよね」っていうのは、より多くの方々に正しく伝えるところは、ぜひお願いをしたいなと思っています。

──今日クルマ(水素ハイエース)を実際に運転させていただいて、仕上がりのレベルは製品レベルではと思います。航続距離(約200km)だけが唯一問題なんですけど。短距離で重量物、例えば水の配送とかあるいはプロパンガスの配送みたいな明らかに用途が決まれば、きちんと業種が想定できる。だとすると、最後、あの航続距離で給水素できるところに水素ステーションを1日1回デリバリーできれば、現実に動き始めると思います。ここに対しての法的な、今給水素基地のルールはすごく厳しいはずなのですが、その辺りの交渉や政治家の判断とかはどのような状態でしょうか?

豊田章男会長:水素議連(水素社会推進議員連盟)の小渕先生がいらっしゃったときに(5月の富士24時間)、私が申し上げたのは、「水素はインフラ」と、いろいろなこととセットになります。カーボンニュートラルというと自動車メーカーに、「自動車でカーボンニュートラル車を作りなさい」ということをみなさんおっしゃいますけど、BEVであれ、水素であれ、やっぱりインフラとセットになっている。それと水素の場合ではクルマ用のタンクがない(液体水素カローラで使っている車載用液体水素タンクの規定がない。現在は常圧の液体水素を使っていても高圧水素タンクの規定で設計されている。液体水素カローラの重量増はこのためでもある)とかいろいろなことがあって、「水素に着手したのは日本が最初でも、あっという間に抜かれちゃいますよ」と。日本はよくあることです、そういうことは。

 だから何とか、何とかね、せっかく民間が最初のうちに着手したのだから、ずっとリードしていくように一緒にやりませんかねというお願いをさせていただきました。

 それ以降、いろいろな形でね、これはっていうのはないのですが、ないのですけど、やはりルールメイキングの方々もね。今現在、例えばスーパー耐久の場ではね、最初気体のときは、外まで行って給水素していました。

2021年5月 S耐24H決勝 水素カローラ 給水素ピットイン by MORIZO選手(参考タイム表示)

 それが今では、液体(水素)になってすぐそばになった。大規模施設だったのが、非常に簡単なってきた(給水素時間も1分に)。

 毎回レースの度にこれだけの変化がある。やっぱりこのスピードで、これだけの目に見える変化があるということを、ルールメイキングの方々にも、時々来られるわけですから、担当者レベルの方も来られるでしょうけど、ぜひともデシジョンメーカーの方々が、現実をベースにどういうルールをいつまでになにをすればよいのか。

 ルールメイキングの方々は、世界のデファクトスタンダード(事実上の標準)を取ろうとか、何かその理想論にいってしまう。今すぐできることがなかなか後まわしになっている。

 回答がある世界は、僕はそうやって、じっくりと先を見通して、しっかりと効率的にやる方法を考えればいいと思う。

 ところが今、この世界って回答があるわけじゃないのです。だから、間違えてもいいから、しっかりちょこちょこ、ちょこちょこやってくことだと思うんです。

 やっていることを理解していただけるルールメイキングの方は、まだそう多いわけではない。だからぜひそこのところも、「未来作るってそういうこと必要だよね」っていうのは、これは本当にメディアの力だと思います。メディアの力で、そういうことが今現場では行なわれている。現場で行なわれていることを、デシジョンメーカーの方たちであり、責任者の耳に届くことをやっていただけると、もうちょっと現実に近い形で、現実に近いスピードでいろいろな未来作りは進んでいくんじゃないかなと思います。

──ハイエースで僕は未来を見たんです。これできる。これでできるのに何が引っかかるかって言ったら、水素の配送。ここが解決したら、多分もう日本は一歩先に入ることができる実力がある。

豊田章男会長:(水素)バギーありましたでしょ。2輪4社とトヨタが協力して。あれはダカールで走らせます。「ダカールで走らせるのにどうやって水素運ぶの?」って聞いたら、「毎日タンクで運びます」と。だからまずは、まずはそういう面倒くさいことでもやってみる。

 やってみると、これは今後どうしようかとかね。水素の充填もものすごく時間がかかっていた。かつては。かつてはといっても1、2年ちょっと前の話です。それを年間6回のレースをやり、レースしてますよっていうことで、こんなに変わってきた。岩谷産業さんも川崎重工さんも、

 だから、こういう努力の足跡というのは、ぜひほめてあげたいと思うのです。

──クルマが今年1年、水素エンジンカローラがすごい進化してきた。まさにアジャイルというか、本当にここまで来るのだなというのを実感していたのですが、ドライバーモリゾウさんとして、この1年液体の方に乗ってきて。どんな風に感じていて、今どんなクルマなのかをモリゾウさん視点で教えてほしい。

豊田章男会長:最初のうち気体で走りました。それで今年の途中から液体に変わりました。液体になった瞬間に私の印象は、「あ、気体のときの最初に戻ったな。またこれから1年かぁ」と素直に思いました。

 だけど、気体のときの開発期間を10とするならば、今回液体となったときには6ぐらいでしょ。ものすごく速い。

 それから気体から液体になったときから、もうすでに100kgくらい軽量化も進んでます(5月の富士24時間で1950kg、7月のオートポリスで1910kg、11月の富士で1860kg)。今回もタンクのところとか、まったく設計し直して形になっています。

 気体のときは毎回毎回出ましたね。液体になってからは飛ばしながら、ここはお休み、ここは何とか。最初にちょっと火が出た(火災事故があった)ので、より安全性にふるということも含めて、一回休みで。安全第一の確実なアジャイル開発をやったら、逆に早まっていますね。

 今回のモリゾウとしての驚きは、去年の富士24時間レースでの私の予選タイムと、今日の予選タイムで2秒短縮しています。2秒短縮しているというのは、私の技能も上がっていますけど、やっぱりクルマの進化というのがそのぐらい来てるってことじゃないですかね。それ以降のドライバーは天気があれ(ウェットに変化した)なので、比較の対象にはならいのですが。

 でも私のタイムならば、去年と今年と比べてもほぼ同じコンディションでしたので、それぐらいクルマとしての進化はあるんじゃないでしょうか?

──乗っていても、実感として速くなったとか、気持ちよくなったかはありますか?

豊田章男会長:ありますよ、あります。気持ちいいまではいかない(笑)。ヤリス(GRヤリス)で走っているから。クラス的にはST-2クラスね。2クラス的なパフォーマンスが出てくると、多分ほかのレーサーたちも気持ちいいとなる。今は、ST-4。それで最初に液体に変わったときは、ST-5の最後尾。

 そこから今はST-4の後ろくらい。うまく行けば真ん中くらい。というところまで今来てますよってことですね。

──先ほどバギーによるダカールラリーとおっしゃいましたが、これは水素の可能性を世界に発進したいという気持ちを込めた取り組みでしょうか?

豊田章男会長:あれは2輪4社とトヨタの取り組みになります。どちらがというより、いろんなところで、いろんなトライアルが起こっているよと、それを追いかけていただいたほうが面白いのではないかと思います。

──水素というものが、だいぶ認知されてきたとおっしゃっていましたが、日本と世界で認知の差というのは?

豊田章男会長:いやー、分からないな、それは。でも、日本だけ比べても、相当このプロジェクトの参加しようという会社は間違いなく増えてきていますよ。

 最初はエネルギーを、「つくる、つかう、はこぶ」の8社でした。ST-Qクラスを見ても、トヨタだけが参加していました。

 今も全メーカーではないですが、イベント会場にあれだけ展示しています。あんなことは今までなかったです。

 どれだけ水素社会が認知されているかと言われても分かりません。分かりませんけど、そういうところを見ると、このスーパー耐久の場を、みなさんは未来社会、水素社会に参画できる場所みたいな形で期待をしているから、行動に移るのではないでしょうか? と、私は見ています。

──2年半の間、体を使って発信してきた。そういう状態が伝わってきているなという手応えがおありでしょうか?

豊田章男会長:というか、私は孤軍奮闘でしたから。2、3年前はみなさんをご中心に「周回遅れ」と言われてみたりね、「BEVをやる気がない」とか、ずいぶんいろいろなお言葉をいただいたと思いますよ。

 だけど、変な手のひら返しをしないでくださいね。急に「BEVがおかしくなった」ってやったらダメですよ。

 元々僕が言い続けているのは、「すべての選択肢を、順番を間違えないようにやらせなさい」ということです。それを、規制を決めるとか、選択肢を一つに決めることを持ってきてしまうと、技術進歩の利点が効かないんですよ。

 例えば今回私が出る水素エンジンのクルマは、ゼロエミッションビークルじゃないのです、Beyond ZEROなんです。要は空気清浄機ですからね。だから元々水蒸気しか出てないクルマなんですけど、気体中のCO2を吸収してますからね。吸収しているわけですよ。

 ハイブリッド車でeフューエルを積んで、あの装置(CO2回収装置)を付ければ相当ゼロエミッションに近づきます。仮に電気自動車だけって言っていたら、本当にインフラができないところはモビリティの恩恵をこうむれないことになります。

 ただし、ハイブリッドとeフューエルとCO2吸収器を付けたら、それはそれでカーボンニュートラルに限りなく貢献できるという動きができるわけですから、やれる人たちがやれることをね、やることをね、お許しいただきたい。

 それこそがCO2を今すぐ下げる活動になるわけだから、それをぜひ応援してもらえませんかね。日本だけですよ、(CO2を)23%下げてきてるのは。それでなんで「周回遅れ」というのかなと。

──水素についてはこれまでの取り組みで認知度が広がってきたというお話をおうかがいしましたが、ここから先の新しいチャプターに入るためには、やっぱりインフラのところをどうしていくのかなというのが重要なのかなと思います。インフラを拡大していくためには、会長としては何が必要と考えていますか?

豊田章男会長:共感。

 インフラはルールメイキングがお金を付けて活動して、ルールで増やすのではなく、こういうクルマを使っていくことが必要ですっていう必要性と、みんなでモビリティ社会を作りましょうよという共感がない限り、インフラとかは進まないと思いますよ。

 よくすぐ議論になるのは、「早くクルマ作れよ」と。クルマが先か、インフラが先か。卵が先か、ニワトリが先かと言いますでしょ。

 僕はいつも「花とミツバチ」と言います。花とミツバチというのは、ミツバチが花を求めるように、卵かニワトリではなく、花とミツバチの関係でないと、対立的な議論ではダメだと思いますよ。

 未来作りのインフラにおいては、花とミツバチ論を広めてくれませんか?

 花とミツバチっていいでしょ。これからは鳥と卵と言ってはダメ。花とミツバチ、分かった?

──分かりました。

豊田章男会長:じゃ、言ってみて。

──(一同、大爆笑)。お互いがお互いを必要としているということですね?

豊田章男会長:まあね、まあね。

──このレースウィークが始まる前に、章男会長のSNSでカートとフォーミュラカーに乗っている姿を拝見しました。これまで箱に乗り続けている中で、フォーミュラカーに乗って、マスタードライバーとしてちょっと変わったことみたいなのはありましたか?

豊田章男会長:僕ね、初めてフォーミュラカーに乗りました。いや、本当、初なんですよ。今までね乗ったことあるんでしょうと思われるかもしれないけど、本当に初なんですよ。トムスさんがね、販売店のメカニックさんにフォーミュラカーに乗れる場があったというので、ちょっと面白いねって言ったら、昼休みであれば乗せていただけるというので乗ってみました。

 そしたらね、箱車の経験しかないですよ、僕は。だけど全然挙動が違いますね。「また乗ってみたい」と思って発言しているので、ちょっと私のまわりが慌てています(笑)。

──後味がよかったということですか?

豊田章男会長:後味まではいきませんが、あの場所で走っているから。フォーミュラカー特有の空力が出る前の状態です。段階なんだけど、ABSが付いてませんからね。ブレーキの踏み方をちょっとね、今までのABS付きのクルマの経験値で踏めば、すぐクルマがスピンします。それだけ運転における基本動作的なものを、ますます求められるクルマです。だんだんこうやって乗っていると慣れもあるし、慣れでなんとなく乗りこなしているところもありますが、そこには(フォーミュラカーには)基本というか、基本を学ぶにはフォーミュラカーもありだなと思います。

 正直言うと、僕はフォーミュラカーに興味がなかった。箱車しか興味がなかった。でもプロドライバーがね、やたらフォーミュラカーにこだわるんですよ。

 私の今思っている結論は、やっぱりドライバーたちはアスリートなんですよ。アスリートである以上は、自分がその競争の中で一番と言われたいんですよ。より運動に近いなと。フォーミュラを扱う方々がいうことを、ちょっとね、ちょっと自分で体験して分かりました。

──未来のモビリティという意味では、(東京モーターショーが)ジャパンモビリティショーにモデルチェンジをして、111万2000人という大きな来場者数、日あたりで約10万人を記録しました。会長自身、開幕の際に未来を感じていただきたい、なにか持ち帰ってもらいというメッセージを出していました、そこは残せたかなと思いますか?

豊田章男会長:残せたというか、数字は取れたと思います。今100万人集まるイベントというのは、日本には夏の甲子園とモビリティショーしかないのです。開催期間を長くすれば(数は)集まりますよという話もありますから、そうなってくると日あたりね。日あたりの来場者数は、結構自分としてもキーだったのです。それが10万人近くなったというのは、ものすごくいい数字は残せたんじゃないかなと。

 かつね、前回ほど現場を歩いてはいませんけど、限られた時間で歩いた限りは、参加者の顔が増えたなと思います。

──顔が増えた?

豊田章男会長:ベンチャー企業をはじめ、参加社が500社ぐらい。それプラス、我々の(自工会の)自称するダボス会議、トークイベントみたいなのがあり、どちらかというと自動車業界以外の金融界の方々を招いたり、ジャーナリストの方々にMCをやっていただいたり。(そのほか)練り歩きツアーのガイドをやっていただいたり。

 今までだったら、やる人、見る人、メディアはプレスデーに来てくださいというのから、参加者側みたいな形もあったと思うのです。新しい役割で、みなさんにお世話になれたと思うし、割とお子さん連れも目立ちました。

 キッザニアの横にはサプライヤーのブースがありましたが、今回そこも非常に多くの人がいました。そういう意味では、まんべんなく来場者がいらっしゃいました。

──開催日の会見で、反響が大きかったら毎年の開催を検討したいという発言もありましたが、その辺りを?

豊田章男会長:僕は何度も言っていますが、「毎年開催すべきだ」と言っています。

──すべきだ、ですね。

豊田章男会長:ただ、モーターショーからジャパンモビリティショーへと変わり、その第1回目になります。モーターショーであるとなると、なかなか毎年開催は難しい会社が出てくると思います。コンセプトカーを毎回作るかとか。

 だけど、今回はモーターショーからモビリティショーに変わり、ワールドプレミアのみならず、いろいろな研究成果の発表の場であるとか、いろいろなカーボンニュートラルに対する理解や意見交換の場だとか。そういう部分は何も2年に一回ではなくてもいいでしょ、と。こういうのは毎年毎年やるべきじゃない。

 今回、ピッチコンテストで優勝した会社が1000万円もらったでしょ。その会社は1年後にどうなっているの?という部分は面白いでしょ。

 いろいろな人がここで(ジャパンモビリティショーで)何かきっかけをもらったか、どんな物語が始まったのかということはフォローをしたくなるはずなんです。そういう意味では1年に一度、全部でなくてよいので、(横に同席していた、ジャパンモビリティショー実行委員長 長田准氏に向かい)ぜひご検討されたほうがよいと思います。

──ラリージャパンが始まります。改めてとはなりますが、ラリージャパンはどのようなイベントになりますか? こういうところを見てほしいといういう部分はありますか?

豊田章男会長:分かりました。すでにトヨタはチームチャンピオンであるマニュファクチャラーズチャンピオンと、ドライバー、コドライバー、(WRCの)すべてのチャンピオンを獲得しています。

 ラリー北海道のときもそうだったように、日本で一流の選手の走りを見られる大チャンスだと思います。大リーグが来たり、世界有数のオーケストラが来たりしたときに、世界との差を見ることにワクワクしたりするように、モータースポーツも世界一流の人たちが、普段走る公道を究極の安全運転をしますから。究極の安全運転の姿を、しかも音とにおいとファンサービスを含めて、世界一流の選手たちはどんな所作で、どんな技を見せ、我々に何を残すか。そういうのを、ぜひご注目いただきたいなと思います。

 最終戦であるがゆえにチャンピオンは決まっていますが、ここでね、来年の耐性もあるし、いいところを見せようと戦いもあると思います。いろいろな見方ができると思います。

 ちょっとだけ宣伝させていただければ、チームトヨタは結構いいチームです。私、今年はフィンランドでチームプリンシパルという形で出ましたし、ラリー北海道ではラトバラさんに選手として出てもらったり、かつてのレジェンドのカンクネンさんとデモランをやってみたりと、ラリーには絡んできました。

 その中で確実に、ラリーの観客の数が増えてきている。

 ラリージャパンは、去年から今年でものすごく見方の工夫がされている。例えば豊田スタジアムで2台一緒に走る姿を5万人の方が、雨風関係なくシートに座りながら観戦できる。

 それからSSの一つの岡崎においても、煙ばっかりで何も見えなかった。ああいう世界から、岡崎公園を開放することで非常に見やすくなったと思うのです。これが日本流のカイゼンであり、どのくらい去年と変わったのだろうかというのも、見方なのではと思います。

 ラリーのよさは、選手との近さだと思います。ですからその近さがどのくらい去年と比べてカイゼンされているのだろうか?というのもぜひ興味を持って見ていただくと、面白いものがたくさん見えるんじゃないかなと思います。