ニュース

NOK、ENEOSと共同開発した「自己潤滑ゴム」を人とくるまのテクノロジー展 2024 横浜で初公開 摩耗を約30~40%低減してBEVの電費向上

2024年5月22日~24日 開催

入場無料(登録制)

NOKブースで初公開された「自己潤滑ゴム」の低摩耗性を従来ゴムと比較できる展示

 神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2024 YOKOHAMA」が5月22日~24日の会期で行なわれている。入場料は無料(登録制)。

 展示ホール・386にあるNOKブースでは、BEV(バッテリ電気自動車)などの電動車向け製品となる熱マネジメント部材、バッテリケース用の圧力開放弁シリーズなどを展示している。

展示ホール・386にあるNOKブース

「自己潤滑ゴム」(初公開)

自己潤滑ゴムについて紹介する展示パネル

 ENEOSとの共同開発で生み出された「自己潤滑ゴム」は、低摩耗を実現し、環境負荷を低減するという新ゴム材料。潤滑油の低粘度化、モーターの高速化などによって貧潤滑環境が進み、今後もさらに厳しい環境になることを想定して「シール製品の潤滑性向上による低摩耗化」をテーマに2019年から両社による共同開発が行なわれてきた。

 自己潤滑ゴムをオイルシールなどに使った場合、従来製品同等の密封機能を発揮しながら摩擦を平均で約30~40%低減。BEVや電動アクスルなどの電費を向上させるほか、摺動発熱も抑えられて劣化しにくいことから製品の長寿命化も期待できるという。

 技術的にはゴム材料の配合を工夫することにより、分子スケールで海面を制御。少ない潤滑油を効率よく活用して摩擦を低減するという。ブースでの展示では、摩擦試験の「ピンオンプレート試験(往復運動)」を模した展示品が用意され、潤滑油を薄く伸ばした2枚の鉄板の上に従来ゴムと自己潤滑ゴムを、鉄板に半球状に押し付けながらスライドできるようそれぞれ固定。実際に手で動かして、摩擦抵抗の違いを体感できるようにしている。

摩擦試験の「ピンオンプレート試験(往復運動)」を模した展示品を用意
従来ゴム(左)と自己潤滑ゴム(右)の摩擦抵抗を自分の手で動かして体感できる。従来ゴムは、とくに動き出しの瞬間に固定されているのではないかと感じるほど強い力で動かす必要がある一方、自己潤滑ゴムは比較すると軽い力でスライドさせることができた
鉄板の上に貼り付けられているのが実際の従来ゴム(左)と自己潤滑ゴム(右)の実物。円盤形になっているゴムを半球状に押し付けて試験を行なう
貧潤滑環境における摩擦試験(回転)の結果。従来ゴムは無潤滑と同じような見た目だが、自己潤滑ゴムは貧潤滑環境でも油膜が保持されて灰色になっている

「配管用継手シール」(参考出品)

偏心追従性を大きく高めた「配管用継手シール」(参考出品)

 事前に公開された出展情報には入っておらず、会場でサプライズ公開されていた参考出品の「配管用継手シール」は、BEVなどの冷却経路での使用を想定して開発された製品。

 BEVなどの電動車は発熱が大きく、冷却などの経路が入り乱れることになることで、生産工程でパイプ同士を並行に並べて接続することが難しいケースが増えてきているという。この問題に対応するため、NOKでは配管同士の偏心追従性に特化した継手シールを開発。ゴム嵌合部やフランジなどの内部に補強環を設定することにより、偏心5mm、エア圧0.5MPaまで漏れることなくシール性を発揮できるという。

配管用継手シールのデモ展示。高さの異なる2本のパイプの間をつなぐ配管用継手シールは大きく斜めに変形しているが、ゴム嵌合部は歪むことなくパイプに密着している
配管用継手シール
配管用継手シールの技術説明

「圧力開放弁シリーズ」(シリーズ初展示)

「圧力開放弁シリーズ」

 圧力開放弁はBEVなどのバッテリケースに設置され、バッテリが熱暴走して多量のガスが発生した場合、適正量のガスを外部に排出する部品。バッテリケースのサイズや取り付け方法、対応するガス量などに応じて構造が異なり、今回は「小流量タイプ」「中流量タイプ」「大流量タイプ」「呼吸・中流量タイプ」「高圧・小流量タイプ」の5製品を製品シリーズとして初めて紹介している。

NOKの圧力開放弁5製品。シリーズとして一堂に展示されるのはこれが初になる
各製品の構造や対応領域

「セル間断熱・弾性ゴムシート」(初公開)

「セル間断熱・弾性ゴムシート」の解説パネル

 バッテリケース内のバッテリセル間に配置されるこのゴムシートは、ゴム表面に円錐型の突起を両側に向けて成形することにより、充放電で起きるセルの膨張、収縮に合わせて適切な荷重でセルを保持する製品。円錐が中空構造になっていることで断熱性を発揮して、熱暴走を起こしたセルの発熱が隣接するほかのセルに与える影響を抑制。ゴム自体も難燃性規格「UL94 V-0」相当の難燃性を持ち、セルが熱暴走したときにも発火しにくい素材を採用している。

ゴムシートの両側に向けて円錐型の突起を成形。充放電で起きるセルの変形に対応し、中空形状によって断熱性も高めている
UL94の燃焼試験で最も等級の高いV-0相当の難燃性を持つゴム素材を使用している

「絶縁熱伝導樹脂」(初公開)

「絶縁熱伝導樹脂」の解説パネル

 高い放熱性、耐熱性を備え、最大220℃の高温環境下での連続使用を実現し、高精度の成形にも対応するこの絶縁熱伝導樹脂は、モーターやバッテリ、インバーターなどのコネクターで使用されることを想定しており、金属部品から置き換えることで車両の軽量化に貢献する。

コイルボビン、バスバー、スロットライナーなどに使用される絶縁熱伝導樹脂

「QLEASE(キュリース)」シリーズ

新名称「QLEASE(キュリース)」シリーズとして展示された熱伝導部材

 熱伝導部材は、今回の展示に合わせて名称を「QLEASE(キュリース)」シリーズに変更。車載製品も電動化やコネクティッド化によって処理する内容が高度化しており、発熱量は右肩上がりとなっているが、一方で搭載スペースの制約は変わらないため、排熱の高効率化も急務になっているという。

 熱を吸う、排出(リリース)するという意味を込めて名付けられたキュリースシリーズでは、基板上に並ぶ半導体などが発する熱を効率よくヒートシンクに伝えて排熱効率を向上。従来からNOKが得意としているラバータイプに加え、粘土のような柔らかさで基板に密着するクレイタイプ、ラバーとクレイの特性を併せ持つクロスタイプをラインアップしており、クレイタイプでは低粘度化を進めて射出機でも使用可能にしたディスペンサー仕様、粘度は高くなるものの熱伝導率を高めて排熱効率を向上させた高熱伝導仕様なども開発されている。

他社製品の熱伝導シートとキュリースシリーズのクレイタイプの比較。熱伝導シートは熱源となる半導体などの高さが異なる場合には密着しきれなくなるが、クレイタイプは基板上に広がってヒートシンクにしっかりと熱を伝えてくれる
キュリースシリーズではラバータイプ、クレイタイプ、クロスタイプをラインアップ
低粘度化によって射出機でも使用可能にしたディスペンサー仕様も開発。会場では標準仕様、ディスペンサー仕様、高熱伝導仕様の3つを袋詰めにして、粘度の違いを指先で感じてもらえるようにしたデモ用素材も用意されていた