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アストンマーティン、フェルナンド・アロンソ選手のこだわりが詰まった特別モデル「ヴァリアント」特別展示 「Q by Aston Martin」のサム・ベネッツ氏に話を聞いた
2024年8月14日 08:15
- 2024年8月9日 実施
110周年モデル「ヴァラー」をベースにした「ヴァリアント」
アストンマーティン ジャパンは8月9日、スペシャル・エディション「Valiant」の特別展示を東京・青山のブランドセンター「The House of Aston Martin Aoyama」で実施した。
ヴァリアントは110周年モデル「Valour」をベースに、トラック走行を強く意識したスペシャル・エディションで、アストンマーティン・アラムコ・フォーミュラ1チームのドライバーであるフェルナンド・アロンソ選手の「軽量で過激さを増した、レーシングカーの要素を取り入れたヴァラーが欲しい」という個人的な依頼をきっかけに誕生。アストンマーティンのビスポーク・サービスであるQ by Aston Martinのエキスパートたちの入念な設計と製作によって、全世界38台のみが限定生産される。
38台という数字はル・マンレーシングカー「Muncher」のVINナンバーに由来しているといい、販売割り当てはすでに決定しているとのこと。また、38台のうちの1台はアロンソ選手が実際に購入する特別仕様となっているという。
心臓部には最高出力745PS、最大トルク753Nmを発生するV型12気筒5.2リッターツインターボエンジンを搭載し、6速MTを組み合わせることで、過ぎ去りし時代の荒々しいスタイルと猛烈なパフォーマンスを実現。華麗なデザインには最先端の現代的なエンジニアリングと軽量素材が取り入れられた、この2つが融合したヴァリアントは、レーストラックでは本領を発揮し、公道ではスリリングな走行を体験できるとのこと。
本格的なサーキット走行を想定して軽量化やシャシー調整など数々の技術が採用され、3Dプリンタ製作のリアサブフレームを用いることで、剛性を下げることなく3kgの重量を削減。同時にマグネシウム製トルクチューブによって車両中央部の質量を8.6kg削減した。また、フロント275/35、リア325/30のタイヤを装着する21インチの軽量マグネシウムホイールによって、ステアリングレスポンスとホイールコントロールが向上し、バネ下重量も14kg削減。モータースポーツ仕様のリチウムイオンバッテリによって11.5kgの削減も実現し、ベースとなるヴァラーと比較すると、ヴァリアントでは約95kgの軽量化を達成している。
さらに、マルチマティック製アダプティブ・スプール・バルブ(ASV)ダンパーを装着。それぞれのダンパーを32の個別のダンパー・カーブのいずれかに6ミリ秒以内に同時に調整するASVシステムにより、これまでモータースポーツの最上位レベルでしか見られなかった、モータースポーツ級のダンピング制御と、オペレーション制御の幅が可能となった。マルチマティック製ASVダンパーは、最上級クラスのダイナミックで、極めて限られたモデルでの装備例しかなく、アフターマーケットでは入手できないとのこと。
エクステリアは、軽量カーボンファイバーを全体に使用し、幅広の筋肉質なボディに刻まれたシャープなラインは、ダウンフォースを発生させて安定性を確保すると同時に、スピードを低下させる空気抵抗を最小限に抑え、デザインと空力性能を両立。ヴァリアントの深いフロントスプリッターはノーズを路面に低く張り付かせ、特徴的な多層構造のエンドプレーンでフロントホイール周辺の空気を整流。スプリッターの真上には車幅全体に広がるカーボン製グリルが配置され、エンジン冷却空気の流れを増やすと同時にフロントアクスル前方の重量を削減し、重量を中心部に集中させることでハンドリングを向上させている。
また、空気抵抗と浮き上がりを効果的に削減するために数値流体力学(CFD)を用いて設計されたカーボンファイバー製のリアディフューザーは、リア部分の重量削減効果に加え、V12エンジンのエキゾーストサウンドを生み出すクアッド・エグジットのチタン製エキゾーストシステムを囲む役割も果たしている。
インテリアでも、レースで培った機能性とアストンマーティンの装飾デザインや熟練した素材の扱いを組み合わせ、むき出しのサテン仕上げのカーボンファイバーを広範囲に用いるとともに、シートパディングの戦略的な配置と精巧に仕立てられた軽量素材の内装で、的を絞った快適性、ラグジュアリー、手触りを生み出している。
キャビントリムはアルカンターラまたはセミアニリンレザーから選択可能。アルカンターラのシートに施したキルティングのデボス加工と、最大限のコントロールを実現するための手触りのよいアルカンターラのステアリングホイールを装着。ビスポークのドアパネルは彫像のようなデザインで、メッシュのインサートパネルと軽量の布製ドアリリースハンドルでも軽量化が図られている。
ドライバーが接する時間が最も長いステアリングホイールにもこだわっており、どの角度でも同じ感覚で操作ができるよう、完全な円形の独自デザインを採用。また、ドライビングに集中できるように、ステアリングスポークからスイッチ類がすべて省かれている。
なお、ヴァリアントはQ by Aston Martinのビスポーク・サービスによって、ボディカラーやインテリアカラー、内装のマテリアルに至るまでカスタマイズが可能。38台という少ない限定数に加え、世界に2台として同じ車両が存在しない貴重なモデルとなる。
アロンソ選手のこだわりとQ by Aston Martinのこだわりが一致
110周年モデルのヴァラー開発にも携わったQ by Aston MartinのHead of Q Special Project Sales - APAC サム・ベネッツ氏によると、アロンソ選手はヴァリアントに対してドライブしたときのフィーリングに最もこだわっていたといい、「アロンソ選手は今はF1マシンを運転していますが、若いころにマニュアルシフトのクルマを運転していた記憶があるので、動かす楽しみやわくわく感を持ちつつ、モダンな技術を使って作ってほしい」という依頼を受け、Q by Aston Martinとしてもフィーリングに焦点を当ててヴァリアントを開発。
ヴァラーでは、0-60mile/hの加速スピードやラップタイムなど、パフォーマンスの数字にこだわって開発が行なわれたというが、ヴァリアントではその哲学や理念はそのままに、クルマとドライバーのつながりというフィーリングが大切にされたとのこと。
また、アロンソ選手はトップクラスのドライバーであるため、自分が求めるクルマに何が必要かを伝えるコミュニケーション力が非常に高かったとのことで、彼自身がどういったクルマにしてほしいのかをアストンマーティンのテストドライビングチームに対して明確に伝え、それに応えたのがヴァリアントであるとした。
なお、アロンソ選手は英国で開催されたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで実際にヴァリアントをドライブしたといい、リアタイヤからスモークを上げるなど、満面の笑みでドライブを楽しんだとベネッツ氏は紹介した。