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三菱自動車、「MiEV Evolution III」の「パイクスピーク2014」クラス優勝報告会
「レースで培った技術を市販EVに生かしたい」と監督兼ドライバーの増岡浩氏
(2014/7/4 09:52)
三菱自動車工業は7月3日、東京都港区にある同社の本社ショールームで2014年度の「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」の参戦報告会を行った。
同社は2012年から「雲をめざすレース」とも呼ばれる世界的なヒルクライムレースであるパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム(PPIHC)に参戦を開始。同社の電気自動車(EV)技術を使って電気自動車改造クラスに3年連続で参戦。すでに関連記事(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20140630_655804.html)でもお伝えしているように、同クラスでグレッグ・トレーシー選手が9分08秒188のタイムを計測してクラス優勝、総合2位を達成し、監督兼ドライバーとして臨んだ増岡浩氏も9分12秒204でクラス2位(総合3位)となっている。
参戦報告会には、監督兼ドライバーの増岡浩氏、三菱自動車工業 EVビジネス本部 本部長の岡本金典氏、三菱自動車工業 EV要素研究部 エキスパートの乙竹嘉彦氏の3人が出席。レースを戦った2台の参戦車両「MiEV Evolution III」はEVであるため、大容量のバッテリーを航空機に載せることができず、現地でボディーとバッテリーを切り離す必要があるとのこと。取り外したバッテリーは、船便で日本に送られる。また、伝統あるレースで優勝したマシンはアメリカ国内で展示などが行われる予定となっており、この展示後に日本に戻ってくることになる。
報告会で増岡氏は、PPIHCの歴史とレース概要、近年のレース動向、今年度の参戦態勢などを紹介。このなかで、車両の開発テストを岡崎にあるテストコースで行い、タイヤのグリップ力を最大限に使い続けて車両を加速させるトラクションコントロール、半径30mのコースで定常円旋回を続け、ブレーキや出力制限で旋回を維持させる車両制御、直線走行からの旋回で安定感を高めるJターンなどで4輪統括制御をレベルアップさせていったことを明かした。また、2013年度はコーナーの進入時に車両をいかに安定させるかを主眼に開発したが、2014年度はさらなるタイムアップのため、コーナーリング中にアクセルをどれだけ踏んでいけるかを追求し、脱出重視のセッティングを施したと語っている。
セッティング面では、本番の会場でパートナーであるトレーシー選手と自身のドライビングスタイルに差があり、トレーシー選手から「車両がナーバスだ」と指摘されたことを受け、トレーシー選手のマシンではスプリングを柔らかいものに変更して姿勢変化を穏やかな方向に変化させたことを説明。トレーシー選手は高速コーナー、ブラインドコーナーなどを得意としており、自身はヘアピンコーナーや中低速コーナーが勝っていると語っている。
最後に増岡氏は、「これまで3年計画で進めてきた3年目で、目標としてきたクラス優勝を達成できました。これまでを振り返って、みなさんの期待や会社の仲間たちの応援に報いることができて本当にうれしく思っています。ただ、これまで限界を極めるレースに取り組んできましたが、この結果を市販車に結びつけることが我々の大きな仕事です。EVはレスポンスがよくてトルクもたくさん出ます。エンジン車とは違う制御が必要で、これまでレースを学んできたことを次世代の市販車に生かせるよう邁進していきます」と語っている。
また、三菱自動車工業 EVビジネス本部 本部長の岡本金典氏は、このレース参戦が同社が核としているEV技術の研究開発に通じ、レースで磨いた技術でより優れたEV、PHEVを生み出してユーザーに貢献できることを目的に続けられてきたことを紹介。実際に3年間にわたって出場したレースにおいて、次世代の量産EV&PHEVを生み出すための技術アイテムを過酷な状況に投入して、信頼性や耐久性を確かめることができたとしている。また、今シーズンのMiEV Evolution IIIではランサーエボリューションシリーズやアウトランダーPHEVに採用している車両運動統合制御システム「S-AWC」をさらに進化させて搭載。モータードライブとS-AWCを融合させた“次世代の電気車両運動性能技術”を展開したと明らかにしている。
さらに岡本氏は、3年間のレース参戦で今後の研究開発に関する非常に有効なデータやノウハウを数多く収集することができ、若手エンジニアが大きく育ったことも収穫だと感じていると語っている。