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マツダ、横浜市ふるさと納税返礼品として「走る歓び」のキーマン“虫ちゃん”がドライビングレッスン 新旧「プレマシー」の比較試乗も
2025年2月3日 07:05
- 2025年2月1日~2日 開催
マツダは2月1日~2日、神奈川県横浜市にあるマツダR&Dセンター横浜で横浜市とコラボレーションした体験型ドライビングレッスン「虫ちゃん率いる匠たちが集結! マツダ・プレミアムドライビングレッスン」を開催した。
このドライビングレッスンはマツダと横浜市のコラボレーションにより、ふるさと納税の返礼品として用意。2024年11月13日~1月20日の期間に8万円をふるさと納税で寄附した人を対象に、両日の午前と午後の計4回、各回6人の24人が参加申し込み。当日所用で受講を断念した2人を除く22人がレッスンを受けた。
レッスンは参加者が日ごろ使っている愛車で受講可能となっており、マツダが追求している「走る歓び」の開発に取り組む独自の役職「操縦安定性能エンジニア」で首席エンジニアとして活躍している通称“虫ちゃん”こと虫谷泰典氏と“マツダの匠”たちから運転の基礎やマツダのクルマ造りについて学ぶことができた。
取材を行なった初日午前の回では、最初に虫谷氏が自己紹介を行ない、マツダが取り組んでいる2030年に向けた経営基本方針「2030 VISION」では、クルマを走らせることで人々に元気になってもらいたいと考えていると説明。
レッスンでは参加者にこれまで知らなかったドライビングで大切な要素を発見してもらい、運転をこれまで以上に楽しめるようになって、もっと楽に移動できるようになることで「クルマってこんなに楽しいんだ」と感じてもらうことを目的にプログラムを構成。サーキット走行のような車両の限界を確かめるようなシーンではなく、日常的な運転でもどのように体を使い、何を意識して運転操作をするかを考えることで、運転がもっと楽しめるものだとのメッセージを込めていると語った。
解説に続いて実際のレッスンがスタート。まずは虫谷氏から、体のわずかな一部にだけ影響を与えることで大きな変化が現われる実例について全員に紹介された。
参加者の1人に靴を脱いでもらい、床に置いた一般的な靴の中敷きとアスリート向けのインソールを製品化しているBMZのインソールの違いを検証。靴の中敷きは手触りがソフトで衝撃や振動を吸収してくれそうな雰囲気だが、実際に上に立って離れた場所にある目印を見つめていると、足下がふらつくことで視線が安定せず、常に体を動かして調整している印象だと語られた。
一方、BMZのインソールは足の中央外側にある「立方骨」を支える突起を設け、足のアーチバランスを整え安定性と運動性を両立させる特許技術を採用。上に立って目印を見ると体が動かず、視線が安定していると印象を説明。さらに靴の中敷きの上に立っているときに体の後方で組んだ手を上から押していくと上体を支えきれず後ろに倒れてしまいそうになるが、BMZのインソールの場合はどれだけ上から押しても踏ん張りが効いて、最後は組んだ手が離れてしまうことになった。
これについて虫谷氏は、BMZのインソールが足のアーチバランスを整えて足の指が使いやすくなり、骨盤が立った姿勢になることで筋肉が弛緩して体がフレキシブルに動くようになったことが原因だと述べ、体が持っているパフォーマンスをしっかり発揮させたことで差が出ていると説明した。
虫谷氏から骨盤を立てる重要性について語られたあとは、用意されたレッスンを参加者が個別に体験するパートに移行した。理学療法士や脳科学者といった経歴を経てマツダに入社した講師が担当するレッスンでは、直前に行なわれたBMZのインソールに立つ体験をほかの参加者が試したあと、座面が自在に動く特殊なイスを使って骨盤を立てる効果を紹介。
まずは浅く腰掛けた猫背の姿勢で遠くに置かれた目標を注視して、そこから体を左右に動かすと視線も連動してブレてしまうが、腰を引いて深く座り、骨盤を立てた姿勢にすると体を動かしても首から上が安定して視線が定まりやすいことを体験した。
参加者各自が乗ってきた愛車でのドライビングポジション確認では、運転操作に必要な動作を、より正確に、不要な力が入らないような姿勢で行なえるシート位置に参加者と講師が話し合いながら調整。ステアリングを握る腕は直進中にリラックスできて、ステアリングを180度回転させても肘が伸びきらないことが重要となり、アクセルやブレーキを踏む足の動かし方のコツについても解説された。
参加者に合わせたドラポジ設定を行なったら、虫谷氏の同乗レッスンを実施。10~20km/hといった低速走行を中心とすることで、どのように体を使い、どのようにクルマが反応するかを意識して、どんな操作をするとクルマをより楽しく運転できるか考えてもらえるようなレッスン内容を用意している。
助手席に座る虫谷氏は、これまでのレッスンを受けて以前と意識がどのように変化したかヒアリングしながら、参加者の運転操作や目線の送り方といった運転スタイルを見て「この部分を変えるともっと運転が楽しめるようになりますよ」などとアドバイス。楽に運転できるようになるとより遠くまで行けて、新しい発見にもつながると考えてレッスンを行なっているとのことだ。
このほか、進化を続けているマツダのクルマ造りについて紹介するため、虫谷氏が新型車開発に大きく関わるようになって誕生した3代目「プレマシー」と2代目プレマシーを乗り比べる比較試乗も実施された。
車内のセカンドシート間に前出の「骨盤を立てる」体験でも使われた座面が自在に動くシートが設置され、講師が2台の違いなどについて解説しながら10km/h程度の速度で社員用駐車場を走行。負荷の低い走行状態だが、加減速やコーナーでの旋回時に加えて、路面の継ぎ目やマンホールといった凹凸で細かく車両に入力が発生している状況となっており、車内ではシートから前後左右の荷重変化が伝わってくるほか、インパネ上には車両に発生するG(加速度)を可視化する「Gボール」を設置して参加者がわかりやすいようにしていた。
2代目プレマシーは新しいブランドメッセージ「Zoom-Zoom」の展開がスタートした2000年代前半に開発が行なわれたこともあり、キビキビした加速感や俊敏な旋回性能などを強調する演出が行なわれてファンに好評を受けたが、一方で同乗者は唐突な車両挙動に感じられているとの指摘もあったという。
そこで虫谷氏が操縦安定性能エンジニアとして車両挙動の造り込みを煮詰めた3代目プレマシーでは、旋回時にグリップ感を示す非線形な横Gの発生を抑制するためステアリングを操作してから早い段階でヨー(旋回角)とロール(回転角)を発生。荷重移動が初期段階からゆっくりとリニアに発生することから同乗者も予見しながら対応することができるようになり、疲労感や不安感を軽減する効果を発揮。この考え方が現代に続く「人間中心のクルマづくり」として、車両開発における設計思想の出発点になったと説明された。
閉会式では参加者から、「運転が好きでロングドライブやサーキット走行なども楽しんできたが、細かい操作や力の入れ方、より楽になる運転操作などについて少し雑になっていたことを自覚して、見つめ直すことができる貴重な時間になった」「これまでにも虫谷さんのインタビュー記事などを読んで骨盤の重要視を知り、自分なりにしっかり調整したつもりでいたが、今日の体験で微妙に調整してもらい、より楽に、緻密に操作できるようになることが体感できた」。
「これまでロードスターに乗ってきて、これまでわからなかったマツダ車が持つ『人馬一体の楽しさ』って何だろうという謎について理解できた」「新旧プレマシーの乗り比べで、味付けの違いで体にかかる負荷が大きく違うことを体験できて、マツダさんのクルマ造りに対するこだわりを強く実感できてよかった。これからもマツダ車に乗り続けていきたい」などの感想がコメントされ、3時間にわたるレッスンの成果が紹介された。最後に講師全員で参加者をお見送りしてドライビングレッスンは終了となった。
【お詫びと訂正】記事初出時、参加人数に関する表記で間違いがありました。お詫びして訂正させていただきます。